表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

第三章 虹を渡る


「虹のふもとには一生立てないよね。だって、こっちが動くと向こうも動く」

ある時、桜香がぽつりといった。彼女はときたま、こういった詩的な言葉を生み出した。

そんな虹の出た夏の日。その日は夏休み前日で、高校最初の夏休みを目前にした私はテンションのメーターが振り切ってしまった。

「きゃほほっ。ね、どこ行くっ?」

「ふふっ、千世ちゃん、変よ?」

桜香がきゅっと笑った。

私たちはその日、じっくりと話し合って海へ行くことを決めた。

「嫌だな……。私、泳ぐのだけはダメなんだよ」と乃衣ちゃん。

「じゃあ、泳がなくたっていいよ。……楽しいのにな」

「私、水着やだ。浜辺散策にしましょう」と桜香。

「えー?じゃあ、誰も海入らないの?ひどいよ。桜香、泳げるでしょ?」

「でも、やだ」

「乃衣ちゃんの味方するんだね。じゃあ、いいよ、泳ぐのなしね」

私は、なぜか泳ぐのは嫌いじゃなかった。むしろ好きだった。普段の運動に関しては、桜香ほどではないにしても苦手なのだが、水泳は好きだった。重力を感じないで浮き、ただ流れに同化することはとても気持ちよくて、水の中にいる時だけは本当の自分になれる気がする。

しかし、私の友人たちは、その気持ちがかけらもわからないようだ。


「見えたよっ」

バスの窓から見えたキラキラと反射を繰り返す海。私は潮の香りを大きく吸い込み、後ろの席を振り向いた。

「千世ちゃん」

乃衣ちゃんが小声でいった。彼女にもたれるようにして桜香が眠っていた。

私たちはとなりの市の海へ来ていた。電車で着いた駅から、海へ直通のバスへ乗ったのだが、バスで座ってすぐに桜香が酔ったといい出したのだ。

もともと乗り物が苦手な桜香は、何に乗っても酔うのだが、バスに乗らないと海へは着かないのだから仕方ない。乃衣ちゃんが持っていたレモンティーを飲ませ、「寝てなよ」といった。桜香はめずらしく素直に従った。

そして、いよいよ海が近づいた時になって、桜香は眠りに落ちたらしい。

バス停へ着き、私や乃衣ちゃんが立ち上がったりバッグを持ったりしていると、桜香が起きた。

「……着いた?」

「着いたよ」

私は桜香のバスケットを持ってやりながら答えた。

「気分はどう?」

乃衣ちゃんが訊く。

「大丈夫」


私たちは比較的空いている浜のパラソルの下にシートを広げた。

太陽は強く照りつけていて、風もカラっとしていて、海日和だった。そこそこ綺麗な海岸だったので、人も多かった。

「サンドイッチ、食べる?」

桜香はバスケットを開けた。

「おおっ、すごい」

私は思わず声をあげた。

見栄えのいい白の間に鮮やかな緑やピンクや黄色。やっぱり食べ物は見た目が大事である。桜香の料理を我が母にも見せてやりたいものだ。

少し早めの昼食を済ませた私たちは、荷物を海の家にあったコインロッカーに預けると、浜を歩いてみることにした。

「歩きにくいね」

「はだしになる?」

「そうしよっか」

サンダルを手に持って、私たちは砂の上を歩いた。ゆっくり。でも、決して止まることなく。その間にも太陽はジリジリと私たちの白い肌を焦がし続けていた。

桜香の体調が心配だったが、学校にいる時よりも元気なくらいで、時折笑い出したり駆け出したりしていた。「子犬みたいだよね」と乃衣ちゃん。

乃衣ちゃんはアメリカの国旗みたいなTシャツにデニムのショートパンツを着ていて、海をバックにすると、パっと目を引いた。

私はキャラクター物のTシャツと青い小花柄のミニスカート。

桜香は白いレースのトップスと黒いキュロット。レースと一緒に桜香も透けてしまいそうだった。

「桜香、日焼けしちゃうよ?今日はいいの?」

「日焼け止め、塗りまくったもの。大丈夫なはず。千世ちゃんこそ、色白美女なに」

「何それ?まぁ、うちらは生まれつき色白だもんね。乃衣ちゃんと違って」

私は桜香と顔を見合わせてクスクス笑った。乃衣ちゃんは、普通の肌色なのだが、私と桜香が病人並みに白かったため、三人でいると一人だけ黒く見えた。だから私と桜香は乃衣ちゃんをいじるネタとして、よくそれを持ち出した。

平和だったんだな、とつくづく思う。

しばらく歩くと、人気のない岩場へ来た。テトラポットへ移り、私たちは腰を下ろした。

潮風がそよそよと吹いていた。

「この海の向こうには何があるのかな」

乃衣ちゃんがふといった。

「千葉にぶつかるんじゃない?」

私は即答した。

「うわっ、冷淡ーっ」

乃衣ちゃんが顔を歪ませた。

「ずっと向こうの見たことのない世界が……とかいってほしかった」

「似合わねーっ」

私は早口でいった。……でも。

「いつか三人で行こうよ。海の向こうに。うち、世界を見たい」

「世界一周、とか?」と乃衣ちゃん。

「私……日本でいいよ」

桜香がぽつりといった。

「なんでっ?」

思わず私は声を荒げた。

「私ね、乃衣ちゃんと千世ちゃんがいてくれたら、どこだっていいの」

どこだっていい。乃衣ちゃんと私さえいれば。

それは桜香の本心から出た言葉だった。ひとつだけの願いだったのだ。

「ただ……」桜香は空中をすっと手でなぞりながらいう。「向こう側に何かがあるなら行きたい。虹を渡るみたいにして、海の上を越えて、どこかへ着けたら……」

何があるのだろう?

私たちには、よくわからないのだ。

だから、夢をみる。まだ見ぬ「いつか」に期待する。

突然、乃衣ちゃんが立ち上がった。

「ラムネでも飲んで帰ろうか?」

「うん」

私たちは来た時と同じように、ゆっくりと歩いて海の家まで戻った。

ラムネを飲んで、私は手をベタベタにして、二人に笑われた。いうまでもなく、開けることに失敗したのだ。

帰りのバスに乗ると、桜香は出発するより前に眠ってしまった。私と乃衣ちゃんも競争するかのように目を閉じていた。


まだわからない。

私、決めてたよ。いつか向こう側をすべて見て、何があるのかを見てやるって。

だから今はまだわからない。それでいいんだ。そう思っていた。






三章おしまい!


ぐだぐだかな?

事件が起きないからつまらないのか( ̄□ ̄;)!!


でも、メイン三人とも私は好きです。

ピュアすぎないイイコってかんじがして。

みなさんは誰推しですか??(笑)



気を取り直して。

いつものGARNETトークに。←


ゆりっぺが3rdアルバム「Crystallize~君という光~」で一番好きなのは「Marionette Fantasia」だそうです。


私もだよ!気が合う!

一人でガッツポーズです。

このアルバムは暗めの曲が多くてGARNET CROWらしいと思うのですが…。

Marionette~のダークでメルヘンなかんじとか、あの変拍子がツボです♪



今日はこの辺で…

ばいきゅ~(*^o^*)/~




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ