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序章 星姫伝説
星空町がまだ小さな村だった頃、白い外壁の屋敷に星香という妖術使いの少女が一人、暮らしていた。
星香は体が弱く、屋敷の外へ出ることはなかった。
しかし、彼女の妖術の腕はかなりのもので、村人たちは尊敬の念をこめて、星香のことを星姫と呼んだ。
星香は体の調子がいい日は、屋敷を訪ねてきた村人の願いを叶えた。
彼女は自分の村を愛していた。
ある時、村に飢饉が起こる。
空が真っ赤に燃えたかと思うと、村の水は枯れ、植物は朽ち果てた。
飢餓に苦しむ村人たち。
そんな村を屋敷の窓から見ている星香。
星香は自分の体がもう長くはもたないことを知っていた。
そして、自らの命と引き替えに村を救う妖術をかけた。
白い光に包まれる村。
草木が息を吹き返し、小川のせせらぎが聞こえ出した頃、村人の一人が白い外壁の屋敷を訪ねると、木の椅子に座り、眠るようにして息を引き取った星香がいた。
星香の墓は村の小高い丘に作られた。
それ以来、彼女の魂は自分の命日になると、星となって、屋敷のあった場所へ帰ってくるという。