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幻想少年  作者: *amin*
14/20

14 幸せな時間

「なぁ幸、今週どっか出かけない?」


春哉からの正式なデートのお誘い。

その言葉だけで一瞬頭の中が真っ白になった。



14 幸せな時間



春哉とデート、デート、デート!?

ボンと赤くなったあたしを春哉は一瞬にやっとした顔で見てきた。

くそっ!こんな油断した顔を春哉に見られてしまった。でもそんな場合じゃない。デート……本当にデートなんだよね。またラーメン屋によって帰ろうって話じゃないよね?朝から2人でどっかに行くんだよね?

こういうの経験した事がないからどう反応していいのか分からないけど答えは決まってる。断る理由なんてもちろんない。


「ど、どこでもいい?」

「どこでもいいよ」


春哉はあっさりとどこでも連れて行く宣言をした。それならあたしが行きたい場所を選んでもいいんだよね。あたしは恋人とどうしても行ってみたい場所がある。その場所は簡単。

少しらしくないかもしれない。可愛げのないあたしには似合わない場所かもしれないけど、でもこんなの一生に一度の経験になるかもしれない。

恥も何も捨てなきゃ言えない。


「ディ、ディズニーランド……」

「ランド?」


聞き返した春哉に小さく頷くしかできなかった。

らしくないって思ってるのかもしれない。お前のガラじゃねぇだろって思われてるかも……

でも春哉はあっさりそれを了承してくれた。


「いいよ、じゃあ8時30に東京駅な。そっから行こう」

「ん」


ディズニーランド……彼氏と行くのをずっと憧れてた。いや、行くの自体憧れてたのかもしれない。家族と仲の良くないあたしからすればディズニーランドは聖地だ。テレビでアナウンサーが家族が恋人、友達同士と来ている人にインタビューしてるのを見ながら行きたいっていつも思ってた。

家族仲が悪い挙句に友達のいないあたしは一緒に行ってくれる人もいないし、行きたいけど1人で行く勇気もなかったから正直今まで1回も行った事がなかった。

でもその夢がついに叶うのだ。大げさだけど、もう思い残すことはないかもしれない。

とりあえず早く起きなきゃ!化粧も服も頑張らなきゃ!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

当日、遅刻しないためにも早めに出ることにした。でも早く着き過ぎない程度にだけど。張り切り過ぎてるって思われるのも格好悪いし、正直春哉がもう来てくれてたらなって言う期待も少しあった。

でも春哉はやっぱり期待を裏切らないね。

待ち合わせ時間の10分前に東京駅についたけど、春哉は既について待っててくれていた。

無表情で人ごみの中であたしを待ってる春哉は惚気かもしれないが、格好良く見えた。

制服かラーメン屋の服しか見たことなかったから、私服はすごく新鮮だ。春哉もこっちに気付いたのか視線を向けてきたので、声をかけようとしたけど何だかボケーとこっちを見てる。

何考えてるんだあいつ?なんか焦点あってない気もするし……


「うあっ!」

「ぼけっとしてないで。何してんの?早く行こうよ」


案の定声をかければ、あからさまに春哉は驚いた。こっちに視線を向けてたと思ったのに、実際は何を見て何を感じてたんだろうか。何だか少しムカついてさっさと先に歩いていけば、春哉が早足であたしを追いかけた。

それにしてもホームの人の多さに少しびっくりしてしまった。この人たちみんな行くのかな?やっぱディズニーランドって人気なんだな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――

最寄駅で降りたあたしたちはランドに向かって歩く。シーに向かう人は更にモノレールみたいなものに乗るから違う方向に歩いていく。少し人数が少なくなったかな?

そして前方にはホテルと夢にまで見た本物のディズニーランド!こんなに近かったんだ!初めて来たよディズニーランドに!

はやる気持ちを抑えてフリーパスを買って中に入る。そしたら入口の広場にはテレビに出ていたのとまったく同じのミッキーの姿があった。


「ミッキー!」

「あ、おい幸!」


春哉の制止も無視して走っていけば、ミッキーは写真撮影をしていた。係員さんが並べば一緒に写真を取れますよって教えてくれて早速並ぶ事にした。後から切れた顔の春哉がやってきたけど、動く気のないあたしに何も言う事なく一緒に並んでくれた。

炎天下の中で並ぶのはきついけど、これがレジャーランドの醍醐味だ。ミッキーと写真をとれるならあたしは頑張るよ。


そして35分くらい待ってやっとミッキーと写真をとれた。肩をたたかれて握手して手を振ってくれる。ミッキーかわいすぎる!

目的を1つ果たし、後は乗りたいアトラクションがいっぱいある!プーさんのハニーハントにバズライトイヤーにスプラッシュマウンテン、あとスペースマウンテンも乗りたい!ミッキーたちの家にも行きたいし、ホーンテッドマンションにも行ってみたい。でもこれだけ人が多かったら全部は無理だろう。

早くファストパスを取らなきゃ!時間は1秒も無駄にはできないし!

春哉はそんなあたしに文句1つ言わず付き合ってくれた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「春哉!次行こう!」


スペースマウンテンとスプラッシュマウンテンのファストパスをとって念願のハニーハントに乗れて、近くにあったからイッツアスモールワールドにも乗れた。次はホーンテッドマンションだね!

でも春哉は既にくたくたのようだ。少し早くない?


「幸、飯食おう。もうすぐ昼になるし」

「えーホーンテッドマンション行こうよ」

「今食っとかないと時間になったら人が多くて席取れなくなるよ。俺疲れたし……」


情けないなぁ春哉は……仕方ないか付き合わせてるんだし、春哉の意見も聞いてあげなきゃね。

頷いたあたしに春哉はあからさまに安堵の表情を浮かべた。

あんたどんだけ休みたかったんだよ。


「どこで食いたい?」

「あんまりどこかでーって言うの無いから、歩きながら探そうよ」

「そうしよっか」


そう話しながら春哉の手を握った。今あたしの横を通り過ぎたカップルが手をつないでたから。

春哉は案の定動揺したけど、あたしはあくまで平静を装った。


「なんで?彼女が彼氏の手を握ってもおかしい事ないじゃん」

「そ、そうだよな。そうだよな!」


そうだよ、あたしたちは恋人なんだから別にいいでしょ。

春哉は加減しないのか力強く握ってきたから文句をつけたけど、でもいいや。暑い中お互いに手汗をかいたけど不思議と不快じゃなかった。


その後はイタリアンレストランでご飯を食べてホーンテッドマンションに乗ってまたバズライトイヤーのファストパスを取りに行った。時間的に最後のファストパスになってしまったけど、でもいいや。これだけ取れれば十分だよね。

その後はファストパスを使ってアトラクションを乗り、いつの間にか辺りは薄暗くなり始めていた。


「春哉、エレクトリカルパレード見たい。席取ろう」

「え?その間にアトラクションのらねぇの?待ち時間短くなるぞ」

「駄目、パレード見たい」

「そうなん?じゃあ少し早いけど席取る?」

「取る」


早めに席を取ったおかげで最前列を取れた。

時間が近づいてくるにつれて多くなる人。そしてスピーカーから声が聞こえてくる頃には沢山の人が見るために待機していた。そしてスピーカーから独特の音楽が流れ出す。まだライトアップされた物は来てないけど、あたしは興奮してジッと通路を眺める。

早く来ないかな?早く来ないかな?子供のように心の中で思いながら来るのを待った。


パレードは綺麗だった。初めて見たけど、キラキラ光ってて楽しそうで、本当に綺麗だった。

小さな子たちのはしゃぐ声が聞こえて隣に座ってる家族も綺麗だねって話してる。

本当にすごい。今日来れて良かった……

今日は幸が出てくることもなかったし、記憶が途切れることもなかった。楽しかった、今までの人生で多分1番楽しかったんじゃないのかな?その時、春哉があたしの手を握ってきた。振り返ればライトに照らされた春哉が気まずそうにして笑っている。


「ほらさ、夏でも夜は冷え込むからさ」

「……馬鹿な冗談は言わない方がいいよ」


でも振りほどかないあたしも少し冷えたのかもしれない。

あーぁ折角集中してみてたのに集中できなくなっちゃったじゃん。夏の暑さなんか感じない。手の方が何倍も暑く感じる。今の自分の顔を見られたくなくてあたしはひたすらパレードを見つめた。



最初で最後かもしれないじゃない。

 でもこんな幸せな日を一生忘れたくない。

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