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「泥棒聖女」と言われたので出て行きます。後で泣いても知りません。

作者: 灰月 琥珀
掲載日:2026/05/11

AI小説の乱立を嘆くエッセイに触れ、思うところがあり勢いで執筆しました。

もしこの改稿を面白いと感じていただけたなら、評価をいただけますと幸いです。

現在、11万文字程度の連載版構想を進めています。



 バァン!

 エリーゼは深夜の静寂に包まれた廊下を抜け、王宮の談話室の重い扉を開けた!

 その瞬間、エリーゼの視界には室内の異様な光景が飛び込んできた!


(あー、これは前世でハマっていた乙女ゲーム『君と俺の望む永遠の誓い』でみた展開ですね。わたし知っています)


 豪華な肘掛け椅子には、表情を硬くした王。その隣には、扇子を手に冷ややかな視線を送る妃。そして、エリーゼの婚約者であるルキウス。あー、はいはい。

 彼は悪びれる様子もなく、婚約者でもない聖女見習いのエスパダを自身の膝の上に乗せ、その細い腰にこれ見よがしに手を回している。

 エスパダもまた、それが当然の権利であるかのような顔で、甘えるように彼に寄り添っている。うちの婚約者なんだけど……何考えてるの?


(このあと、ゲームでは追放されたモブ聖女のわたしは悲劇のヒロインとして――その後、彼女は非業の死を遂げるのであった、と挿絵もなしでナレーションで死んでしまうのです。それは嫌なので全力で回避します)


 エリーゼはモブとしての非業のバッドエンドを回避する決意をした。


 深夜の呼び出しだというのに、二人とも着替えた様子さえない。

 あろうことか、昨日と同じ服のまま、淫らな空気を纏って密着している。

 不誠実過ぎる光景に、エリーゼは一瞬だけぎょっとする。


 エリーゼの迷いのない落ち着いた振る舞いが気に入らないのか、婚約者のルキウスは隠そうともせず、不機嫌そうに舌打ちを鳴す。


「ようやく来たのか、のろまな泥棒聖女が。相変わらず無愛想だな」


(泥棒聖女……? いったいどういうことですか? 聞いたこともない新しい単語……この世界は泥棒猫と言わず泥棒聖女と言うのですね)


 エリーゼはニヤニヤしそうになるのを我慢した。

 平静を装って、しおらしくエリーゼは向かいのソファーに座る。

 この状況で立ち尽くしている必要もないと判断したからだ。だるいし。


「遅くなって申し訳ありません、王様と妃様、それにルキウス殿下」

「言い訳は聞きたくない、見苦しいぞ! エリーゼ!」

「エリーゼ聖女様、こっわ~い。ルキウス様、私、怖いわぁ~」


 ルキウスは心底呆れかえったように嘆息している。

 エスパダは聖女見習いと思えぬ、清楚さが微塵も感じられない胸が大きく露出した服を着て、ルキウスに抱きついた。

 そして、男性の庇護欲をそそるような、あざとい上目遣い。

 まるでエリーゼに怯えたかのように声は震えているが、むしろ勝ち誇ったような横顔をしている。


(これは……なんて分かりやすいテンプレなのですか。わたし、どうやら婚約破棄される流れに入ったのですね。危険なパターンです)


 王が冷たく無表情な顔で口を開きはじめた。

 だいたい何を言うか予想がつく。


「聖女エリーゼ……貴様に失望した! 婚約者がいるのに不貞にも行きずりの男を惑わし、あげく、我が息子ルキウスの金貨をくすねた……社交界で噂になっておる」

「そんな! 王様……そのようなことは……わたしには、全く、身に覚えのないことです!」


 必死に訴えるふりをするエリーゼの声が、静まり返った室内で響く。

 しかし、王はその言葉を一顧だにせず、ただ鋼のような無表情で彼女を見下ろしていた。重苦しい沈黙が、エリーゼに「よし!」という安心感を与える。


 その隣で、妃がこれ見よがしに深く、溜め息を吐いた。

 手にした扇子をパチンと閉じると、エリーゼをまるで靴の裏についた泥でも見るような目で見下ろし、冷酷な言葉を紡ぎ出す。


「泥棒聖女のくせに、まだ開き直るのかしら。まあ、愛想のない顔をして、生意気な子ね。自らの罪も認められないなんて、どこまで浅ましいのかしら」


 妃は芝居がかった手つきでその背を優しく撫でて、エリーゼへと蔑みの視線を向ける。

 妃の言葉に合わせるように、ルキウスの膝の上でエスパダが震える肩をさらにすくめた。


「エリーゼ様が、そんな……嘘をつくなんて……! 妃様、私、怖くて。エリーゼ様、あなたがクロード子爵令息と路地裏で会っていたことも、黙っていようと思ったのですが……不貞だなんて信じられなくて……」


 エスパダは顔を伏せ、ルキウスの胸元に顔を埋める。

 だが、その隙間からエリーゼを覗く瞳には、涙の一滴も浮かんでいない。

 それどころか、醜い歪みを口元に浮かべている。あー、はいはい。


 王とルキウスも、テンプレ通り冷ややかにエリーゼを見ている。


(これは……誰も、信じようとはしない、真実を確かめようとすら、しない、とかモノローグが入るパターンね、もっと創意工夫ないのかしら)


 この広い王室の中で、エリーゼを気遣う者は一人としていなかった。

 すべては「エリーゼが悪である」という結論ありきの茶番劇。

 彼女に浴びせられる露悪的な醜聞が事実かどうかなど、この場にいる誰一人として興味を持っていない。


(わたしを信じる気など、最初から無い。そういう世界ですか)


 絶望を通り越し、エリーゼの心には乾いた冷気が吹き抜けていた。

 かつての社畜時代、理不尽な責任転嫁を会議室で自分に押し付けてきた上司たちの顔が脳裏をよぎる。あの時と同じだ。

 

(薄々、この世界が転生が婚約破棄で追放モノって気はしていました。最初から不遇で扱いは酷かったですし)


 きゅっとエリーゼはスカートの裾を力強く握ってみる。

 ここで涙を見せても、彼らを喜ばせるだけだ。だから絶対に泣かない。


「なんですか、その無愛想な表情は。泣いて慈悲を乞う気概もないなんて呆れたものですわね」

「全くだ。ここまで愛嬌がないと、何を考えているか分からん。実に恐ろしい。こんな泥棒聖女が我が国の聖女だったとは考えただけでも、おぞましい……」


 妃と王が交互に眉根を寄せながら、まるで汚らわしい泥でも見るようにエリーゼに侮蔑の表情を浮かべる。吹き出しそうになるのをこらえてエリーゼはますます、むっとした無愛想な顔になる。


 ルキウスも呆れたように首を振りながら口を開いた。


「今日の今日まで、君が婚約者だからと耐えていたが、もう我慢の限界だ。こうも不義理な聖女とは未来を考えられない。エリーゼ、君との婚約は破棄する」

「ごめんなさあい、エリーゼ様。私、ルキウス様をお慕いしてしまったのぉ~」


 悪びれた様子もなく、ルキウスにエスパダが抱きついて頬に接吻をする。

 エリーゼはうんざりしつつ、ただひたすら、この時間が早く過ぎ去ることを考えはじめていた。くだらない茶番。それでも王族の前だから無礼な振る舞いはできない。理性だけが彼女を支えている。


(新天地に行くアテはもうあるのです。こんな茶番、早く終わって欲しいです)


 今、心配なのは、すれ違い溺愛系ルートだったなどという絶望的な展開にならないかということだけだ。

 ルキウスと仲直りや溺愛される関係だけは絶対に嫌だった。

 エリーゼは緊迫した雰囲気に驚いているふりをしながら、この後のどうするかだけを淡々と考えていた。 


「貴様、あまつさえエスパダを虐げたそうだな」


 王の言葉に、エリーゼは我が耳を疑った。


(は? 今、何と? わたしがエスパダに虐められていたのに?)


 階段から突き落としたり、服にハサミを入れてボロボロにしていたのは、エスパダの方だ。その後ろ姿を何度も見ていた。


「……恐れながら、王様。事実無根です」

「黙れ! 貴様は昔からそうだ。言い訳ばかりで可愛げがなく、愛想の一つもない!」


 食い気味に放たれた怒声。論理的な対話など、端から望むべくもなかった。

 ルキウスがエスパダの腰を強く抱き寄せ、険しい顔で叫ぶ。


「僕はエスパダを愛しているんだ! 君のような、路地裏で男と密会を繰り返すふしだらな泥棒聖女に、僕の金庫を触らせるわけにはいかない」


 密会。男。心当たりなど一つもない。

 昨夜、居酒屋で炭を分けてもらうために頭を下げ、「白金貨」を拾って紳士を追いかけた一件を、きっと彼らは歪曲して利用しているのだろう。


(やっぱり、白金貨、もらっておいて良かったですね。金貨十枚分です)


「いいか、泥棒聖女! エスパダを虐めたことや、僕の金庫から金貨を盗んでいたことは不問にしてやる。だから、ここで謝れ!」

「殿下、かっこいいですわ~。エリーゼ様も慈悲を受け入れて謝るべきです」

「まぁ、我が息子ながらなんて慈悲深いのでしょう。あなた、うちの息子に感謝しなさい!」

「いえ、逆です。エスパダがわたしに日々嫌がらせをし、わたしの金庫から銀貨と銅貨を盗んだのは、ルキウス殿下の方で――」


 正論を述べるエリーゼの言い分は、バッと手を広げる王に遮られた。


「この期に及んで言い訳か! 愛想がないだけでなく、自分の罪を認め、謝罪すらまともにできない。そんな泥棒聖女が、この国の聖女だったとは……」


(ああ、わたしの知らないところで、この人たちは何かを決めて、初めから結論ありきでわたしを問い詰められてわたしは破滅する、そんな流れですね)


 出来上がった結論に向かって、ただ一方的に言葉の暴力を叩きつけられる。

エリーゼは、どこか冷めた心地で周囲を眺めていた。感情を消費する価値が感じられない。ジト目で傍観しつつ早くこの場を終えたいと考えるばかりだ。


「お前は二度と、この王宮に足を踏み入れるな。それで罪を不問にしてやるのだ。ありがたく思え。お前が貯め込んでいたあの汚い銅貨の山も、エスパダへの慰謝料として没収してやる」


 ルキウスが椅子から立ち上がり、宣告した。その瞳には、もはや嫌悪の色しか宿っていない。


「ミレイユ王家の名を汚した女を、これ以上置いてはおけぬ。今すぐ出て行け。聖女の立場も本日付で剥奪として平民とする!!」


(必死に貯蓄した、わたしの銅貨を取り上げるのですね、どちらが泥棒ですか)


 エリーゼは嘆息した。

 王が深く頷き、それに応じるようにエスパダが言葉を重ねる。


「そんなぁ、エリーゼ様が可哀想ですぅ……。泥棒聖女だなんて、きっと何かの間違いですわぁ!」


 エスパダの白々しい甘い声で、部屋の空気が熱を帯びて一変する。

 何て分かりやすい。


「なんて優しいんだ、新聖女エスパダは!」

「君の心はどこまでも美しい。どこかの泥棒聖女とは大違いだ」


 称賛の嵐。エリーゼ一人を置き去りにして、新しい聖女エスパダが誕生した。

 エリーゼは深く息を吐いた。


「もう十分でしょう! 話は、わかりました!」


 深夜の王宮の談話室で、エリーゼは強い語調の声をあげた。

 テンプレートの茶番には付き合った、もう十分。

 エリーゼの態度が予想外だったのか、しんと場は静まり返る。


 そもそも初めから迷いはない。さっと深く頭を下げる。

 社畜OL時代から頭を下げることだけは慣れている。

 

 顔は見せないようにした。今の自分がおそらく、この場にふさわしくないほど「清々しい微笑」を浮かべてしまっているからだ。


 張り詰めた空気の中、エリーゼは言葉を継いだ。


「では、すぐに支度を整え、この国を出ます!」

「え、国から出る!?」


 ルキウスが動揺を隠せずに慌てて食い下がろうとしたが、それを遮るようにエリーゼが告げた。


「これ以上、ドアマットヒロイン……いえ、過酷な日々に、うんざりです。この国に未練もありません!」


 エリーゼは淡々と言い捨て、冷めた紅茶を一瞥した。その視線の先では、ルキウスが怒りで顔を真っ赤に染めている。


「な、ならば、国を出て行けッ! この無愛想な女め! 愛嬌もないお前を良くしてくれる奴なんだいるものか! そのまま野垂れ死んでも知らないからな!」


 ルキウスが激昂し、拳を執務机へと叩きつけた。

 ドゴォッ、と重い音が響き、その衝撃で陶器のカップが跳ねる。淹れられたばかりの紅茶が、血のような色をして白いクロスの上へと無残に広がった。


「ええ、そのお言葉は、“許可する”という意味で宜しいですか?」

「好きにしろー! 愛想のないお前なんか嫌いだ! 俺はエスパダとの幸せを第一に考える」

「分かりました。それでは、お世話になりました」


 背後で、誰かが勝ち誇ったように鼻を鳴らした。だが、その音も今の彼女には遠い世界の出来事のようにしか感じられなかった。

 そもそも、ここは転生した知らない異世界だ。


 エリーゼは、彼らの冷酷な視線に負けないぐらい冷え切った目で真っ向から見返した。彼らは、一瞬、彼女の鋭い眼光にひるむ。


(好きにすればいいのです。白金貨一枚あれば、この国を出て行くには十分です)


 ここに彼女の居場所はない。

 だがそれは、彼女にとっての、新しい一歩だった。


 重い扉を閉め、廊下に出る。


 吹き出し笑いをこらえて、神妙な顔つきで出て行く。

 こみ上げてくる思いは、ようやく終わったという安堵の喜び。

 長年自分を縛り付けていた、重い鎖が音を立てて外れた時の軽さ。


(こんな国、泣く価値もありません。……足に付いた泥でも払うように、出ていきます)


 懐の奥、肌身離さず持っていた帝国の白金貨の感触を確かめる。

 あの時、路地裏で助けてくれた銀髪の男――皇太子ウルスがくれた「優しさ」だけが、今の彼女の真実だ。


 エリーゼは背筋を伸ばし、一度も振り返らずに歩き出す。

 もう、国のために聖女として朝から晩まで祈る必要もない。

 ここからようやく「わたし自身の物語」が始まるのだ。



   ***



 ――エリーゼが小国ミレイユを旅立つ、数日前のことである。


 この小国は、たった一人の聖女――十八歳のエリーゼが身を粉にして支えていた。

 彼女には、前世の記憶があった。

 

 かつての人生は、社畜OLとして理不尽な労働に明け暮れた果てに、誰にも看取られず一人で死ぬという寂しいものだった。

 そんな過去があるからこそ、彼女は今世の聖女という大役も、崇高な使命感ではなく、あくまで「仕事」として淡々とこなしていた。


 そもそも、彼女が「ここがゲームの世界だ」と気づいたのは、五年前のこと。

 孤児院で名もなき子供だった彼女が、類まれな魔力量から聖女に選ばれ、教会で「エリーゼ」という名を与えられた瞬間だった。


「ミレイユ国の聖女、エリーゼ」


 その名を聞いた時、前世の記憶が鮮烈に呼び起こされた。

 それは、仕事のストレス解消にやり込んでいた乙女ゲーム『君と俺の望む永遠の誓い』の舞台そのもの。

 さらに、婚約者として現れたルキウスの顔を見たとき、確信は絶望に変わった。

 彼はゲーム内でも有名な「ハズレ攻略対象」。

 ゲーム中ではエリーゼは彼に裏切られ、ヒロインにすべてを奪われてナレーションの一行で非業の死を遂げる「使い捨てのモブ聖女」だった。


 孤児として生まれたエリーゼには自由が少なく、姓すら与えられていない。


(ここまで雑な扱いなのは、わたしがモブだから当然ですね)


 エリーゼはそれでも社畜OL時代の培ったサバイバル術で淡々と暮らした。

 

 住まいは教会の片隅にある物置小屋を改造した場所。

 そこで、ひっそりと目立たないように暮らした。


 教会から支払われるお給金は、驚くほど少ない。

 そこから家賃や税金、冬を越すための炭代や井戸水代が天引きされる。

 残ったわずかな金で食費を捻出すると、手元に銅貨数枚しか残らない現実。


 普通、王族の婚約者がいれば生活の保障がなされるものだが、この国において聖女は「公僕」であり、その生活費はあくまで教会の予算から出すという建前があった。

 何より、婚約とは名ばかりの「聖女を国に縛り付けるための鎖」に過ぎず、ルキウスから私的な援助が差し伸べられることなど、一度たりともなかった。


(ブラック企業も真っ青の、ド底辺過ぎる労働環境です!! どうすれば脱出できるか考える必要があります! 貯蓄……貯蓄しかありません!)


 おまけに、聖女だからと強引に国から婚約を強制される。

 ゲーム通りなら、いずれは婚約破棄で捨てられるのが決まっている強制婚約だ。


 普通は貴族と婚約するが、魔力量が多いと王族が婚約してくる世界だ。

 エリーゼは魔力量が際立っていたため、その身を他国へ渡さぬよう、王族である第三王子ルキウスとの婚約が半ば強制的に進められた。拒否権はない。


 しかし、そのルキウスは極めて金遣いが荒い上に、聖女の過酷な生活環境には全くの無関心だった。ハズレ攻略対象だから当然と言えば当然である。

 彼は派手な服装で胸の大きな女性を好んでおり、至って普通の体型をしているエリーゼには、興味の一片すら示そうとしなかった。


(追放フラグが分かり過ぎですね。この世界、わたしに当たりが厳しすぎます!)


 政略結婚なのだから互いに義務だけの関係とはいえ、生活の困窮を訴えたところで「分不相応な贅沢を言うな」と一蹴されるのが関の山だ。

 挨拶すら交わしたくないほど希薄な関係が、彼女の警戒心をより一層高めた。


(ゲーム『君と俺の望む永遠の誓い』ではエリーゼは病気がちでした。健康には気を付けないといません。もし魔法が使えなくなったり、重い病気にでもなったら、ゲームより先に不遇な展開もありそうです……)


 身寄りはなく、婚約者からも放置されている。何かあっても彼が助けてくれる未来は想像できなかった。

 だからこそ、エリーゼは日々の切り詰めた生活の中から、なけなしの銅貨一枚をコツコツと貯蓄していた。すべては、いつか放り出された時に生き延びるための、切実な思いからだった。


 しとしとと冷たい雨が降る夜、エリーゼはついに炭を切らしてしまった。

 このままでは凍えてしまうため、彼女は近所の居酒屋へ炭を買いに向かった。

 居酒屋の古い余り物の捨てる炭なら、炭売りから買う定価より、安く買えるからだ。生活の知恵である。


「また炭を分けてほしいのかい? 銅貨三枚だよ」

「ごめんなさい……ほんの少しでいいんです。小分けにして売っていただけませんか?」

「だめだめ。今日は忙しいんだ。そんな手間なことはしていられないよ」


 居酒屋の店員は忙しなさに苛立っているのか、エリーゼの切実な願いを冷たくあしらった。


「お願いします! あと銅貨五枚しか持っていないんです。今月はこれで凌ぐしかなくて。来月になったら銅貨四枚分、たくさん買いますから。どうか……」


 エリーゼにとって、銅貨三枚は大金だ。泣きそうになりながら食い下がると、背後に静かな人影が立った。


「店の主よ。彼女になぜ炭を小分けしてやらないのだ。困っているだろう」

「……っ! だ、旦那。分かりましたよ。お嬢ちゃん、来月は小分けなしだからね。今日は特別に銅貨一枚で売ってあげるよ」


 店員は、その紳士の堂々とした立ち振る舞いと威圧感に気圧され、身をすくめて炭を差し出した。


「君はこの国の聖女ではないのか。教会の待遇はこれほどまでに悪いのか。まったく、ミレイユ国は聖女を何だと思っているのだ」

「聖女の報酬は、一回につき銀貨二十枚なんです。他に代わりもいなくて、わたしがやるしかありませんから……」

「そうか。帝国ルインガルドであれば、そのような扱いは決してしないのだがな」

「えっ?」


 彼女が驚いて振り返ったときには、既に紳士の姿は消えていた。

 ただ、彼女の足元には、帝国ルインガルドの白金貨が一枚落ちていた。ミレイユ国の価値に直せば大金貨十枚に相当する、途方もない大金だった。


「店員さん、炭は後で取りに来ます! 大変、さっきの人が白金貨を落としたみたいなんです」


 エリーゼは慌てて、路地裏の闇に消えた紳士の後を追った。

 すると、物陰から酔っ払いがふらふらと現れ、彼女の手を無理やり掴もうとしてきた。


「聖女様じゃねえか。こんな夜更けに酒でも飲もうってんなら、俺と一杯どうだい?」

「やめてください。人を捜しているのです。離してください」


 鼻を突く強い酒の臭い。乱れたシャツの襟元。

 見覚えがあった。教会に酒依存の懺悔に来るノワール子爵家の次男、クロードだ。放蕩者として有名で、女遊びと酒癖の悪さは社交界でも問題になっていた。


「おやおや、ウブな演技だね。俺の前に走ってきたってことは、お誘いかな」

「何を言っているのか分かりません。邪魔をしないでください」


 クロードが距離を詰め、エリーゼを頭の先からつま先まで、品定めするようにじろじろと眺め回した。


「聖女様。あんたの噂は有名だぜ。男を翻弄して、金を貯め込んでいるんだろ? これだけ美しければ、みんな納得するさ」

「……何の噂ですか。そんな事実はありません」


 吐き気のするような言葉とともに、クロードの不快な指が彼女の肩に触れた。

 ぞっとするような嫌悪感に、エリーゼは反射的に腕を振った。


「やめてください!」


 パンッ、と乾いた音が路地に響く。

 数秒の静寂の後、押さえた指の間から覗く彼の頬が、鮮やかな手のひらの形をして赤く染まっていく。


「……っ! この……売女が!」


 逆上したクロードが、顔を真っ赤にして拳を大きく振り上げた。凶暴なまでの暴力の気配が、逃げ場のない路地裏の空気を震わせる。


(あっ、これは、ゲーム内ではエリーゼが殴られる有名シーン――!)


 エリーゼは、とっさに身をすくめてぎゅっと目を閉じた。


 不意にクロードの呻き声が聞こえた。

 恐る恐る目を開けると、彼の手が、あり得ない方向へと捻り上げられていた。


「いでで! や、やめて……腕が、折れる! 腕を離せ! 悪気はなかったんだ。この女が誘ってきたんだ!」

「彼女は明確に嫌がっていただろう。何を考えている」


 そこには、狼の毛皮を身に纏った長身の男が立っていた。

 銀の髪が月光を受けて輝き、鋭い青の瞳がクロードを射抜いている。

 その圧倒的な存在感と威厳に、エリーゼは息を呑んだ。氷のような、冷たく鋭い緊張感が周囲を支配する。


(これはゲーム原作にはない展開です。一体、何が起きているのです)


 男が手を離すと、クロードは「ひ、ひぃ……」と短い悲鳴を上げ、転びそうになりながら走り去っていった。


「ありがとうございます……。あの、こちら、落とされましたよ。白金貨です」


エリーゼは息を切らせながら、掌に乗せた白金貨を差し出した。月光を弾いて鈍く輝くその硬貨は、彼女の震える指先にあっても、その価値を主張するように重々しく鎮座している。


「……わざわざ、落としたことを知らせるために追いかけてくれたのか。すまない」


 男は一度、躊躇うようにその大きな手で白金貨を受け取った。指先が触れた瞬間、エリーゼは彼の手のひらが驚くほど温かいことに気づく。


「大金ですから……。持ち主にお返ししないといけないと思って」


 しかし、男は手の中の白金貨を一度見つめると、ふっと小さく吐息をつき、静かに首を振った。そして、その硬貨を再びエリーゼの掌へと、そっと押し戻した。


「訳があって、今日は市井を視察していた。私はルインガルド帝国の皇太子、ウルス・ウィンターガルドだ。その白金貨は正直な君に差し上げよう」


 あまりに唐突で思いがけない返事に、エリーゼは目を丸くして、ただ瞬きを繰り返すことしかできなかった。



   ***



 ――そして、現在。

 聖女の役目を剥奪されたエリーゼは、むしろ清々しい気持ちでいた。


(ああ、これで、わたしは自由の身です。ゲーム原作の破滅エンドを回避したので、これからどうなるか予想がつきません)


 教会の物置小屋を片付けるため、彼女は冒険者ギルドへと足を運んだ。

 荷物整理の手伝いと、国外までの護衛の依頼を銀貨二十枚で出すと、半日もしないうちにアブスという恰幅の良い冒険者がやってきた。


「お嬢さん、一箱……荷物はこれだけですか?」

「ええ、アブスさん。わたし、本ぐらいしか持ってなくて。でも、本は持って行くのが大変だから、もう孤児院に寄付してしまったのです」


 エリーゼの手元にあるのは、着替えと最低限の身の回り品を詰めた鞄がたった一つ。それ以外は、まるであらかじめ準備していたかのように綺麗さっぱり片付いていた。


「たったこれっぽちの荷物運びと、隣国ルインガルド帝国までの護衛だけだなんて……お嬢さん、これじゃ半値でもいいくらいだが……貰いすぎて申し訳ないな」

「構いません。その分、しっかり護衛してください。わたしの聖魔法は魔物を祓うことはできても、盗賊などの人間には無力なんです」

「そりゃあ、いただいた報酬分はきっちり仕事をするが……分かった」


 アブスは経験豊富で、責任感の強い男だった。

 すべてを捨て去り、身辺整理を終えて淡々と廃材置き場へ向かうエリーゼの姿を見て、アブスの心はちくりと痛んだ。自分の娘はまだ彼女の半分くらいの年齢だが、エリーゼの倍以上の玩具や服を持って暮らしている。

 こんなに若い子が、まるで死地にでも旅立つかのような静けさを纏っているのが、アブスには気が気ではなかった。


「とりあえず、行きましょう。お願いします、アブスさん」

「あ、ああ……。すぐに馬車を持ってくる」


 アブスが御者となり、幌付きの荷台にエリーゼは鞄一つで飛び乗った。彼女が乗ったのを確認して、アブスはゆっくりと馬車を動かし始める。

 検問を抜け、目指すは隣国ルインガルド帝国。日数にして、およそ十日の旅路である。


(何がお嬢ちゃんにあったか知らないが、仮にもこの国を支えていた聖女様だった子だろう。あいつらは一体何を考えてるんだ。俺の娘がもし同じ目に遭ったらと思うと、いたたまれねえぜ)


 道中までは順調だった。しかし、ルインガルド帝国まであと三日というところで、エリーゼは高熱を出して寝込んでしまった。これまでの緊張の糸が切れたのかもしれない。


「エリーゼ嬢ちゃん、大丈夫か。川の水で冷やしたタオルだ。これを頭に乗せて冷やすんだ。あと三日で着くから、頑張れよ」

「ええ、ごめんなさい。疲れていたみたいね、わたし。馬車の荷台で寝ていますから、気にせず進めてください」


 エリーゼは荷台の隅で、濡れタオルを額に乗せて苦しそうに肩を上下させていた。それでも、心配そうに覗き込むアブスに対し、申し訳なさそうに、ふわりと力ない微笑みを浮かべる。


「そりゃあ進めるが……なあ、あまり込み入ったことは聞きたくないんだが、聖女ってのはそんなに酷い仕事なのかい」

「えっ」


 不意に向けられた純粋な気遣いに、エリーゼは狼狽えた。


(アブスなんてゲームには登場しませんでした。この方はお人好し過ぎます。こんな見ず知らずのわたしを気に掛けて下さるなんて、どうしたらいいのでしょう)


 前世を含めても、これほど無条件に他人に体調を案じられた記憶がなかった。


「酷い仕事というか……アブスさんにお支払いした銀貨二十枚は、聖女としてのわたしの給金の一ヶ月分だったんです。毎月、銅貨二、三枚しか残らなくて……それをずっと貯蓄していました」


 ポツリと弱々しく応える彼女の予想外の告白に、アブスは思わず絶句した。


「待ってくれ! 何だって!? 結界を張って魔獣から国を守って、天候まで整えていた聖女様が、たったの銀貨二十枚だと言ったのか? 酷い、酷すぎる!」


 エリーゼが驚いて顔を上げると、アブスはうっすらと目に涙を浮かべている。


「なあ、冒険者ギルドだって、駆け出しの奴でも月に金貨十枚……銀貨五十枚分は稼ぐんだぜ。そんな馬鹿げた扱いがあっていいはずがねえ!」

「でも、住み込みの物置小屋の家賃が、毎月銀貨八枚でしたから……」


 アブスは御者の位置に戻ると、怒りを鎮めるように無言でリンゴを取り出し、ナイフで丁寧に皮を剥き始めた。


「あのボロ小屋がそんなにするのか!? ……お嬢ちゃん、ルインガルド帝国に俺の知り合いがいる。パン屋をやっていて、ちょうど下宿人を捜しているんだ」

「まあ、それは素敵ね。でも、わたし、あまりお金がなくて……」


 アブスは剥いたリンゴを一口サイズに切り、エリーゼへと手渡した。エリーゼはそれを受け取ると、熱で乾いた喉を潤すようにシャリシャリと音を立てて食べる。


「大丈夫だ。パン屋で売り子をすれば家賃はいらねえし、給金で銀貨二十枚はもらえる。今の聖女様よりずっといい暮らしができるはずだ。伝手がないなら、そこへ行くといい」

「わあ……そんな夢みたいな暮らし、本当にいいんですか?」


 アブスの顔は、国に対する静かな義憤に満ちていた。

 熱で頬を赤くし、厚手のガウンを羽織りながら、手渡されたリンゴを美味しそうに食べるエリーゼ。アブスはその姿を、言葉にできないほど気の毒そうに、そして慈しむように見守った。 


   ***

 

――それから二日後。


 アブスの馬車に揺られ続け、ようやくルインガルド帝国まではあと一日の距離にまで迫っていた。高く険しい山を越え、目の前に広がる平野を抜ければ、そこには帝国の関所が待ち構えている。


 一行は山頂付近で夜営をすることにした。いよいよ明日でこの旅も終わりである。

 エリーゼの熱もすっかり引き、焚き火の傍らで静かに暖をとっていると、周囲の見回りを終えたアブスが険しい表情で戻ってきた。


「エリーゼお嬢ちゃん、あんた聖女をしていた時、天候もうまいこと調整していたんだよな?」

「え? ええ……。ミレイユは山脈から吹き抜ける冷気がとても強くて。ゲーム中でも気を抜くとすぐに……いえ、何でもありません。とにかく、農作物が寒波でダメになってしまうので、聖女の頃はほとんど休みがありませんでした」


 アブスは無言のまま、手近な枝で焚き火の芯をつついた。爆ぜた火の粉が夜の闇に消えていく。彼は手慣れた動作で温かい紅茶を淹れると、湯気の立つカップをエリーゼに差し出した。

 エリーゼは少しだけ頭を下げ、嬉しそうにそのカップを受け取る。指先から伝わる熱が、冷えた身体に心地よかった。


「新しい聖女……確かエスパダとか言ったか。あの子の聖女としての力はどうなんだ?」

「見習いでしたし、あまり真面目に聖務に取り組むタイプではなかったので、実際のところは分かりません。でも、きっと私よりできるのでしょう。国がそう判断して、私を追い出したのですから」


(わたしは、エスパダが主人公のゲーム世界しか知らないので、これからどうなるのか実は分からないのです。ごめんなさい、アブスさん)


 アブスは自分の紅茶を一口すすると、沈鬱な表情を浮かべて黙り込んだ。


「……今、山頂からミレイユの方角を見たんだが、ひどい雷雨が見えた。雹や雪に変わらなきゃいいんだがな。あの様子じゃ、作物への被害は避けられねえだろう」

「ええっ!? ……アブスさんのご家族は大丈夫なんですか?」

「ああ、心配いらねえ。俺は生まれも育ちもルインガルド帝国だ。家族もみんな帝国内にいる。……だが、帝国には聖女がいない。だから魔獣の被害も多いんだ」


 エリーゼが飲み終えた空のカップに気づき、アブスはお代わりがいるかと身振りで問いかけた。エリーゼが小さく頷くと、彼は手際よく熱い紅茶を注ぎ足し、再び彼女の手元へ戻す。


「魔獣なら私の魔法でも何とかできますけど……よっぽど条件が良くないと、もう聖女は嫌かな。また銅貨を数えて暮らすような毎日は……」

「ああ、分かってる。お嬢ちゃんはまずパン屋で下宿しながら、これからのことはゆっくり考えればいいさ」


 エリーゼは頷きながら、二杯目の紅茶をゆっくりと啜った。その様子をしばらく見守っていたアブスが、不意に腰のベルトから一本の短剣を抜き出し、彼女に差し出した。


「なあ……もし帝国に着いてから『シロン』って奴に出会ったら、この短剣を見せてやってくれ。アブスがお嬢ちゃんのことを宜しく言ってたってな」

「この短剣の紋章……アブスさん、あなたは帝国の騎士様だったのですか!?」


 差し出された短剣の柄には、狼と鷲が組み合わさった見事な紋章が刻まれていた。エリーゼは驚きのあまり、目を見開いてアブスの顔を見つめる。


「ははは、騎士は騎士でも流れ者の傭兵騎士団さ。帝国の正規騎士団じゃねえよ。まあ、昔は……ちょっと、な」

「それでも、すごいです。ありがとうございます。大切に預からせていただきますね。……でも、どうしてここまで私に良くしてくださるのですか?」


 エリーゼはそう答えると、贈られた短剣を壊れ物でも扱うかのような手つきで、大切そうに懐へと収めた。その指先には、まだ微かに熱の残滓がある。


(アブスさん。わたし、大切にします。まさか、この世界にこんな優しい方がいたなんて知りませんでした)


 エリーゼが短剣を収めるのを見ながら、アブスは照れくさそうに指で鼻の頭をこすった。


「あんたの半分くらいの年齢だが、俺にも娘がいるんだ。お前さんを見ていると、どうしても見過ごせなくてな。……まあ、元気でやってくれりゃ何よりだよ」


 遠くでフクロウの鳴き声が夜の森に響く。

 前世でも、そして今世でも、これほどまでに無私で温かな優しさを向けてくれた人はいなかった。エリーゼは視界が潤むのを感じ、溢れそうになる涙を堪えるように、温かい紅茶をもう一口飲み込んだ。


「わたしって、愛想もなくて、愛嬌も無い、理屈ばっかりのつまらない女なのに、ここまでしていただいて……」

「何を言ってるんだ。聖女の仕事は聞くだけでも大変だよ。仕事から解放されて昨日まで熱を出していた子が、何を言ってるんだか」


 アブスはそう言いながら、手近に置いてあった枯れ木を焚き火に追加した。

 パチッ、と爆ぜる音が夜の静寂に響く。火勢が強まり、エリーゼの頬を赤く照らし出した。


「ご迷惑をお掛けして……。聖女の現役時代、休むとお給金を引かれるから倒れないように気を張ってて。……久しぶりに熱を出してしまいました」


 アブスは呆れたように溜息をつき、首を横に振った。


「道中は過酷な道もあった。慣れない旅に、今まで当たり前だった生活の一新。緊張しっぱなしだったんだろう。倒れないほうが不思議だ。もっと楽をしていいんだよ」


 アブスの言葉が、凍てついたエリーゼの心に温かく染み渡っていく。


(つらい異世界に投げ込まれたと絶望していたけど、この世界だって、少しは、いいことがあるみたいです)


 ふと見上げた夜空には、澄み渡る月が浮かんでいた。エリーゼは、その穏やかな光にこれからの未来への希望を感じていた。


「そうだ、一つ提案がある」

「何ですか?」


 エリーゼは飲み終えたコップをアブスに返した。


「帝国についたら、新しい名前……例えば『エル』とでも名乗ったらいい。ミレイユの救国の聖女エリーゼは有名すぎる。穏やかに暮らすためには、そのほうがいい」

「エル……いい名前ですね。ふふっ、じゃあアブスさん、今日からエルって呼んでください」


 アブスは自分の紅茶をゆっくりと啜り、娘を見守るような慈愛に満ちた眼差しで彼女を見つめた。


「ああ、わかったよ、エルお嬢ちゃん。あと一日だが、よろしくな」

「はいっ」

エリーゼは、不意にこぼれそうになった涙を指先で拭った。

 それを見て、アブスはどこか寂しそうに、けれど嬉しそうに目を細めた。


(エル……ふふっ、いい名前ね、社畜OL時代やゲームで遊んでいた前世の頃にはなかった温かみを、今は感じます……)


 エリーゼは、何度も心の中で新しい名前「エル」を復唱した。


 孤児院で事務的に付けられた「エリーゼ」という名も嫌いではなかった。けれど、一人の人間として自分を案じてくれるアブスが、これからの幸福を願って贈ってくれたこの短い響きには、今まで知らなかった温かな愛着を感じていた。


 それは、聖女という役割を演じるための仮面ではなく、ただの自分として生きていくための、最初で最高の贈り物だった。


 やがて、馬車の馬が短くいななきを上げ、夜は静かに深まっていく。


 辺りにはリーン、リーンと鈴虫の鳴く声だけが響き、穏やかな静寂が旅人たちを優しく包み込んでいた。



   ***


最後までお読みいただきありがとうございます。


AI小説の現状を憂う意見を拝見し、もどかしさを勢いに変えて書き上げました。

「AIに書かされたもの」ではなく「自分の魂を削って整えた物語」として、少しでも皆様に届くものがあればと願っています。


現在、自己研鑽のため、本作の評価にかかわらず連載版の準備を進めています。

なお、連載版へ移行するにあたり、大幅な設定変更(不評であればエリーゼの設定変更など)を行う場合がありますので、あらかじめご了承ください。


本作を面白いと感じていただけましたら、ブックマークや評価、いいね等で応援いただけますと幸いです。

今後の活動の励みとさせていただきます。よろしくお願いいたします。


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本作品は、AI小説の乱立を嘆くエッセイにインスピレーションを得て執筆しました。


【参考にさせていただいた作品】

AI小説のみわけかた

https://ncode.syosetu.com/n8715mb/


【創作の指針としている自作資料】

私自身はまだ修行の身であり、プロ作家の友人に厳しくも的確な助言をもらいながら、日々研鑽を積んでいます。

小説投稿サイトのAI作品乱立に辟易し、撤退を口にしている師匠(友人)に、少しでも笑ってもらおうと思って書きました。


Web小説の文章力とは?「短文」の基本テクニック

https://ncode.syosetu.com/n2691me/


【感想やご意見をお待ちしています】

私は評価を得るためだけに作品を乱立させたり、安易にAIへ傾倒したりするつもりはありません。

至らない部分も含め、どうすればより良くなるか、いただいたご意見を参考に作品を改善していきたいと考えています。


「ジャンル自体が気に入らない」といった根本的なご指摘にお応えするのは難しいですが、「異世界転生・ファンタジー恋愛ジャンルの中で、もっとこうしたら面白くなる」「こういう展開が読みたい」といった具体的なご意見・ご感想は、ぜひ遠慮なくお寄せください。

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