第六章 二人目の目標
【椛殺害から三日後】
あれから椛の死体を倉庫の奥底にしまった。我が家の倉庫は何十年も前から手つかずとなっており、誰も触ろうとしないので隠す場所としてはうってつけなのだ。
二人目のターゲットは夏樹 向日葵にすることにした。向日葵はピンク色の丸眼鏡を掛けた、顔の整った人物だ。正直殺すのが少し、ほんの少しだけ惜しい。それほどに顔は整っているのだ。
向日葵への復讐を思案しながら教室へとはいる。今日は妙に冷え込んでおり、教室での話題はそれで持ちきりだ。
「おはようございます皆さん」
そう言いながら入ってきたのは腐朽先生だった。皆が急いで席に着く。
腐朽先生は基本朝礼ギリギリに入室するのだが、今日は二十分も早く入室している。何か良いことでもあった…という面持ちではないな。
「えぇ、三年生の紅葉椛さんが先週の金曜日から帰ってきてないそうです。何か情報を持っている方は私まで報告に来てください、よろしくお願いします」
まぁそうなるよな、娘が帰ってこなければ学校に情報を求めるよな。まぁうん、想定内だな。だがやはり生きた心地はしないな。あぁ嫌だな、また手が震えてきた。彼女を殺してからというもの、殺した時の光景が頻繁にフラッシュバックし、その度手が震えるのだ。
「大丈夫。顔色悪よ」
心配そうな声色で喋り掛けてきたのは、席が隣の緒川 菜だった。
「う、うん大丈夫。昨日からちょっと体調悪いだけだから」
「それ大丈夫じゃなくない」
御尤もである。
「本当大丈夫だから気にしないで」
「そう。そう言うなら、気にしないようにするよ」
「うん、そうして」
半ば強引に話を終わらせた。
それからはいつものホームルームへと戻った。
昼休みになり、私は三年生の教室がある、北校舎の三階へと向かった。
「痛っ」
二階から三階へと繋がる階段の踊り場で、眼鏡を掛けた美女とぶつかった。夏樹向日葵だ。向日葵は実に女性らしい、高い声を上げた。
「すみません、お怪我はありませんか」
「う、うん大丈夫だよ。こっちこそごめんね。それじゃ」
そう言うと、向日葵は足早に階段を降りていった。私もその影を急いで追った。
「どこに行ったんだよ」
向日葵を追い一階まで来たが、階段を降りきった時には見失ってしまっていた。何だあの女は、何かしらの怪異か。
そんなこんなで、結局のところ向日葵を見つけることはできず、昼休みは終わりを迎えるのだった。
放課後、私は入学して初めて図書館に足を踏み入れた。
「いらっしゃい。ゆっくりしていってね」
図書係であろう生徒が柔らかく話掛けてくれる。名前の刺繍の色を見るに向日葵達と同じ三年生のようだ。今少し話掛けられただけだが、全人類この人の様になれば良いのにと思った。
さて、私が今何故図書室に足を運んだかというと、向日葵への復讐のネタを得るためである。毎度同じでは芸がなくつまらないと思ったからである。それに、こうでもしないと気が本当に狂いそうなのだ。
そんな中、一つの本に目が留まった。【本当にあった怪異談】と書かれた本だ。なぜだか分からないが異様にこの本が気になる。
頁を何枚かめくるとメリーさんというタイトルの頁で目が留まった。
「ああ、これにしよう」
口をついて出てしまうほどの納得を、この本は私に齎してくれた。
感謝の念を込めながら本を棚に戻し、急いで家へと向かった。この素晴らしいイメージを忘れてしまわないように。
次回、恐怖のメール




