第五章 第一の復讐
【翌週の金曜日放課後】
椛の家のインターホンを鳴らす。
「はーい」
剽軽な声と共に憎たらしい顔が覗き出てくる。
「どうも、椛さん。少し、お話よろしいでしょうか」
「誰」
困惑顔でそう答える彼女の手を無理やり引き住宅街から出る。抵抗をしてはいるものの力が弱く容易に連れ出すことができた。顔は困惑に恐怖が乗り実に滑稽である。
「なんなのよあんた。こんなとこまで連れてきて」
椛の手を引き我が家の近くにある山へと連れ込んだ。
「私の顔に見覚えはありませんか」
「…ないけど」
椛は私の顔を覗き込み念入りに確認した末にそう答えた。私の顔はそこそこ姉と似ているのだがな。
「…そう、なら桜木という苗字に聞き覚えは」
「本当になんなのよ」
「いいから答えて」
椛の顔に倉庫の奥で眠っていた、錆び付いた両刃鋸を突きつける。
椛の顔が恐怖で染まっていく。
「な、ないわよ」
「本当に」
更に刃を近づける。
「本当よ」
涙目で叫ぶ姿は滑稽だが同時に神経を逆撫でる。
「そうか、続きは小屋のなかでやろうか」
私は椛の髪を引き、左手に持っていた金槌で思い切り頭を殴りつけた。当たりどころが良かったのか、一発で気絶してくれた。
「ううぅん」
山奥にある小屋の中に不快なうめき声が響く。
「起きましたか」
「夢じゃなかったか…」
「そりゃぁね」
椛の声には生気がなかった。良い傾向だが、まだ死なれては困る。
「先程の質問の続きです。本当に桜木という苗字に聞き覚えはありませんか。よく思い出してみてください」
椛は二十分程考えて顔を青ざめさせながら口を開く。
「まさか、あんた月桂の妹」
「正解です、椛さん」
「何、姉の敵討ちのつもりバカバカしい。早くこの縄解いてよ」
まぁ威勢の良いこと、だが顔は相変わらず恐怖に染まっている。
「解きませんよ一生。私、今から準備するのでそれまで懺悔でもしていてください」
五月蝿い椛を背に準備を進めていく。
一時間が経過した頃、ようやく準備が完了した。十分経った頃から椛は喚くのを止め、ずっと俯いていた。おかげでスムーズに準備を進めることができた。
「さて、準備が終わりました。そろそろ始めましょうか」
そう言うと、椛は虚ろな目でこちらを見あげる。
「最後に聞かせてください、なぜ姉を追い詰めるような真似をしたんですか」
「何でもできて顔もいい、それが妬ましかったのよ。悪かったわよ、あやまる。だから解いてよ」
椛は大粒の涙を零しながら懇願してくる。
「くだらね。言ったでしょ一生解かないって」
数発拳で椛を殴り、ホームセンターで買ってきた練炭に火をつけ小屋を出た。出ていく直前まで何か喚いていたが、私の耳はその言葉を言葉とは認識しなかった。
私は小屋の前で椛が事尽きるのを待った。
一時間も経たないうちに椛の嗚咽は止んだ。
数分置いてから小屋の窓を固定していたガムテープを剥がし開け放つ。
粗方煙が出終わったので小屋のなかに入る。
「おや、まだ生きてましたか」
椛は過呼吸で椅子に括られたまま横たわっていた。抜け出そうと暴れた時に倒れ、そのおかげで生き延びたのだろう。熟哀れな女だあのまま死んでいれば楽だったのに。
「やっぱりとどめは自分で刺さないとか。じゃあ、さようなら」
金槌を大きく振りかぶり彼女の頭に叩きつけた。何度も何度も。
「もう死んだ。死んだよね」
床には血溜まりができていた。臭いも酷いものだ。手も血で染まっている。
「はは、震えてるや」
覚悟を決めたとて恐怖が完全に消える訳がないのだ。自分に呆れながらも安心した。
「さて、掃除するか」
まず死体をバッグに詰め外に出す。それから外にある蛇口にホースを繋ぎ、水を撒きブラシで血を流す。そして洗剤を撒き更に擦る。それを4回ほど繰り返すと床は綺麗になった。
「よしこれでいいだろう。後は数日間換気し続ければ臭いも消えるだろ」
消臭スプレーを吹き、バッグを持って小屋を跡にした。
次回、二人目の目標




