第6話
本を読んでいる優馬を見つめる。
優馬が、「座れよ」とまた前の席に視線を送った。
席に座り、優馬に体を向ける。
優馬が本を閉じ、またゆっくりと両肘を机につけ、顔の前で手を組んだ。
「優馬、昨日言ってた夢のことなんだけど」
「胸は大きくできたのか?」
俺は目を細めて優馬を見る。
「……もしかしたら俺は、女の子の夢の中に入り込んでいるのかもしれない」
「は? 胸は?」
俺は咳払いをして、「そんなことできねぇよ!」と言った。
「できないなら、この話は終わりだ」
優馬が本を開いて読み始めた。
こいつ……。
「だから、女の子はゆめっていう子なんだけど、その子も夢を見ていて、俺はその子の夢の中に入ってるんだよ。だから、その女の子は夢を自由に操れて、俺は何もできないんだよ。だから胸を大きくすることはできないんだよ!」
優馬がまた本を閉じた。
「なんだそのファンタジーな話は。じゃあその子はやっぱり現実に存在するのか?」
「分からないけど、やけにリアルな夢なんだ。とりあえず、その、ゆめって子の記憶を取り戻そうと思う。今日も夢に出てくるか分かんねぇけど……」
優馬が本を机の上に投げ捨てて、頭の後ろで手を組んだ。
「なーんでお前ばっか良い夢見るんだよ。俺が先に、ゆめを見つけてみせる。待ってろよーゆめー!」
教室中に響き渡る声で優馬が言った。
周りからは、「優馬うるさーい」とか言われている。
「ゆめは俺のものだ! だいたい俺の話信じてないだろ?」
「うん。信じられるかそんな話。でも、お前の夢に出てくるんなら、現実にゆめはきっといるはずだ! 俺は探してみせるぞ!」
はぁ、と俺はため息をつく。
本当こいつは……。




