第4話
昨日夢に出てきた女の子が俺を見つめていた。
今日は赤いワンピースを着ている。
「颯太くん。また私の夢に来てくれたの?」
そういえばお互いの夢に出ている設定だったよな。
「俺の夢にも来てくれたんだね。ありがとう! 今日は赤いワンピース着てるんだね。可愛い」
「ありがとう。これね、着たいなぁってイメージしたら、いつの間にか着てたの」
女の子は、目を落とし、照れたように笑った。
「いつの間にか? 夢ではどうにでもできるからか……あ、そう言えば、記憶がないっていう設定だったよね? 何か思い出した? 名前とか……」
女の子が俺と目を合わせて頷いた。
「その前に設定とかじゃないから。本当に記憶がないの。名前は……たぶん、ゆめ、だと思う」
「ゆめ……」
「うん。ゆめ、ゆめ、って呼ばれるの」
「呼ばれる? 誰から?」
「女の人の声なんだけど、姿は見えない。誰か分からない」
「へー、姿は見えない女の人。誰だろうなぁ。出てきてくれたらいいよなぁ。名前は、ゆめ、か……良い名前だね」
「本当に自分の名前が、ゆめ、なのか分からないけどね」
ゆめは、不安げな顔をしている。
「夢に出てくる、ゆめ……」
ぷ、と言って、ゆめが笑った。
「親父ギャグ? あはは」
「あ、つい……あはは」
俺は鼻をかきながら笑った。
しばらく沈黙が続いて、俺はその場に座った。
「まぁここに座りなよ」と言って、俺は目の前を指差した。
「あ、待って。椅子に座る?」
周りを見渡したが、椅子なんてどこにもない。
「椅子ないじゃん」
「今から出すね」
「出す?」
ゆめは目を瞑り、顔に力を入れているようだ。
俺は首を傾げながら、ゆめを見つめた。
いきなり目の前に、ソファーが現れた。
黒色で、高級そうなレザーのソファーが目の前にある。
「えっ! すげーじゃん!」
やっぱり夢ならどうにでもできるのか。
じゃあ俺にもできるな。
ゆめの胸を見つめ、胸が大きく……
いや、俺は優馬じゃないんだ。たとえ夢でもこれだけはダメだ。
俺は頭を激しく振った。
「颯太くん、どうしたの?」
ゆめが首を傾げ、不思議そうな顔をしている。
「い、いや。なんでもない。夢っていいな。なんでもできるじゃん。じゃあ俺はテーブル出して見る!」
目を瞑り、テーブルを想像した。
ソファーの前にある小さめのテーブル、出てこい。
目を開けると、さっきのソファーしかない。
「あ、あれ? 俺の夢なのに何でだ?」
「ねぇ、とりあえずソファーに座らない?」
俺もゆめもソファーに腰掛けた。
「俺の夢なのに、何で俺には何も出せないんだ……」
「颯太くん。私思うんだけど、この夢たぶん私の夢なんじゃないかな?」




