第3話
学校に行っても、見た夢のことを考えてしまう。
休み時間になり、本を読んでいる優馬をじっと見つめる。
優馬が本から視線を外し、俺を見た。
「何? 話したいことがあるんだろ? そこ座れよ」
優馬が、空いている前の席に向かって視線を送った。
俺は優馬の前の席に座り、優馬のほうに体を向ける。
「あのな、昨日? 今朝か。夢を見たんだ」
「夢? どんな?」
優馬が本に目を落としたまま答える。
「めっちゃくちゃタイプの女の子が出てきた」
優馬は本を閉じ、机の上に置いた。
ゆっくりと両肘を机につけ、顔の前で手を組んだ優馬は真剣な眼差しで、「詳しく聞かせてもらおうか」と言った。
「お前本当、女の子の話になると真剣に聞きだすよなぁ」
「早く。どんな子? 胸のサイズは?」
優馬の真剣な眼差しは続いている。
「おい。教室でやめろよ。周り女子いるんだから。まず、俺はそんな所見てない」
俺は少しだけ小声で言う。
「夢ならどうにでもできるだろう。デカくできるだろ」
「うるせー。話聞け! 黒髪で髪の長さは肩まで、切れ長の目で八重歯が可愛い。俺も女の子もお互い夢を見ていて、女の子は記憶がない設定」
「やば。お前の妄想やば。で? 胸は?」
こいつの言うことはスルーしよう。
「この夢ってさ、俺のタイプの女の子が現実に現れる予兆なんじゃないかと思って」
「それはないな」
優馬が腕を組んで、肩をすくめた。
「何で言い切れるんだよ」
「お前のタイプということは、俺のタイプでもある。お前より先に俺が出会ってやる」
優馬が歯をカタカタ鳴らし、俺を威嚇するような目で見てくる。
俺は口をつぐんで、笑いそうなのを堪える。
あ、そういえば、と優馬が話し続ける。
「夢ってさ、脳が記憶を整理してる時に見るらしいよ」
「どういうこと?」
「だから、夢はお前の記憶から作られてるから、見たことないものや、見たことない人は夢に出てこないんだよ。だから、夢に出てきた女の子は見たことがある人、もしくは会ったことある人ってこと」
「え、絶対会ったことない。会ってたら覚えてるだろ、俺のタイプなんだから」
「思い出せないだけで、記憶では残ってるんじゃない?」
記憶では残っている、か。
夜、寝る前にベッドの上で目を瞑り、電車、学校、ゲーセン、色々な場所を思い浮かべるけれど、夢の中のあの子と会った記憶はない……。




