第13話
教室に入ると、優馬がスキップをしながら近づいてくる。
「めちゃくちゃ上機嫌じゃん」
「莉子〜彼氏〜いないんだってぇ〜」
「良かったな」
「反応薄いなおい。今日は放課後デートで〜す」
「良かったな。それより、ゆめのこと何か聞いたか?」
「あぁ、今日放課後、三人でゆめに会いにいこうって言ってたよ」
「……それ早く言えよ!! はっ? 放課後デートって、ゆめに会いにいくこと?」
「そうだよ〜ん」
俺は目を細めて優馬を見る。
「お前、莉子の前でデートとか言うなよ」
優馬が澄ました顔をする。
「言うわけないじゃん」
歯を食いしばって、優馬を睨む。
優馬は俺を見て口を大きく開けて笑った。
こいつ本当むかつく。
放課後になり、校門で莉子が来るのを待つ。
優馬はこんな時でも本を読んでいる。
「優馬くん!」
振り向くと、莉子が走ってきていた。
ん? 優馬くん?
「ごめんなさい遅くなって。颯太さんもすみません」
俺はさん付けか。
「いや全然大丈夫」
「じゃあ莉子行こうか」
優馬が本を閉じ、澄ました顔をして言う。
「優馬くん。本読むんだね」
「あぁ。暇さえあれば本読んでる。莉子も読む?」
二人が俺の前を歩いている。
昨日の今日で仲良くなりすぎでは?
すげー盛り上がってる。
さすが優馬だな。
二人とも、俺のこと忘れてませんかー? と心の中で叫ぶ。
しばらくすると、優馬が振り返って、「電車に乗って移動するからなぁ」と言った。
「優馬くん、まだ言ってなかったの? どこに行くかも言ってないの?」
「えっ? うん。言ってなかった。ごめん。莉子のことで頭がいっぱいだった」
莉子が眉間に皺を寄せて優馬を見ている。
「何その私で頭がいっぱいとか。意味わかんない。もぉ優馬くんしっかりしてよね! 颯太さんすみません」
「いや、大丈夫。優馬いつもこうだから」
「いつも? 優馬くんちゃんと大事なことは言わないと!」
優馬は目尻を最大限に下げて微笑んでいる。
怒られて嬉しそうにすんなよ優馬。
「はい。莉子に怒られたいので、これからも大事なことは言いません」
「はい!? どゆこと!? 本当優馬くん変な人なんだけど!」
莉子が呆れたように笑った。
こんな夫婦喧嘩みたいなことが繰り広げられて着いた先は、あかさ総合病院だった。
たしかここは、あのマックから近いはず。
俺の読みは当たっていたんだ。
病院内に入り、5階の病棟に足を踏み入れた。
少し廊下を歩いて、莉子が病室の前で立ち止まった。
病室の前には、松浦ゆめと書かれたプレートが貼られていた。
ゆめが、ここにいる。




