第12話
目を開けると、横断歩道で信号待ちをしていた。
ここ、この前来た駅前の横断歩道だよな。
横断歩道を挟んで向こう側を見ると、ゆめが制服姿で立っていた。
なんか見たことある光景だな。
はっ、と息を吸った。
学校が早く終わった日、ここで信号待ちをしていた。信号待ちをしている同じ学校のやつらがいっぱいいた。
横断歩道を挟んで向こう側に楽しそうに話していた女子がいた。今思えば、あれはゆめと莉子だった気がする。
なぜか腕が熱い。
そうだ。あの時、もしかして、ゆめとぶつかった? たしか、「ごめんなさい」と女の人のか細い声が聞こえた。ゆめの声に似ていた気がする。
横断歩道を走ってゆめの元へ走った。
「なぁ! 俺思い出したよ! 俺と君、やっぱり会ってた! ここの横断歩道ですれ違ったんだ! 腕がぶつかったのは、たぶん君だった!」
「ここで? 腕がぶつかった……」
ゆめが腕をさすっている。
「ごめんなさい」とか細い声でゆめが言った。
あの時の声とそっくりだ。
「そう! 俺、ごめんなさいって言われたんだ!」
「はっきりとは思い出せないけど、ぶつかった気がする……」
「あれが君だったとしたら、腕がぶつかったから俺が君の夢に出るようになったとか? まぁ何でかは考えても分かんねぇか。たしか……あの日の夜に君と夢の中で初めて会ったんだよな。じゃああの日から君はずっと眠ってるってこと?」
「そうなのかな……」
「あ、そうだ! 今日君の親友に会ったんだ! 莉子って子なんだけど、思い出せそう?」
「莉子、莉子……りっちゃん?」
「思い出した?」
「いや、顔とかは思い出せないんだけど、今ふと、りっちゃんって頭の中で浮かんだの」
「その莉子が君と俺を会わせてくれるかもしれないんだ」
「じゃあ私が今なぜこんな状態なのか分かるってことなんだね」
「うん。そうだね」
「なんか怖いなぁ」
ゆめが俯いている。
「何が怖い?」
「自分がどうなってるのか、いつか夢から覚めるのか、もし夢から覚めたとして、どんな現実が待っているのか……全部怖いな」
俺はゆめの手を取り、握った。ゆめの手の大きさは見て分かる。でも、皮膚の柔らかさや骨ばった感覚は分からない。早く現実のゆめに会って触れたい。
ゆめは真っ直ぐ俺を見ていた。
「俺がいるから大丈夫。とか言われても頼りないかもしれないけど、俺がそばいるから」
ゆめが少し微笑んだ。頬が赤くなっているような気がした。
「ありがとう……」
「あのさ……もし、夢から覚めたら、いつか俺とデ、デ、デーツしない?」
うわ、ださっ! めちゃくちゃ噛んだ。まじ最悪。何で俺ってこうなんだ。やばい。心臓の鼓動が早い。顔が熱い。絶対顔真っ赤じゃん。ださすぎ。
「デート? ……わ、わ、わたすで良ければ! あ、噛んじゃった……」
二人で吹き出して笑った。
早く現実で会いたいな。
笑いが少し落ち着いて、ゆめが上目遣いで俺を見てくる。
あぁ、また心の中の天使達が鐘を鳴らしている。




