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君と夢の中で  作者: 七瀬乃


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第11話


「優馬、一年の所に聞き込み行こうぜ〜」


 本を読んでいる優馬が、「おー」と生返事をする。

 本を閉じようとしない。昨日あんなにやる気満々だったのに。


「なぁ。行こう」

 

「はいはい」

 優馬が、はぁ、とため息をついて本を閉じた。

 むかつくな、こいつ。


「優馬ー! 颯太ー! 女の子が呼んでるー!」とクラスの男子が叫んでいる。


 教室前のドア付近に、見知らぬ女子が立っていた。

 俺がその女子の所に向かおうとすると、優馬が俺を押し退けて先に行った。


 こいつ……


 俺も遅れていくと、女子が優馬を睨みつけている。その視線が俺にも向けられた。


 俺は思わず足を止める。


 恐る恐る近づくと、女子が優馬と俺を交互に見て、一瞬はっとした顔をした。


 優馬は俺の後ろに隠れた。


 振り返ると、「頑張れ」と優馬が小声で言った。


 こいつ……


「俺達に何か用ですか?」


「あなたは颯太さんですか?」


「そうですけど……」


「なんか人を探していると聞いたんですけど、何で探してるんですか? 目的は? あなた達は何者ですか?」


「……もしかして、ゆめのこと知ってるんですか?」


「それは言えません。さっきの質問に答えてください」


「その前に、あなたは何年何組の誰なんだ! 先に名乗ってください」と優馬が俺の後ろで言った。

 

「そうですね。すみません。私は一年四組の市川莉子いちかわりこです。次は優馬さん、颯太さんの番です。質問に答えてください」

 莉子が伏し目がちに言った。


 優馬が俺の前に出てきた。

「俺の趣味は読書。暇さえあれば本を読んでる。こう見えてもカラオケでは女性アイドルの曲も歌って踊るんだ。女の子にはめちゃくちゃ優しい。彼女募集中」


「……そこまで聞いてないんですけど。いらない情報が多いんですけど」

 莉子が冷たく言い放った。


 優馬がまた俺の後ろに隠れる。


「俺は、別に怪しいものじゃない。ゆめの知り合いで、ゆめのことを探しているんだ」と俺は言った。


「知り合いなのに探しているんですか?」


「会ったことはないんだけど、喋ったことあるっていうか……」

 夢で会ってるとか言っても、こいつ何を言っているんだとか絶対思われるし、怪しさが増すし、どう言ったらいいんだ。詰んだ。


「颯太は紹介してもらったんだよ! ゆめって子を紹介してもらってLINEとか、電話とかしてたんだよ。連絡取れなくなったから探してるんだ」と優馬が言う。

  

 優馬良いこと言うじゃん。


「証拠見せてください。誰からの紹介なのか、LINEも見せてください」

 

 誰からの紹介? 適当に誰かの名前を言うか?

 それと、LINE見せろって、LINEのトークとかないし、その前に友だちとして登録もしていない。

 どうしよう。


「あのさ、結局莉子はゆめの友達なわけ? 莉子こそゆめのなんなの?」と優馬が言う。


「いきなり呼び捨て……まぁいいですけど、私はゆめの親友です」

 

 ゆめの親友だったのか。ゆめに近づいた。


「ゆめってさ、髪の長さは肩までで、丸いメガネをかけていて、八重歯が可愛い子のことだよな!?」と俺は訊いた。


「そうです」


 やっぱりゆめは現実に存在していた。ようやく会える。ゆめが夢をずっと見ている原因が分かる。


「ゆめは今どこにいる? 教えてくれない?」


「その前にLINEの証拠は?」


「……わ、忘れた! 今日スマホ忘れたんだ」


「じゃあ今日は教えられません」


 優馬が前に出てきた。

「俺はともかく、颯太は別に怪しいやつじゃない。何で教えてくれないんだよ」


 莉子が優馬を睨んだ。

 

 優馬は歯をカタカタ鳴らしながら、莉子を見ている。

 

「ゆめは大切な親友だから、あなた達が怪しくないと分かるまで教えません」


 どうやったら俺達のことを信用してもらえるんだ。

 俺が知ってるゆめは……


「……じゃあ、LINEの証拠は今出せないけど、ゆめと俺が仲良いって証明できたらいいんだよな?」


「まぁ、そうですね」と莉子が目を落として言った。

 

「ゆめは、赤いワンピースを持ってる」

 俺がそう言うと、莉子は目線を上げた。


「ほ、他は?」


「家がでかい。家に黒いレザーのソファーがあるよね?」

 

 莉子は口をはっと開けた。


「えっ? 家に行ったことあるんですか?」

 

 やっぱりあれは家のソファーだったんだ。


「ないけど、ゆめから話を聞いたんだ」


「ストーカーじゃないですよね?」

 莉子は俺を睨みつけている。


「いやいやいや! ストーカーとかじゃないから!」


 他に信用してもらえること、ゆめのことで知っていること、他に何があったっけ。


「他にないなら明日LINE見せてください」


「ある! あるある! ゆめは、いちごが好きで、焼き鳥が好きで……ゆめはずっと夢を見てる! ずっと眠ってる!」


 莉子が目を見開いた。


「……私とゆめの親しか知らないこと、何で知ってるんですか? 焼き鳥が好きなこと、ゆめは恥ずかしくて、私と親にしか言ってないって……あなた、本当に仲が良いんですね。それに眠っていることも知ってる……分かりました。明日まで待ってもらえますか? ゆめに会えるか確認するので、明日また来ます」


「わ、分かった。待ってる」と俺は言った。


「ちょっと待った! 来なくていい! 莉子の連絡先教えてよ。俺に連絡して」

 

「えっ……インスタやってます? DM送ります」


「いや、俺インスタやってないんだわ。LINEでお願い」

 優馬、お前インスタやってるだろ。さっきまで怒っていたと思ったのに、女の子の連絡先はしっかり訊くんだもんな。


「分かりました。しょうがないです。QRコード読み込んでください」


 連絡先を聞いているのに、優馬の表情は別に嬉しそうではない。やっぱり怒っているのか? しょうがなく俺のために連絡先を訊いてくれてるのか?


「じゃあ連絡待ってるわ」

 澄ました顔で優馬が答える。

 莉子が軽く頭を下げて去っていった。


「優馬が女の子に怒ってるところ初めて見たわ」


「あんな気の強い女……めちゃくちゃタイプだ」


「はっ?」


「少しは怒ってたけど、あえて怒って、あとから優しくするんだよ。そしたら、この人意外に優しいなぁ、キュンってなるだろ? 俺を好きになるだろ?」


「好きになるか分からないけど、お前策士だな……」


「優馬策士に改名しようかな! ははは! 俺は絶対莉子と付き合う!」


「莉子、彼氏いるかもしれないぞ」


 優馬が下唇を噛み締めながら、目をパチパチさせている。


「きっと彼氏いない。今から確認するんだもん!」


「まぁ頑張れ」

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