第10話
「颯太くん」
目を開けると、制服を着たゆめが、教室の真ん中あたりの席に座っている。
「教室だ……。少しずつ思い出しているんだね」
「たぶん……。制服を出せたあと、色々イメージして、この教室が出てきたの。でも、先生とか友達とかは思い出せない。まず親の顔を思い出せないもんね……」
俺はゆめの横の席に座り、ゆめに体を向けた。
「うん……。少しずつ思い出していこう。君が同じ学校だって分かったから、ゆめって子知らないか聞き回ったんだ。同じ学年に君はいなかったってことは分かった。だから明日一年生に聞いて回ろうと思ってるんだ」
「ありがとう……。私も思い出せるように頑張るね」
ゆめが微笑みながら俺を見つめている。
俺の血液にチョコレートが混ざって、全身に巡っていくような感じがする。
「なぁなぁ。俺、ゆめの好きなこととか、好きなものとか知りたいなぁ」
「好きなもの……」
ゆめが自分の手のひらを見ている。俺も見ていると、手のひらにイチゴが出てきた。
「イチゴ好きなの?」
「たぶん……最初に浮かんできたのがイチゴだった」
ゆめが目を細くして笑った。
「じゃあ他には?」
ゆめが、うーん、と首を傾げていると、机の上に焼き鳥が出てきた。
「私、焼き鳥好きなのかも」
「けっこう渋いな」
「なんか恥ずかしい」
ゆめを見ると少しだけ耳が赤くなっていた。
俺はその姿を見ると、心の中に住んでいる天使が鐘を鳴らし始める。鐘が鳴り始めると、どうにも口角が上がってしまう。
それから、ゆめは好きなものや嫌いなものも少しずつ思い出していった。
アラームが鳴り、俺は目を覚ました。




