8.兄ちゃん、眠気に弱くなる ※一部エルドラン団長視点
食事を終えると、お皿洗いは料理を食べた騎士たちがしてくれることになった。
エルドラン団長がシンクの使い方を教えていたが、騎士たちは水が出ることに驚いていた。
むしろ今までどうやって水を出していたのだろうか。
ちなみに僕にも教えてくれたが、あまりにも嬉しそうに話すから、大袈裟に驚いて褒めておいた。
だって、こうすることで弟たちは自ら日頃のことを話すようになるからね。
だけど……エルドラン団長が本当に弟のように見えてきたぞ。
「ソウタ、眠いなら膝を貸すよ?」
この体になってからか、椅子に座っていると眠気が強くて困る。
今もお腹が膨れてフワフワとしている。
ゼノさんが膝をポンポンと叩いているが、元中学生の僕が弟妹みたいに膝を借りて寝るなんて考えられない。
「少し寝るだけなので大丈夫です」
「そっ……そうですか」
僕がテーブルに顔を伏せようとしたら、ゼノさんは残念そうな顔でシュンとしていた。
膝に頭を置かれたら誰だって重いだろう。
僕は少しだけ眠ることにした。
♢
「ソウタ、洗い物を――」
「シィー」
洗い物を終えた俺が戻ると、すでにソウタはテーブルに顔を伏せて眠っていた。
あんな小さな体で魔物に襲われて、その後に騎士たちの料理を作っていたら眠たくなるのは当たり前だ。
ジンやゼノをはじめとした騎士がソウタの頬を突いて遊んでいる。
彼には人を癒す力があるのだろう。
「それにしても唐揚げはうまかったな」
「あんなに美味しい食べ物がこの世にあるとは思わなかったです」
「俺の好物になりました」
騎士たちの評価も高いようだ。
それを聞いて俺も嬉しくなる。
初めて料理をしてみたが、あんなに楽しいとは思わなかった。
ソウタから自分で作ると、さらに美味しくなると言われたが、あれはソウタが教えるのがうまいからだろう。
俺は言われた通りに、ただ揚げていただけだからな。
「エルドラン団長、あの子は一体誰なんですか?」
声をかけてきたのは、副団長のエリオットだ。
彼は俺よりも規律やルールには厳しい。
急に黒翼騎士団にいるソウタが気になっているのだろう。
「俺の見立てだと……逃げてきた奴隷か貴族の隠し子だな」
「そうですか……」
エリオットは眼鏡を上げて、ソウタをジーッと見つめている。
あれは何か考えている顔だな。
エリオットは基本的に無口で自分のことは話さない。
顔の表情一つでも変わったらわかりやすいんだが、彼の過去のことを考えるとそれも仕方ない。
「彼をこのまま預かるつもりですか?」
「ああ、俺はソウタがここから離れたくなるまでは面倒を見てもいいと思ってる。騎士たちにも好かれているからな」
ここにいるほとんどの人は、俺が集めた最高の騎士たちだ。
そんなやつらがソウタを嫌うはずがない。
ゼノなんてソウタにベッタリだからな。
俺はソウタも将来は最高の騎士になると信じている。
もし、嫌になれば時間とともにいずれ自ら離れていくだろう。
「こんなところにいても未来はないですよ……。翼が折れた鳥は、ただ地面を這いずるしかできないですからね」
エリオットは左遷でこの騎士団に配属された。
彼はそのことを言っているのだろう。
どこか冷たい顔をしているエリオットの肩をそっと叩く。
エリオットはそれだけ確認すると、部屋に戻って行った。
〝翼の折れた騎士〟それが俺たち黒翼騎士団の別名だ。
人それぞれ色々な過去を経験している。
だからこそ、強くなって再び空に羽ばたくと俺は信じている。
「みんな……会いたいよ……」
ソウタの寝言が部屋に響く。
目元から涙が出ているところを見ると、俺の心はギュッと締め付けられる。
「くっ……やっぱり奴隷商はゆるせねーな」
「今もソウタを苦しめるとはね……」
ジンとゼノはさっきまで楽しそうにしていたのに、今は怒りを必死に堪えていた。
こんな騎士団だけど、せめてソウタだけでものびのびと立派に育ってほしい。
「エルドラン団長、ソウタを寝かしつけてきますね」
ゼノはソウタを抱えて、部屋に運んでいく。
女性嫌いなゼノがまさか子ども好き……いや、ソウタだからなんだろう。
見た目が派手なモテ男なのに、見たことのない気持ち悪い微笑みをしていた。
まぁ、あいつはある程度、分別わきまえているから大丈夫だろう。
「さぁ、お前ら! ソウタを歓迎する宴をするぞ!」
「本人が寝ているのにですか?」
「ああ、俺がただ飲みたいだけだからな!」
俺は調理場に行き、隠していた唐揚げを持ってくる。
絶対に酒のつまみにしたら美味しいと思っていたからな。
「なぁ!? エルドラン団長ずるいスッ!」
「そうですよ! 俺らにも酒をくださいよ」
次々と騎士たちがグラスを片手に酒を注いでいく。
「くぁー、酒と唐揚げの組み合わせは最高だ!」
酒と唐揚げの組み合わせは想像を超えるほどうまかった。
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