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転生先で生活能力ゼロ騎士団に保護された結果、僕がおかんになりました~元・世話焼き長男、誤解されがちな騎士団を立て直します~  作者: k-ing☆書籍発売中
第二章

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46.兄ちゃん、先生をする

 ゼノさんを連れて浴室にいくと、キッシュさんはすでに疲れた顔をして湯船に浸かっていた。

 やはりお風呂が苦手なのは、騎士あるあるなんだろうか。


「キッシュさん、大丈夫ですか……?」

「あぁ……風呂はこんなに戦いだったのか……」


 きっとお風呂が嫌いなわけではなく、エルドラン団長とジンさんにもみくちゃにされて疲れているのだろう。

 あの二人だから、どっちが先に体を洗えるかで競わされていたに違いない。

 烏の行水よりも早いからな……。

 騎士の行水ってことわざを作っても良いぐらいだ。


「みなさん、ちゃんと100まで数えてから出てくださいね!」

「「「ゲッ!?」」」


 僕の言葉に騎士たちはビクッとしていた。

 そんな騎士たちが早くお風呂から出ないように、取り入れた対策が数字をかぞえることだ。

 もちろんエルドラン団長やジンさんもそこに入っている。


「38……39……次はなんだっけ?」

「50じゃないっすか?」

「39……50……51……」


 数をかぞえさせても、こうやって100まで言えない時がある。

 大人なのにと思ったが、生活していくなかで20くらいまでは言えても、それより上は言う機会が少ない。


「そこは40ですよ」

「おっ、助かった!」


 キッシュさんがすぐに教えていた。

 さすが青翼騎士団は貴族なだけあって、教養はあるようだ。

 平民の子どもたちは勉強している姿を見たことないし、人手として数えられているから、教養がないのは仕方ない。

 黒翼騎士団はゼノさんとエリオットさん以外は平民って聞いているからね。


「ゼノさんもしっかり洗ってくださいよ!」

「ソウタがやって……」

「はぁー」


 僕はゼノさんの髪の毛を洗っていく。

 妹の髪の毛をよく洗っていたけど、ゼノさんは妹よりも頭が大きいから大変だ。


「気持ちいい……」


 段々と寝そうなゼノさんの顔にお湯をかける。


「あとは自分でやってください」


 ゼノさんは一度寝ちゃうと、全く起きないからね。

 昼間はバシッと決まってるのに、夕方から朝方にかけて人が変わったように子どもっぽくなる。

 最近は早寝早起きを習慣化するようにしたけど、その影響なのか出会った当初よりも眠たくなるのが早そうだ。

 洗い終えた僕は大きな湯船に体を入れる。


「ふぅー、癒される……」


 全身の力が抜けるような気分に疲れが取れていく。

 小さな子どもの体だけど、思ったよりも疲れやすい。


「ソウタはたまにおじさんみたいだな」


 必死に数をかぞえていたエルドラン団長におじさんだと言われてしまった。

 僕からみたらエルドラン団長たちが若いだけだと思う。

 常に走り回って、いつも楽しそうだしね。


「エルドラン団長、今どこまでかぞえました?」

「あっ……えーっと……」

「忘れたなら1からですね」

「くっ……」


 エルドラン団長は必死に指を曲げながら数字をかぞえていた。

 そんな騎士たちを僕は眺めながら、100まで言えない騎士にはその都度教えていく。


「そういえば、ソウタ先輩あれはなんですか?」

「あれ……ですか?」


 キッシュさんは洗い場にあるものを指さしていた。


「あー、あれも灰から作った石鹸ですね」

「灰から……?」

「はい、灰から……くくく、ギャグみたいですね」


 ついつい笑ってしまった。

 お風呂に入るようになった騎士たちだが、みんな水洗いのみで汚れを流すだけだった。

 エリオットさんに聞いても、基本的には体は擦るだけだし、頭はオイルを塗って汚れを落とすだけと聞いている。

 やっぱり元日本人としては、シャンプーやリンス、ボディソープがなくても石鹸でしっかり洗いたかった。

 そこで作ったのがアルカリ性の石鹸だ。


「それはどうやって作ったんですか?」

「おい、それは聞かない方が――」

「では、石鹸の作り方を教えてあげよう!」


 僕は胸を張って石鹸の作り方を話すことにした。

 自由研究で自然のものだけを使って、石鹸を作ったことがあるからね。


「石鹸作りに必要なものは、基本的には油と灰だけです。苛性ソーダを使えば手間は省けますが、草木を燃やして残った灰にはアルカリ性が含まれているのでそれを利用しています」

「アルカリ性……?」


 青翼騎士団で貴族のキッシュさんでもわからないようだ。

 そもそもゲームの世界なのに、シャンプーやリンス、石鹸がないのも驚いた。

 それぐらい作っておかないと、好きなキャラたちがお風呂に入っていないことになるからね。


「灰を水に入れてかき混ぜ、しばらくそのままにしておくと灰は底に沈み、上澄みだけが残ります。それを別の器へ移し替えて、同じ作業を何度も繰り返して、集めた液体を火にかけて煮詰めると、指先がぬるりとするほどの強いアルカリ水になります」

「はっ……はぁ……?」

「そこへ油を加えて混ぜ、再び火にかければ次第にとろみがつくので、液体石鹸が完成します」


 次第にキッシュさんは虚ろな目をしていた。

 エリオットさんに聞かれた時も同じ表情をしていたし、エルドラン団長に限ってはほぼ聞いていなかった。

 今も騎士たちは必死に数字をかぞえているしね。

 それにしてもまだ100までかぞえられないようだ。


「あとは器に流し入れ、数日ほど置けば少し固まりますね」


 アルカリの量が少なく、固形にならないこともあるが、それも自然の材料を使う以上、仕方のないことだろう。

 液体のまま使うなら、水で薄めればいいし、髪の毛に使うシャンプーには塩とオリーブオイルのような植物油を混ぜている。

 油に多く含まれるオレイン酸が、人の皮脂にも近い成分だから、肌なじみがよく、洗い上がりもつっぱらない。

 乾燥肌の者でも、問題なく使える万能な石鹸だ。


「えーっと……とりあえずソウタ先輩がすごいことはわかりましたね」

「無駄に自由研究してないですからね」

「「「自由研究……?」」」


 キッシュさんだけではなく、騎士たち全員が首を傾げていた。

 まさか僕の話を聞いていたとは思わなかった。

 ただ、僕が急に自由研究なんて、この世界ではなさそうなことを言っても怪しいよね。


「えーっと……自由に色んなことを学んでいたんです」


 お互いに視線を合わせる騎士たち。

 これは怪しまれて――。


「ソウタは物知りだからな!」

「知らないものはないぐらい頼りになるのがソウタっす!」

「さすがソウタ先輩!」


 どうやら怪しまれてはいないようだ。

 キッシュさんもそれで納得するとは、貴族でも騎士は少し頭を使うのが苦手なのかな。


「あっ、ゼノさん! クエン酸リンスをつけないと髪の毛がきしみますよ!」


 途中で洗うのをやめたゼノさんを急いで止める。

 僕が見てないと途中でやめちゃうんだから。

 肌に良いと言ってもアルカリ性が強いから、しっかりクエン酸で中性にしないとパサパサしちゃう。

 ちなみにクエン酸はレモンに含まれているものを使っている。

 クエン酸リンスというよりはレモン水だね。


「ソウタがやって……」

「もう!」


 ゼノさんに呆れちゃうけど、結局僕がやってしまう。

 本当にお昼どきに仕事をしている姿と全く違うから同一人物なのかな?

 まるでゼノさんが二人いるみたいだ。

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