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転生先で生活能力ゼロ騎士団に保護された結果、僕がおかんになりました~元・世話焼き長男、誤解されがちな騎士団を立て直します~  作者: k-ing☆書籍発売中
第一章 黒翼騎士団のおかんになる

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39.兄ちゃん、黒翼騎士団員になる

「俺らよりも弱いくせに威勢だけはいいっすね!」

「私は貴族だし、お前らとは頭の出来が違うけどね。そんなやつにソウタを渡すわけにはいかない」


 ジンさんとゼノさんがさらに挑発すると、もう僕には止められない。

 青翼騎士団が掴みかかり、その場で殴り合いになっていた。

 持っていた剣で斬りつけるのかと思ったが、喧嘩だけならまだ良いだろう。

 よく弟も喧嘩をしていたからね。


「んー、よくこんな重いものを身につけられるね……」


 僕はそそくさと動いて、ジンさんとゼノさんの剣を回収した。


「おい、ソウタ無事だったか!」

「大丈夫ですか!?」


 エルドラン団長とエリオットさんが遅れてやってきた。

 その後ろには他の黒翼騎士団員たちがいる。


「あっ、エルドラン団長ー! この二人を止めてくださいよ」


 体が小さい僕では喧嘩を止められる気もしないので、黒翼騎士団たちに手を振ると、すぐに駆け寄ってきた。


「ああ、騎士たちの殴り合いなんて死ななければ大丈夫だ」


 死ななければ喧嘩をしても良いってさすがにやりすぎな気がする。

 すでに青翼騎士団の部下二人の顔には痣がいくつもできていた。


「それよりもこの料理はなんだ!」


 エルドラン団長は近くに置いてあるじゃがいも料理が気になったのだろう。

 残ったポテトチップスを口に入れていた。


「あっ、団長せこいです!」

「俺も食べたいですよ!」


 他の団員もエルドラン団長に続くように、残ったじゃがいも料理を食べ始めた。

 呆れた僕は窓から外を見たら、日が沈んできていた。

 働いてお腹が空いて我慢できなかったのだろう。


「バリー兄さん、ソウタを勝手に連れて行かないでください」

「なんだ……使えない弟か」


 華美な服を着ていた青翼騎士団の上司、バリーさんは鼻で笑う。

 顔が似ていると思っていたが、どうやら本当にエリオットさんとは兄弟のようだ。

 ただ、兄弟にしては仲が悪いのだろう。

 二人して僕の手を引っ張り出した。


「また俺のために働いてくれたんだろ? こんなに料理ができるシェフを――」

「違う! あれは私が未熟だったからだ……。それに罪を擦りつけたのはバリー兄さんではないか!」


 なぜみんなは僕を間に挟むのだろうか。

 兄弟喧嘩をするなら他所でやってほしいし、内容が重たすぎる気がした。

 それにエリオットさんに罪を擦りつけたってどういうことだろう。

 さっきも「翼が折れた騎士団」や「自称騎士団」と言われていたし……。

 ひょっとしたら、すでに悪役としての道を歩んでいるのだろうか。


「爵位の発展のためには、弟の手柄は兄のものだ。そんなもの当たり前――」

「ん? 今なんて言った?」


 僕の言葉にバリーさんは鼻で笑った。


「弟の功績は兄のもの。そんなもの貴族では当たり――」

「当たり前じゃない!」


 僕はバリーさんを睨みつける。

 同じ兄なのにここまで自分のことしか考えない馬鹿な兄がいるとは思いもしなかった。


「お兄ちゃんは弟や妹に優しくするのが当たり前だ!」


 僕だってまだ子どもだけど、そんなことくらいはわかる。

 自分が欲しくても弟妹が欲しがれば分け与えた。

 それは弟妹たちも同じだ。

 そうやって僕たちはお互いに支え合ってきた。


「それを弟の手柄を奪ったって……僕の弟をいじめるんじゃない!」


 僕はバリーさんの手を振り払って、エリオットさんの前に立ちふさがる。

 でも……エリオットさんの方が大きいから、全然隠れてないよね?


「はぁん? 出来損ないが――」

「出来損ないなのはあなただ! エリオットさんはいつもムスッとしているけど、野菜好きで誰よりも人のことを考えて……優しい人で……」

「ソウタ……」


 気づけば普段胸の奥にしまっていたエリオットさんへの思いが、次々と口から溢れた。

 こうなったら、もう止められない。


「それに笑った顔は子どもみたいだし、モシャモシャとご飯を食べる姿は……」

「んっ? ソウタそれは……?」

「小動物みたいに可愛いんだぞ!」


 僕はエリオットさんをギュッと抱きしめる。

 いつもツンケンした顔をしているから気づかないと思うけど、エリオットさんは可愛げがあるんだからね。

 

「それに誰よりもみんなのことを一番思っている温かい人なんだ!」


 口数は少ないけど、みんなを見ている時のエリオットさんは優しい顔をしている。

 いつも仲間を大事にしているのが、表情から伝わってきていた。

 僕のことも毎日心配して声をかけてくれる。

 彼は優しさに溢れたいい人だ。


「だから、功績を奪ったバリーさんのことだって、自分の未熟さのせいにしているじゃないか!」


 エリオットさんの瞳が少しだけ揺れていた。

 まるで今になって何かに気づいたようだ。

 きっと優しいエリオットさんは、バリーさんに功績を奪われたことは何も思っていないのだろう。

 それよりも信じていた兄から裏切られたことに対して悲しんでいる気がした。


「弟のことを考えないと兄は兄じゃない! エリオットさんはもう僕の弟だ!」


 こんなバカな兄を持ったエリオットさんが可哀想だ。

 それなら僕がエリオットさんの兄になる。


「もう帰るよ!」


 僕はそのままエリオットさんの手を掴んで、玄関の方に向かっていく。


「ほら、みんなも人の家に勝手に上がり込んでご飯を食べないの! 僕はそんな風に教えたつもりはありません!」

「えっ……ソウタ……まさか……」


 僕の言葉にポテトチップスを食べていたエルドラン団長は手を止める。

 他の騎士たちもどこかあたふたとしていた。


「今日の夕ご飯は抜きです!」


 その言葉に黒翼騎士団員は固まった。

 今まで言葉にするだけで、夕ご飯を抜きにしたことはなかった。

 だが、さすがに今回はやりすぎだ。

 部屋はぐちゃぐちゃだし、青翼騎士団の部下は顔や体が痣だらけだ。

 それに勝手に家に上がり込んで、ご飯を食べるなんて……。

 警察に通報されたら、すぐに逮捕されちゃう。

 まだ通報されないだけマシだと思っ……いや、騎士がこの世界の警察みたいな存在か!

 僕は向きを変えて、すぐに頭を下げる。


「うちのバカな弟たちがご迷惑をおかけして申し訳ありません。今後はこのようなことがないように気をつけます」


 ちゃんと兄として謝らないといけないからね。


「おい、ソウタ待ってくれよ! 夕飯を楽しみに帰ってきたんだぞ!」

「俺もやりすぎたっす! だから、ご飯なしだけは勘弁してくれ!」

「ソウタの弟……最悪それでいいか」


 僕たちを追いかけるようにエルドラン団長、ジンさん、ゼノさんが慌てて駆け寄ってきた。


「それならちゃんと反省してくださいね! おじゃましました!」


 僕は弟みたいな黒翼騎士団員を引き連れて、すぐに青翼騎士団の庁舎を後にした。



「ソウタ、頼む!」

「これからは毎日掃除をするっす!」

「はぁー、もうわかりましたよ……」


 僕の言葉に団員の表情は明るくなった。


「お前ら今日もソウタの飯にありつけるぞ!」

「「「うおおおおおお!」」」


 黒翼騎士団の庁舎に帰るまで大変だった。

 団員は泣きすがるように謝ってくるし、街の人からは怪我をしていないか心配されるし、レオは泣いて抱きついてくるし……でも、エリオットさんだけはどこか嬉しそうな顔をしていた。

 時間がない中、僕は手抜きご飯として親子丼をすぐに準備した。

 ちゃんとご飯が出てきた時の団員の驚いた顔は見ものだった。

 エルドラン団長なんて、泣き叫ぶぐらいだったからね。


「なぁ、これ美味いぞ!」

「簡単でこんなに美味いとは……さすがソウタっす!」


 初めて出した親子丼だが、思ったよりも美味しかったのか食いつきが良かった。

 それにエリオットさんが他の団員のようにガツガツとかき込んで食べていたのが印象的だ。


「そうだ! ソウタに渡すものがあったんだ!」


 ご飯を食べ終わると、すぐにエルドラン団長は部屋から何かを持ってきた。

 手渡されたのは小さな真っ黒な制服だ。


「黒翼騎士団の制服ですか?」


 大きさも僕のサイズに合わせているのか、みんなよりかなり小さい。


「ソウタは俺たち黒翼騎士団の仲間……いや、家族だからな!」


 エルドラン団長の言葉に、何か胸の奥で引っかかっていたものが取れた気がした。

 この世界には誰一人家族がおらず、僕はひとりぼっちだった。

 大好きな両親や弟妹にもう会えないと思うと涙が止まらなかった。

 だけど、そんな日常も少しずつ変わり、僕にも大事なものができていた。

 それは黒翼騎士団という名の僕よりも大きな体をした手のかかる可愛い弟たちだ。

 いつしか寂しいという気持ちも減り、楽しい毎日を過ごせていた。

 それも全てここにいる黒翼騎士団……いや、家族のおかげだろう。


「いつも美味しいご飯をありがとうっす!」

「あっ、ちなみにソウタの服のサイズは夜な夜な私が測りました」

「まったく……ゼノさんは毎日懲りないですね」


 相変わらずゼノさんは不思議な人だ。

 きっとベッドの中に忍び込んだ時にでも測っていたんだろうね。

 僕が起きたら抱き枕になっていたこともよくあった。


「今日は本当にすみ――」

「エリオットさん、謝らないでください!」


 僕は胸を大きく張って、コツンと軽く叩く。


「僕はみんなの兄なんですからね」


 ニコリと微笑むと、家族のみんなは嬉しそうに笑っていた。


「がははは、俺はソウタがいないとやっていけないからな!」

「俺も!」

「やっぱり弟より嫁になりませんか? 嫌なら婿でもいいですよ?」


 本当に我が家の弟……いや、騎士は手がかかる人たちばかりだ。


 前世の両親は元気にやっているだろうか。


 ……ありがとう。僕を大事にしてくれて。


 弟たちは兄弟喧嘩をしていないだろうか。

 妹たちはちゃんと弟の言うことを聞いているだろうか。


 ……ありがとう。こんな頼りない兄を頼ってくれて。


 過去のことを思い出して、心配する毎日はもうやめよう。

 だって、いつまでもくよくよしていられない。


 ずっと大好きだった(・・・)よ!

 今でも、これからも……。


 僕にもこの世界で大事な家族ができたんだからね!

 だから、もう一人じゃない。

 今日も、そしてこれからも、僕はこの家族と共に生きていく。


「僕はみんな兄だからね!」


 大きな弟たちの兄として……、今日も胸を張って生きていこう。

 これからもずっとみんなが元気に楽しく、賑やかな日々が続いていきますように。

 僕は心の底からみんなの平穏を祈った。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

ここで第一章完結です。

続きはストックが出来次第再開する予定です。


最後にブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。

よろしくお願いします(*´꒳`*)

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