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転生先で生活能力ゼロ騎士団に保護された結果、僕がおかんになりました~元・世話焼き長男、誤解されがちな騎士団を立て直します~  作者: k-ing☆書籍発売中
第一章 黒翼騎士団のおかんになる

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31.兄ちゃん、この世界の闇を覗く

 朝から大変だ……。

 まさかお弁当に使おうと残していたパンと煮込みハンバーグが、食べられているとは思わなかった。

 昨日エルドラン団長の部屋から持ち出したワインが隣に置いてあったから、犯人がすぐにわかってよかった。

 これで泥棒が庁舎に入ってきていたら大変だったからね。


「三人とも反省しましたか?」

「「「はい……」」」


 久しぶりにこんなに怒ったけど、普段から怒り慣れてないから、反省してくれたのならよかった。

 やっぱりあれだけだと食べるものが足りなかったのだろう。

 もう少しボリュームがあるもので、夜食も準備しないといけないね。


「さぁ、ご飯食べますよ」

「「「えっ……」」」


 三人とも驚いた顔をしていた。

 ご飯はなしと言ったが、さすがにお世話になっている僕にその権限はないからね。


「「「ソウター!」」」


 嬉しそうに立ち上がって僕に抱きつこうとしたが、三人とも忘れているのかな?


「「「うぎゃああああああ!」」」


 長時間の正座って足が痺れてなかなか動けないからね。


「アルノーさん、助かりました」

「……よかった」

「んっ?」

「いや、ソウタの助けになったならよかった……」


 一瞬、アルノーさんも関わっているのかと思ったけど、さすがにそれはないよね。

 アルノーさんにパンの作り方を教えながら、急いでパンを焼いたが楽しそうに作っていた。

 これで彼は立派なパン係だ。


「三人とも早く食べてくださいね」

「うっ……やっぱりソウタのご飯は体に染みる……」

「もう俺にはソウタのご飯がないと生きていけないっす! 今回は全てエルドラン団長が悪い」

「なんだと!?」


 エルドラン団長とジンさんは立ち上がると、お互いに掴み合おうとしていた。

 相変わらず朝から元気だね。


「喧嘩するなら夕飯は抜きですよ?」

「「はい……」」


 注意すると二人は静かに座る。

 再び食べ始めると勢いよく詰め込むようにパンを食べていた。

 二人とも犬みたいなのに、食べている時は頬袋に詰め込むハムスターみたいだ。


「あっ、できたら今日はエリオットさんとゼノさんを借りてもいいですか?」

「別に構わないが――」

「はぁ! やっぱりソウタには私が必要なんですね!」


 ゼノさんは食べる手を止めて、僕の手を握っていた。

 キラキラした瞳で見つめられるが、単にゼノさんはあることに必要なだけだ。


「昨日の服を洗濯するためですよ?」

「へへへ、私はそれでも嬉しいです!」


 自分が乾燥機として扱われることが気にならないのだろうか。

 エリオットさんの水魔法で洗って、ゼノさんの風魔法で乾かせば、たくさんある団服や下着類はすぐに乾くはず。


「いつ頃洗濯しますか?」

「レオの家から木炭と灰をもらってくるからお昼前かな?」

「じゃあ、先に街の見回りをすれば問題ないか」


 エリオットさんは今日の予定を立てていた。

 みんなが食べ終わると、すぐにお皿を片付けて各々仕事に行く準備を始める。

 昨日はゼノさんがなかなか起きなくて大変だったが、今日はすでに目を覚ましているからさほど時間もかからない。


「あっ、エルドラン団長、ジンさん! お弁当忘れてます!」

「なっ……俺のお弁当まで……」

「ソウタアアアアア!」


 庁舎を出ようとした二人を止める。

 お弁当を用意してもらえるとは思ってもなかったエルドラン団長はその場で泣き崩れ、ジンさんは僕に抱きついてきた。


「ジンは邪魔だ!」

「なんだ! 俺だってソウタを抱きしめても良いだろ!」


 そんなジンさんをゼノさんが引き剥がしていた。

 今から仕事にいくのに本当に元気な人たちだ。

 僕は騎士たちを見送ってから、返す予定のバスケットにパンを詰めていく。


「そんなにパンを持って何かあるんですか?」

「いや……あっ! ついでに宣伝しようと思いまして!」

「レオたちが作ったパンじゃなくて大丈夫ですか?」


 エリオットさんはどこか僕の行動を怪しんでいた。

 きっと騎士団費を管理しているから気になっているのだろう。


「材料は同じなので大丈夫だと思いますよ」


 僕は何事もなかったのように笑ってごまかすことにした。

 ここで止められたらあの子たちが餓死してしまうかもしれない。

 まぁ、ほとんどが僕のおっせかいなんだけどね。


「じゃあ、町の中を回りながら行ってきますね」

「あぁ、気をつけて」

「ソウタアアアアアアア!」


 エリオットさんにゼノさんを抑えてもらい、その間に僕は庁舎を出ていく。

 このままだとずっと付いてきそうだもんね。

 ただ、今の僕にはそれがちょうどよかった。

 僕は街の中を通らず、一直線に路地裏に向かう。

 昨日と同じで相変わらずどこか薄暗くて、息が詰まりそうだ。


「あっ、昨日の子だ!」


 そんな中、小さな少年が走ってきた。

 昨日パンを渡した子のようだ。


「今日は何かもらえるかな?」

「パンでも食べる?」

「うん!」


 少年は嬉しそうにパンを受け取ると、取られないようにすぐに食べていく。

 どこか野良猫にエサをあげているような気分がした。


「またお前か……」

「ははは……食べる?」

「ああ」


 遅れて兄もやってきた。

 バスケットを渡すと、急いでパンを口の中に詰めるように入れていく。


「ふふふ、ハムスターみたいだね」

「e%・b?」

「あぁ、気にしなくていいよ!」


 どことなくエルドラン団長やジンさんと似たような食べ方をするが、食いしん坊だとゆっくり食べられないのかな?

 すぐにバスケットの中は空になり、パンはなくなってしまった。


「また持ってくるね」

「うん!」


 小さな少年は嬉しそうに微笑んでいた。

 やっぱり小さな子は笑顔が一番似合うね。

 って言っても小さな僕が朝から一番怒ってたよね……。


「おい、俺たちに何かさせるつもりじゃないのか?」

「何か……?」

「そうじゃないと食べ物なんて持ってこないだろ!」


 少しは仲良くなった気がしたけど、相変わらず兄の方は警戒心が強いようだ。

 そりゃー、一方的に恵まれていたら仕方ないよね。


「じゃあ、僕にわからないことを教えてくれてもいいかな?」

「俺は何も知らないぞ」


 彼は胸を張って堂々としていた。

 その姿につい笑ってしまう。

 きっと僕よりは彼の方がこの世界のことを知っているだろう。

 僕が知っているのは前世の知識だけだからね。


「じゃあ、養護施設……いや、孤児院って知って――」

「チッ! お前も俺たちを追ってきたのか!」


 孤児院について聞こうとしたら、さっきよりもさらに警戒心が強くなった。

 単純にこの世界の身寄りがない子どもがどうやって生きていくのか気になったのだ。


「どういうこと……?」

「こっちが聞きたい。お前は俺たちを追ってきたのか?」

「いや……そもそも孤児院があるのかどうか聞きたかっただけなんだけど……。普通はそういうところで、大きくなるまでいるんじゃないの?」


 あの反応だと養護施設のような孤児院はあるはず。

 だけど、彼の反応からしてあまり環境が良くないのだろう。


「あそこは俺たちを奴隷として売る場所だ。それに一切俺たちへの施しなんてないからな」


 その言葉を吐いた瞬間、彼の顔から感情が抜け落ちた。

 笑うでも怒るでもなく、ただ淡々と事実を告げるだけの顔。

 全てを諦めたような……まるで死んだ魚のような目をしていた。


「そうなんだね……。だからこんなところにいるのか」

「俺は誰も頼らないからな! いくぞ!」

「兄ちゃん、待って!」


 兄弟はそのまま路地裏の闇に消えるように走って行った。

 僕はこの世界の闇を少しだけ覗いたような気がした。

お読み頂き、ありがとうございます。

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