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転生先で生活能力ゼロ騎士団に保護された結果、僕がおかんになりました~元・世話焼き長男、誤解されがちな騎士団を立て直します~  作者: k-ing☆書籍発売中
第一章 黒翼騎士団のおかんになる

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25.兄ちゃん、天然酵母を作る

 早速、騎士団の庁舎に戻ってパンを作っていく。

 夕方にはみんなが帰ってくるから、発酵時間を考えるとすぐに作り始めないと時間が足りない。


「ここの調理場にはたくさんの道具があるから便利だね」


 基本的には木を使って調理をすることはなく、窯も手を触れると勝手に火がついた。

 仕組みはいまいちわからないが、真面目なエリオットさんなら知っているかもしれない。

 パンの一次発酵を待っている間に、僕は瓶に水を入れていく。

 天然酵母を作ろうと思ったが、僕はその場で手を止めた。


「この水って軟水じゃないよね……」


 水道から出てくるのは軟水寄りの中硬水。

 玄米を炊いたり、お味噌汁を作る分には慣れた日本人なら違和感を覚えるが、よほど問題はなかった。

 ただ、天然酵母に適しているのは日本の水道水やミネラルウォーターを使った軟水で作る方が良い。

 自由研究の時にそれは調べていてわかったことだからね。

 それに熱湯にしてカルキ抜きにしたからって水の硬度が変わるわけではない。

 この世界でお水が売っているところは見たこともないし、まさかこんなところで行き詰まるとは思わなかった。


「そういえば、エリオットさんの水はどんな味がするんだろう……」


 水道で洗っていた時よりもエリオットさんの手の汚れが落ちていた気がする。

 ふと、エリオットさんが出していた魔法の水が気になった。


「エリオットさ……んっ!?」

「ああ、何かあったのかい?」


 エリオットさんを呼びに行くと、そこにはゼノさんと掃除をしている姿があった。


「どうしたんですか?」

「いや……ちょっと汚いと思ったからね」


 まさか自ら掃除をするとは思いもしなかった。

 ゼノさんは無理やり付き合わされているけどね。


「ソウタを置いて行ったことを反省して掃除をしようと……」

「ゼノ、無駄口を叩く前に拭く!」

「ちょっ、汚いだろ!」


 エリオットさんはゼノさんの顔に向けて、雑巾のような布を押し当てていた。

 ゼノさんの言葉からして、きっと僕を置いていったことで、転んだことに責任を感じていそうだ。

 逆に嘘をついた僕が心苦しくなりそうだ。


「それならエリオットさんに手伝ってもらいたいことが――」

「私じゃダメなの?」

 

 僕の言葉を遮るようにゼノさんがジーッと見つめてくる。

 ゼノさんが魔法を使えるならどちらでも良いんだけど……。


「魔法で水は出せますか?」

「あっ……」

「残念だったね!」


 落ち込むゼノさんの肩をエリオットさんが叩く。

 どうやら人によって使える魔法は違うようだ。


「風魔法は必要ないかな? 私がいたらビューッと飛べるよ?」

「んー、空を飛べるのは魅力的ですが、今は必要ないですね」

「そそそ……そんなこと言わないでー!」


 ゼノさんは僕に抱きついてきた。

 顔を近づけてくるが、僕は必死に手を押し付けて抵抗する。


「ソウタ……」

「さっきまで雑巾が顔についてましたよね……?」

「くっ、エリオットのせいだぞー!」


 そう言ってゼノさんは急いで顔を洗いに行った。

 顔を洗えば僕に顔を近づけて良いと思っているのだろうか。


「あいつも騒がしくなったな……」

「前は静かだったんですか?」

「まぁ、ゼノにも色々あるからね」


 きっと女性関係なんだろうな。

 僕に対しても静かにしていてくれたらいいのに……。


「そういえば、魔法で水を出して欲しいんだっけ?」

「お願いします」


 僕は急いでコップを取りに行き、プカプカと浮かぶ水にコップを入れる。


「飲んでも大丈夫ですか?」

「大丈夫だと思うけど、飲んだことはないね……」


 あまり魔法の水を飲む概念がないらしい。

 エリオットさんも気になるのか、コップを持ってきた。

 一緒に一口飲んでみる。


「思ったよりも飲みやすい……」

「やっぱりエリオットさんって一番便利ですね」

「それは喜んでいいのか?」

「はい!」


 まさか魔法の水が軟水だとは思いもしなかった。

 日本の料理に関しては軟水の方が使いやすいし、食器洗いや洗濯に関しては軟水の方が向いている。


「エリオットさん、ここに水をたくさん入れてください!」


 僕は並べた瓶に水を入れてもらうよう頼むと、そこに果物も一緒に入れていった。

 リンゴは芯を取り除き、八等分ほどのくし切りにする。

 柑橘系は皮と白い筋を丁寧に取り除いた。

 下処理をせずにそのまま使えるのは、ベリー類くらいだ。

 最後は軽く蓋を載せて完成。


「これでその……天然酵母ってやつはできるのか?」


 興味深そうにエリオットさんは瓶を眺めていた。


「数日で発酵するので、あとは毎日一回瓶を振って完成を待つだけですね」

「ソウタは本当に物知りだね」


 エリオットさんは穴が開くかと思うほど、僕をジーッと見つめてきた。

 時折、エリオットさんは何を考えているのかわからないほど静かに僕を見ている。

 エリオットさんとゼノさんを足して割ったら、ちょうど良いぐらいだね。


「ソウタ、顔を洗って――」

「「「たっただいまー!」」」


 ゼノさんが帰ってきたと思ったら、その後ろからゾロゾロと騎士たちが帰ってきた。

 その手には大きな木を担いでいる。


「ソウタ、弁当箱に使う木筒を持ってきたぞ!」


 アルノーさんに頼んだ木筒をそのままみんなで運んできたようだ。

 見た目は竹と似ているが、もらった木筒よりは少し大きい。


「これならお弁当箱が大きくなるだろ!」


 どうやらお弁当箱が大きくなれば、たくさん入れてもらえると思ったのだろう。

 誰もそこに関しては突っ込むことはなく、エルドラン団長の言葉にうなずいていた。


「あのー、さすがに材料が増えないと中身を増やすことは無理ですよ?」

「よし、今すぐに材料を買いに行くか!」

「いやいや、もう買い物は済んでいるので……」


 僕は急いでエルドラン団長を止める。

 このままだと本当に材料を追加で買ってきそうだ。

 お金はたくさんあると言っていたが、さすがに買いすぎても困るし、そんなに多くは作れない。


「とりあえず、お風呂にはいり……」


 ご飯ができるまではお風呂に入ってもらえばいいだろう。

 弟妹たちにはよくご飯の前にお風呂に入ってもらったからね。

 騎士の庁舎にもお風呂場があるのは把握していた。

 ただ、騎士たちは揃って視線を背けた。

 それはエリオットさんも同じだ。


「まさか……みなさんお風呂嫌いですか!?」

「いや、別にそういうわけではないぞ? なぁ?」

「そうっす! それに川に入れば服も洗えて体も綺麗になるからお得――」

「今すぐお風呂に入ってきなさい!」


 僕の声は庁舎に響いた。

 まさかちゃんとしたお風呂場があるのに、入ったことがないのだろうか。


「ソウタもいくよ!」

「えっ……、僕もですか!?」


 ゼノさんは嬉しそうに僕をお風呂場まで連れていく。

 いや、僕はパンを作らないといけないからね?

お読み頂き、ありがとうございます。

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