14.兄ちゃん、飲食店に行く
「はぁー、やっと着いたな」
「買いすぎですよ!」
異国のお店でたくさん買い物をしたため、あまりの荷物に一度庁舎に帰ってきた。
途中でご飯を食べる予定でいたのに、全部持ったまま移動するのは大変だからね。
「エリオットさん、体調悪いですか?」
「いや、問題ない」
街の中を歩いていると、謝った街の人たちに声をかけられることが何度かあった。
その度にエリオットさんの口数は少しずつ減っていった。
何かを考えているのか、常にムスッとした顔をしている。
エルドラン団長からは、機嫌が悪いわけではないから心配しなくても良いと言われたがやっぱり気になってしまう。
「お腹が減ってるのかな?」
「ソウタ、今からご飯を作るのか?」
僕の言葉を聞いていたエルドラン団長は、嬉しそうに聞いてきた。
「せっかくだから、お米でも炊きましょうか」
もう食べられないと思ったが、まさかお米が存在しているとは思いもしなかった。
二人が店内の商品を買い占めようとしたおかげで、ツボから米を見つけた時はその場で二人を撫でて褒めたぐらいだ。
きっとエリオットさんもお米を食べたら、元気になるだろう。
「あの変わった形のやつだよな?」
「玄米ですけど、しっかり浸水すれば美味しく炊けますよ」
精米をしたいが方法を知らないため、玄米として食べることになる。
ただ、買ったばかりの土鍋を使う機会ができてよかった。
「本当に美味しいのか?」
「たぶん……?」
日本の米は美味しいが、他の国はわからない。
味の期待はできなくても、米があるってことが日本人の僕にとっては少し安心できる材料だ。
食生活まで変わっていたら、一人になった僕は全てを失った気になっていただろう。
「ソウタ?」
少しボーッとしていたら、エルドラン団長が心配そうに僕の顔をみていた。
「よし、やっぱり外でご飯を食べよう! ソウタのご飯がどれだけ美味しいか知ってもらわないといけないからな」
玄米の浸水にはかなり時間がかかる。
それなら予定通り外食する方が良さそうだ。
「じゃあ、浸水だけしておきますね」
僕は買ったばかりの米をすぐに洗い、土鍋に入れて浸水させる準備をした。
騎士たちの分まで炊くつもりだから、用意する量もかなりのものだ。
「よし、これで帰ってきた時には炊けるね」
帰ってきたら炊けるように、コンロの上に土鍋を置いた後、僕たちは昼食を食べるために再び街へと向かうことにした。
「おい小僧! 今度はどこに行くんだ?」
「ご飯を食べに行ってきます!」
「そうか! 気をつけて行くんだぞ!」
「ありがとうございます!」
街の中を歩いていると、声をかけられる。
見た目がイカついエルドラン団長も、声をかけられるとオドオドしており、街の人もそれを見て面白がっている。
「ご飯はどこで食べるんですか?」
「あー、俺たちは行くところが決まっているんだ」
「そうなんですね」
街の中を歩いていると、屋台のようなところもあるが、ちゃんと店舗を構えた飲食店も見かける。
それでも黒翼騎士団は基本的に同じ店に行くことが多いようだ。
街の人たちに嫌われていたことが原因なのかもしれない。
僕はエルドラン団長の後を追いかけていくと、目の前には今にも潰れそうな家があった。
「ここは……?」
「宿屋です。今はここで食べるようにしています」
エリオットさんは少し困ったような顔をしていた。
中に入ると外観もそうだが、店内も手が行き届いていないように感じた。
「いらっしゃい……あっ、団長!」
中から少年が出てきた。
その後ろには小さな女の子と男の子が隠れている。
僕がニコリと笑うと、すぐに隠れてしまった。
あれ……今笑ったはずなのに、僕もエルドラン団長のように顔が怖くなったのか?
「また逃げられたか……」
どうやら今のは僕ではなく、エルドラン団長から逃げたようだ。
それに少年もエルドラン団長と目が合うと、視線を逸らして静かになる。
ここでも見た目が怖くて勘違いされているのだろう。
ただ、街の人よりも友好的な気がする。
「今日は何を食べますか?」
「あー、今日もオススメを頼むよ」
「わかった!」
僕たちは案内されるがまま、店の中に入って行く。
どこか静かな店内だと思っていたが、店の中には誰もいなかった。
「お客さんいないですね」
「ああ、ここはあの子たちだけで働いているからな……」
宿屋の中が汚いのもすぐに納得がいった。
エルドラン団長の話では、彼らの母親が病気で倒れており、生活をするためにもお金が必要らしい。
お金を施すのではなく、ちゃんと仕事の報酬としてお金を渡す。
いつもは子どもぽく見えていたエルドラン団長が大人のような感じがした。
いや、大人なのは当たり前か。
「今日のオススメはパンと野菜サラダとスープです」
目の前に置かれたのは、食材があまり入っていない質素……シンプルなものだった。
「「いただきます!」」
特に文句も言わずに、騎士の二人は食べていく。
それにしても、〝いただきます〟って自然に言っていることに僕はびっくりした。
僕はパンを一口千切って口に入れる。
「んー、ボソボソだね」
正直な感想としては美味しくはないが、食べられないほどではないって感じだ。
水分が抜けて古くなったパンに近い。
サラダは何もかけておらず、スープも何となく塩味がする程度。
「これでもここはまだマシほうだぞ?」
「ソウタの料理が別格なんですよ」
二人の言葉に僕は驚いた。
まさかこれがこの国の一般的な料理だとは思いもしなかった。
騎士たちが僕の料理を取り合う理由がわかった気がする。
「もう少しどうにかできそうですね。パンは食べやすいから、牛乳と卵があれば――」
エルドラン団長の目が輝いたかと思うと、椅子を引く音もそこそこに、立ち上がって勢いよく扉を開けた。
「今すぐ買ってくる!」
「へっ!?」
エルドラン団長はそのまま弾かれたように店を飛び出していった。
作るとも行っていないのに、体が先に動いたのだろう。
だが、僕の言葉に対して良く思わない人もいる。
「おい、お前! この宿屋の飯に文句をつけるとはどういうことだ!」
小さな僕に言われて、さすがに納得がいかないのだろう。
「はぁー」
面倒ごとに巻き込まれそうな雰囲気に、ついつい僕はため息をついてしまう。
「お前、俺に文句があるのか!」
喧嘩腰なのも納得いかないが、お店ならちゃんとした接客をしないといけない。
「エリオットさん、何も口出ししないでくださいね」
「なんだ、喧嘩する気か!」
少年は手に力を入れて構えた。
僕は喧嘩する気なんて全くない。
むしろ今の僕では負けてしまうだろう。
それでも一人で弟妹の面倒を見ながら、お店を頑張っている彼が前世の僕とどこか被っているように見えていた。
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