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転生先で生活能力ゼロ騎士団に保護された結果、僕がおかんになりました~元・世話焼き長男、誤解されがちな騎士団を立て直します~  作者: k-ing☆書籍発売中
第一章 黒翼騎士団のおかんになる

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10.兄ちゃん、お弁当を作る

「もう、また汚して……掃除くらい自分でやんなよ! いつまで僕が片づけると思ってんの!」


 僕は文句を言いながらも掃除を始める。

 お弁当を作るために早く起きたのに、朝から掃除することになるとは思いもしなかった。


「くっ……頭が割れそうだ」

「誰だよ。あんな強い酒を混ぜたのは……」


 他の騎士たちも手伝ってはくれるが、お酒を飲みすぎて二日酔いのようだ。


「ソウタは早起きだ……ね……」

「ゼノさんは、いい加減起きてください!」


 ゼノさんは朝が弱いのか、昨日の姿とは反対にぼーっとしている。

 今も隙があれば僕を抱き枕のようにして、寝ようとしているところを抜け出す。


「エルドラン団長、あとは頼みましたよ!」


 ある程度綺麗に片付いたら、残りの掃除をエルドラン団長に任せることにした。


「おっ……おう……」


 朝食を抜きにするって言ったのがよかったのか、エルドラン団長の聞き入れが良くなった。


「とりあえず、具沢山スープを作っておくか」


 二日酔いの朝食には温かいスープが胃を休めるためにはちょうど良い。

 よくお父さんが接待の飲み会で、ベロベロになった時はお味噌汁を作ってあげていた。

 不揃いに伸びた髭で、よく顔をスリスリされて痛かったな……。


「くよくよしてられないね」


 僕は調理場に行って、野菜の皮を剥いていく。

 昨日煮物にも使った鶏の骨で出汁をとった鶏がらスープを残していたため、そこに水を足す。


「じゃがいも、にんじん、玉ねぎを大きめの一口サイズにすればボリューム満点だけど、野菜ばかりでも大丈夫かな?」


 あまり野菜が好きではない人が多いけど、ボリュームはあった方が良いだろう。

 お昼まではお腹を保つようにしないといけないからね。


「んー、鍋が重い……」


 いつものように大きめな鍋に具材を入れてしまったため、コンロに持ち上げられない。


「ソウタ、終わったぞ!」

「あっ、エルドラン団長! これをコンロに置いてください!」


 掃除が終わったと、わざわざエルドラン団長は言いにきたようだ。

 困っている僕を見て、エルドラン団長はヒョイっと鍋を持ち上げた。

 やはり騎士をまとめる騎士団長なだけあって、力も強い。

 自分の体が小さくなったことに、まだまだ慣れそうにないな……。


「こんなに朝飯を食べるのか?」


 スープ以外に使う野菜を見て、エルドラン団長は不思議そうな顔をしていた。


「いえ、昼食の準備もしていました」

「へっ? そんなに食べるのか?」

「ん? みなさん食べないんですか?」


 僕とエルドラン団長はお互いに首を傾げながらジーッと見つめる。

 朝食、昼食、夕食の三食は必ず食べるのは当たり前だよね?

 お父さんなんて、仕事が遅くなる時はお弁当を二つ持たせていたけど……。


「俺たちは基本夜しか食べないからな。朝飯も珍しいけど、ソウタの昼に食べるのも大歓迎だ」


 エルドラン団長の話では、朝食は基本なしで、町の外に行くときは何時に帰ってくるかわからないため、パンや干し肉を持っていくらしい。


「それだけで足ります?」

「いやー、あまり美味くないから、腹に入ればなんでもいい」


 まさかそんな考えでご飯を食べている人がいるとは思わなかった。

 ご飯は一日の中で楽しみと言っても過言じゃないからね。

 僕の料理をおいしいと言っていたが、この世界のご飯はまずいのだろうか。


「エルドラン団長は今日お仕事ですか?」

「いや、今日はエリオットと街の見回りにいく予定だぞ」


 どうやら街の中の見回り警備をするらしい。

 それなら――。


「一緒に街の中を見て回ってもいいですか?」

「あー、本当に行くのか?」


 なぜかエルドラン団長は急に視線を外した。

 その姿がどこか隠し事をしているように見えた。

 弟もよく嘘をついている時は、視線を外していたからね。


「材料も追加で欲しいものもありますし」

「俺が買ってくるぞ?」


 頑なに僕を街に連れて行きたくないのだろうか。

 何を言っても言い訳されてしまう。


「夕食がなしになってもいいですか?」

「くっ……仕方ないな……」


 夕食を人質にして、一緒に街に行くことになった。

 朝食は野菜を火にかけておけばいいが、問題はお弁当だ。

 この世界にはお弁当箱がなければ、持ち運びも大変だろう。

 外で食べることを考えると、手で簡単に食べられるものにした方が良い。


「んー、パンが硬いからサンドイッチはできないし……トルティーヤにしてみようか」


 作り方は小麦を水に溶かして生地を作って、油を入れて焼くだけだ。

 味付けした肉と野菜を間に入れれば、誰でも簡単に作れる。

 それにお弁当箱のようなものはないから、布に包んで渡すことができるからね。


「なぁ、それは俺たちの分もあるのか?」

「お弁当ですか?」

「おう!」


 詰め寄ってくるエルドラン団長の顔が怖い。

 だが、僕は首を横に振る。


「なっ……ぬああああああ!」


 突然、大きな声をあげたエルドラン団長は、その場から走って立ち去った。

 途中チラチラと僕の方を見ていたけど、エルドラン団長も食べたかったのかな?

 でも、一応お弁当として作るつもりだったんだけど……。


「はぁー、多めに作っておくか」


 エルドラン団長が少しだけ可哀想に思えた僕は、全員分のトルティーヤを作ることにした。

 もうお弁当というよりは、朝食の一品だよね。

お読み頂き、ありがとうございます。

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