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23 戦乙女、居場所を得る


 セドリックのラボ。


「このヴァレリア式兵装は、こちらで保管します」

「……はい」


 いつも通り、セドリックは淡々と魔導兵装を片付けている。

 決闘の余韻など、どこ吹く風である。

 その姿をヴァレリアはただ、立ち尽くして見つめていた。


「あの……セドリック様」


「はい」


 ゆっくりとセドリックが振り返る。

 艶のある黒髪。端正な顔立ち。

 柔らかい、翡翠の瞳。


 いつも、ヴァレリアをそっと見守る、その優しい姿。


 ヴァレリアの胸がキュッと締め付けられる。


「明日から、またわたくしは見習い部屋に戻ります」


「……そうですか」


「その……お伝えしたいことが……」


「“お慕いしています”は聞きました」


「違いますわ! いや、違わないけど、今お伝えしたいことは違います……」

 

 ヴァレリアの視線が下がる。


「その……わがままを申しますが、国外移住の件はお断りしていただけませんか」


 セドリックの瞳が僅かに見開かれる。


「……ご存知でしたか」


「……わたくしは、セドリック様のおそばにいたいのです」


 セドリックは額を押さえ、情けなく笑った。


「……その件はもう断りましたよ」


「え、でも……。書簡が……」


「その代わり、国を超えて共同研究をすることになりました」


 ヴァレリアは顔を上げた。


「では……」


 彼はヴァレリアに歩み寄ると、その手を取り、穏やかに笑んだ。

 柔らかくて、優しくて、ヴァレリアが好きでたまらないその微笑み。


「僕は――貴女の隣にずっと居座るつもりです」


 ヴァレリアの顔が一瞬で真っ赤に染まる。


「と……尊すぎま――」


 セドリックはヴァレリアの口を片手でそっと塞いだ。


 そして、

 ――彼女の額に短くキスを落とす。

 

「僕だって、貴女のそばにいたい」


 柔らかい、包みこむような声。

 ヴァレリアの瞳が潤む。

 彼女の指先が震えた。


「……愛してるって言ってくださいませんか」


「うっ……」


「……セドリック様」


 セドリックは小さく息を吐くと、ヴァレリアの額に自分の額をそっと当てた。


「……大切に思っています」


「ちょっと言葉が違いましてよ」

「……リア」

 

 ヴァレリアが腕を伸ばしてセドリックに抱きつこうとしたが、彼はスッと身を翻して逃げた。


「え!」


「今の僕にはこれが限界です。

 さ、仕事に戻りますよ、リア」


「えぇ~……」


 ヴァレリアの腕が宙を彷徨うが、そっと手を下ろした。

 椅子に座ってしまったセドリックを見つめる。

 

「セドリック様、お慕いしていますわ」

「……はい」


 向こうを向く彼の耳が赤い。

 ヴァレリアは穏やかに笑った。


 ――わたくしのセドリック様は、今日も最高に尊いですわ!!



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