22 戦乙女、愛を勝ち取る
「勝者――ヴァレリア・ハルトマン!」
ガレス・ハルトマンの宣言が訓練場に響き渡った。
ヴァレリアはその場で上半身の魔導兵装を外し、風を受けて金の髪が舞う。
誰かが小さくつぶやいた。
「……“戦乙女”」
その言葉が火種となり、次の瞬間には歓声が爆発した。
ヴァレリアはアレクのもとへ歩み寄り、剣を下げて右手を差し出す。
二人は固く握手を交わした。
軽やかな風が砂の匂いを運び、熱気をさらっていく。
---
ヴァレリアは兵装を脱ぎ、整然と地面に並べた。
そして観客席を見渡し、深く息を吸う。
「勝利宣言をさせていただきますわ!」
訓練場が静まり返る。
アレクは横で静かに腕を組み、微笑みを浮かべた。
「わたくしが欲しいのは、ただ一つ。――セドリック・ヴァーミリオン、その人だけですわ!」
どよめきが広がる。
ヴァレリアの背後で魔導兵装を淡々と片づけていたセドリックも、驚いて顔を上げる。
「どなたですの? 彼がわたくしに相応しくないなどと言い出したのは」
ヴァレリアの声はよく通る。
「ご存知でして? この魔導兵装はわたくしにしか使えません。
けれど、セドリック様の開発した魔導兵装は、使う者の資質にとらわれず、誰の命も守ることができるのです。
“死を運ぶ男? 冗談ではありませんわ。
彼の兵装こそが――この国の未来を守るものです!」
彼女は振り返り、セドリックをまっすぐに指差した。
「セドリック・ヴァーミリオンは悪魔なんかではありません!
彼は……この国の守護天使ですわ!」
場内が息を呑む。
セドリックが肩を震わせ、ふっと吹き出した。
「……ふふ。“守護天使”とはまた大層な」
「どうして貴方はそう、自己評価が低いのです!」
「貴女の僕への評価が高すぎるんですよ」
淡々と手を動かしながら言うセドリックに、ヴァレリアは足を踏み鳴らした。
日頃の凛とした“戦乙女”とは異なる姿に、観覧席は相変わらず凍りついている。
だが、アレクが前に出て、空気を和らげた。
彼は一歩踏み出し、セドリックに手を差し出す。
「守護天使殿」
セドリックはぎょっとして立ち上がる。
「素晴らしい魔導兵装でした。俺も着てみたい」
セドリックはアレクの手を取る。
「まだ量産は難しそうですが」
「楽しみにしています」
「ありがとうございます。
――あの、なぜ貴方とヴァレリア嬢が闘うことになったのか、僕は把握していないのですが……」
「……俺もよくわかりません」
「……え?」
アレクが白い歯を見せる。
笑いが観覧席から波のように広がった。
ヴァレリアは満足気にそれを見回していた。




