表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/23

20 戦乙女、愛を賭して立つ


 空は高く晴れ渡り、風は穏やか。

 まさに“決闘日和”の朝だった。


 訓練場には王国騎士団の旗がはためき、観覧席にはざわめく人々。

 陽光が剣の刃のように差し込み、砂地を金色に照らしている。


 美貌の騎士――アレク・フォン・リーベルは、すでに場内に立っていた。

 きっちりと全身鎧を身に着けている。

 相手が女性であっても、魔導兵装を纏っているなら油断はできない。

 金の髪が風に揺れ、同僚の声援に白い歯を見せて応じるその姿は、まさに“麗しの騎士”と呼ぶにふさわしかった。



---


 控室では、ヴァレリアがセドリックの手を借り、静かに魔導兵装を身に纏っていた。


「セドリック様」

「はい」

「お慕いしています」

「……」


 ――今朝だけで、これが五度目。

 セドリックは何も言わず、苦く笑うだけだった。


 装着を終えると、セドリックは最終確認を済ませ、ヴァレリアの正面に立つ。


「リア、気をつけて行ってきてください」

「見ていてください。一番近くで」

「整備士として、一番近くにいます」

「そういう意味ではありませんわ」

「……ふふ」


 セドリックが笑うと、睨もうと思っていたヴァレリアも思わず口元を緩めてしまう。


 そして、ヴァレリアは立ち上がり、セドリックを従えて場内へ向かった。



---


 魔導兵装を纏ったヴァレリアが姿を現した瞬間、訓練場全体がどよめきに包まれた。


 本来の魔導兵装は全身を覆う。

 だが、彼女が纏っているのは、通常のメタルプレートを少し大きくした程度。

 それはずっとしなやかで、魔導合金が美しく陽を弾いていた。


 アレクは目を細め、静かにそれを見つめた。


 ヴァレリアは堂々とアレクの前に立つ。


「予告通り、魔導兵装で参りましたわ」


「美しい兵装です」


 アレクは大きく頷いてみせる。


「セドリック様のデザインですもの。

 美しいに決まっていますわ」


 アレクは一瞬黙り、やがて口角を上げて笑った。


「こちらも予告通り、俺も手加減はしません」


 ヴァレリアが拳を突き出す。

 アレクも笑い、拳を合わせた。

 ――コツン、と軽い音。


 互いに不敵に笑みを交わし、それぞれの位置に戻る。


 彼女の背後に控えていたセドリックは、小さく目を伏せた。


---


 ハルトマン家当主――ガレス・ハルトマンが二人の間に立つ。

 場内の空気を一瞬にして掌握し、朗々と声を響かせた。


「えー、それでは、これより決闘を始める!

 ……ヴァレリア、何を賭けて闘うのだったかな?」

「愛ですわ!」

「そうか! よろしい!

 これより、“愛をかけた決闘”を執り行う!

 ――大怪我しない程度に頑張りたまえ!」


 観客席が爆笑と歓声に包まれた。


 ヴァレリアとアレクの視線が、まっすぐに交わる。


「――構え!」


 砂を踏む音。

 青空の下、風が止まる。


 一瞬の沈黙。


「――始め!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ