惨敗からの混乱
それはどうにもならないぐらいに完敗の試合だった。
13対0、サッカーの点差としては異常な数字だ。
後半も残り5分
チームの士気も下がりまくり、全員がバテバテだ。
それでも一矢報いようとボールを奪いに行く。
激しい接触。
相手選手の肘が顔面に当たる。
激しく脳が揺れて目の前が真っ暗になる。
気がつくと空を見上げていた。
状況は?
すぐに試合に復帰しなくちゃ、そう思い素早く立ち上がる。
グラウンドにいる選手たちがこちらを見ている。
気のせいか?全体的にみんな屈強な体格に見える。
が、きっと気のせいだ。
頭を打ったショックでかすんで見えているだけだろう。
ピッチに戻る。
大丈夫だとアピールする為に手を上げてみた。
ものすごい歓声
んっ?何この歓声?
たかが中学サッカーの地区予選、親ですら見に来ない試合だ。
周りを見渡す。
なんだか立派なスタジアムだ。
客席もいっぱいある。
なんだコレ学校のしょぼいサッカーコートで試合していたはずなのに
びっくりしすぎて腰から砕け落ちてその場に座り込む。
ゴリラみたいなマッチョな男が近づいてきて僕をヒョイっと持ち上げる。
「さあ行くぞここから同点に追いつくぞ!」
同点?何いってんの点差13点だよ。
1点でも返して一矢報いるのが精一杯なはず。
そう思い周りを見渡す。
スコアは0-1
接戦じゃん。
どういうこと?
男が僕を地面に置いた。
全然状況がわからない。
わかっていることはここはサッカー場だと言うこと、おそらく僕がサッカーをしていた中学地区予選ではないこと、白地に黄色いストライプのユニフォームを着ているのが敵チームであること、青地に赤のストライプの入ったユニフォームを着ているのが味方のチームだと思われる事、フォーメーションが4-3-2-1のワントップで僕がFWのポジションらしいということだ。
そして試合が開始されたのでとにかくやるしかないということだ。
パスを受け得意のドリブルで切り込んでみる。
相手の動きが鈍い。
いける。
得意のドリブルで敵陣に切り込んでいく。
目の前にまた1人立ちはだかっているけど問題ない。
ギアを上げ抜きにかかる。
立ちはだかる男が右手をかざした瞬間、ピカッとした光、激しい音。
何か危険を感じとっさに左によける。
雷鎚?
雷鎚がボールに直撃する。
なんだかんだ?明らかにさっきの男の指先からでてきていたような。
あんなの当たったら死んでしまうぞ。
わけかわからん...がボールは?
目の前にある。
走り出しドリブルしようとした瞬間
動けない、走っても走っても前に進まない。
後ろを振り返るとクナイを構えた男が不気味に笑っている。
「影縫い」
自分の影を見るとクナイが刺さっている。
こいつのせい?こいつのせいで走れないのか?
そもそもサッカーの試合中にクナイって反則なのでは?
いろんな疑問が頭の中に浮かぶけども影に刺さったクナイを抜きプレーに戻る。
戻ったけど敵の奇妙な攻撃にふりまわされ何も出来ないまま試合が終わった。
物凄いブーイングと罵声を浴びながら試合会場をあとにした。