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Ⅱ 2023年6月27日  喫茶メトロで。


 文化祭が終わり、つい最近終わったと思った定期テストが再び近づいてくる。テスト週間で部活がないため、喫茶メトロでいつものように悠護、芽生、花凛、俺の四人でテスト勉強をしていた。


 喫茶メトロの古びたレンガ造りの外壁には、ツタが少し絡まっており、長い年月を感じさせる。入り口の上には、時代を感じる「喫茶メトロ」と書かれたネオンサインがあり、昼間でも少しぼんやりと光っている。木製のドアには、擦り切れた取っ手が付いていて、常連客が何度も通った跡がうっすらと残っている。窓には、カフェカーテンがかけられており、中の様子は少し見えるが、あまりはっきりとは見えない。通りから少し離れた立地で、都会の喧騒からは隔離された静けさが漂っている。店内に入ると、どこか懐かしいコーヒーの香りが漂い、木の温もりを感じるインテリアが目に飛び込んでくる。床は、磨かれた木製フローリングで、少し軋む音が心地よい。壁には、古い映画のポスターや風景画がランダムに飾られ、漫画や小説、雑誌が本棚にズラリと並んでいて、薄暗い照明が柔らかく室内を包み込んでいる。テーブルと椅子は、クラシックなデザインで、深いブラウンの木製家具が統一されている。そして、大きなガラス窓に面したカウンター席は、一人で来る常連客たちのお気に入りの場所になっている。


「匠はいつで部活引退?」

 数学の課題の答え合わせをしながら、芽生が聞いてくる。勢いよく丸付けしているペンの音が耳へと入ってくる。

「夏休み前で引退」

「そうなんだ。大変だね」

 俺以外の三人は、文化祭を皮切りに部活を引退した。そのため、放課後はたまに一緒に受験勉強をしている。テスト週間で部活がないため、今日は俺も加わっている。

「お待たせいたしました。メロンクリームソーダ、アイスコーヒー、アイスミルクティー、アイスレモンティーです」

「あっ、マスター、文化祭協力していただきありがとうございました」

「ありがとうございました」

 手を止めて、花凛に続いて、芽生と俺はお礼を言う。

「いいんだよ。君たち、大切な常連さんで、美味しそうにご飯食べてくれて、一生懸命勉強している姿を見ていると何だか応援したくなるんだよ」

「マスター」

 マスターの言葉が胸にじーんと響き、感動している。そのあまり、ハモってしまった。

「テスト近いんだろ。頑張りな」

「ありがとうございます」

 この喫茶店メトロを頻繁に訪れるようになったのは、二周目になってからである。京栄高校が近いのにも関わらず、同じ高校の制服を着た生徒はあまり見たことがない。一周目で、花凛と本屋で出くわして、仲良くなってから、花凛行きつけのお店だと教えてもらい、数回訪れた。居心地の良い雰囲気とお手頃価格のメニューと美味しさに魅了され、もっと早く知っていれば良かったと後悔した。一周目は、文化祭でこの店に協力を要請しないで、クラスだけで何もかもやったので、あまり満足のいくものを創り上げることができなかった。このメンバーで来たのは、中間テスト一日目だから、5月17日だったはず。一緒にお昼ご飯を食べながら、お互いに問題を出しながら、二時間ぐらい勉強をした。芽生は花凛に連れられて、何度か訪れているらしく、その時、悠護は初めてだったらしく、いたく気に入っていた。

「明日の英語のテスト、英作文あるの知ってる?」

 悠護がふと思い出したかのように口にする。

「何それ! 初耳なんだけど」

 英語が苦手な芽生が驚く。毎回、テストを作る先生が違うため、問題の出し方や解答方法が違う。そのせいでクラスによって平均点が変動するのはよくある。テストを作る先生が担当しているクラスだと、他のクラスに比べて平均点が二、三点高い傾向にある。今回は悠護が教えてもらっている先生がテストを作るらしい。

「テーマの問題は、先生が英検の過去問から取ってきたらしい。ほとんどが、二級だけど、何個か準一級の物もあるらしい。準一級のライティングのテーマで準一級に挑戦して、優れた英作文書いたら評価がプラスされるらしい」

「初めて聞いた。自分の所の先生、何も言ってなかった。よね?」

 芽生が同じクラスである花凛と俺に視線を向ける。

「でも、花凛、英検準一級合格してなかったけ?」

 芽生が思い出したかのように言う。

「うん、してるけど……」

「すご!」

 俺と悠護は驚きのあまり、口が開いたままだった。

「そんなことないよ。英語の勉強するのが好きなだけだから」

「いや、でも、すごいよ。花凛は将来、留学したいとかあるの?」

 俺は質問する。

「大学に入ったらしたいなと思っている」

「どこ行きたいとか考えている?」

「まだ、決めていないけど、オーストラリアいいなと思っている!」

「そうなんだ!」

「そのためにはもっと勉強を頑張らないとな」

「花凛は頑張り屋さんだから、きっと大丈夫」

 花凛が夢を叶えることができるために、君を悲劇から救うから。何があっても助ける。あんな顔を見たくないから。

 脳裏に血まみれの花凛が過るが、下を向き、葉っぱを振り落とすかのように首を振る。

「ありがとう。匠くん」

「受験頑張ろう!」

「だね!」


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