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Ⅱ 2023年5月12日 え、3人目!? そして、衝撃の事実。

 放課後、今日は、月に三回設けられている部活がない日だった。だから、小坂と図書室で作戦会議をすることにした。

 あの後、俺は部活が終わった後、小坂と連絡先を交換し、お互いの都合がつく早い日、部活がないこの日に、人目が付きにくい図書室で作成会議を行うことにした。


「話を整理すると、2023年12月22日終業式、柴崎くんは花凛と遊びに行く約束をしていた。でも、柴崎くんが財布を忘れ家に取りに戻った。十四時十五分に教室を出て、学校の大きな時計で十四時三十四分に学校に戻ってきた。自転車置き場に自転車を置いて、戻ろうとしたら、花凛が屋上から何者かによって落とされた。これで合っている?」

「うん」

「花凛を嫌っていた人物とか、怪しい人って誰かいたりする?」

「水島はいじめを受けていた」

「えっ!」

 一瞬にして、小坂の表情が曇る。

「簡単に目がつかない陰湿的ないじめ。小坂が学校を辞めてから、いじめを受けていた。俺はクラスの空気から察し、さりげなく圧力をかけたことがあった。あんな誰かをいじけている奴を目に入れながら、教室で過ごすの嫌だったから。それ以来、いじめはなかったと水島は言っていた。でも、十二月に入って、嫌がらせを受けていた。水島はそこまで気に留めた様子ではなかったけど」

「そうだったんだ……」

 沈んだ声を浮かべる。

「花凛をいじめていた相手…」

「水島の死に関わっていようがいないが、水島を苦しめていた原因の一つには間違いないだろうから、防いだ方がいい」

「分かった。でも、私は花凛がいじめを苦に自殺をする人間だとは思えない」

「明らかに自殺ではないのに、何で学校と警察は水島の死を自殺として断定したのだろう。何かしらの権力、圧力が働いたのかもしれない」

「つまり、花凛は社会を揺るがすような何か、重大なものを掴んでいたってこと?」

「そうなる……」

「あぁ、どうすればいいんだ」

 小坂は額を手で覆い、苦しむ。

「花凛は何を掴んだんだろう。教えてって言ってもきっと教えてくれないと思う。花凛は自分の悩みとかなかなか話さないから」

 小坂は、天井に視線を向け、言葉を零した。


「図書室なので、もう少し声のトーンを抑えてください」

 黒縁の丸眼鏡をかけたマッシュヘアの学生が声をかけてくる。恐らく、彼は図書委員会の生徒だ。

「すみません」

 無意識のうちに声が大きくなってしまっていたのかもしれない。集中しすぎてしまうと、つい周りへの配慮を忘れてしまいがちになる。小坂と俺以外誰もいないと思ったから、配慮を忘れていた。俺たちはすぐ謝って、小坂とアイコンタクトをし、場所を移して話そうとした。


「と言いたいところなんですけど、俺もその話に混ぜてくれませんか」

 予想外の言葉に俺たちは無意識のうちに目と口が開いていた。少しの間、思考停止に陥っていた。え、一体全体どういうことなのだろう。俺たちが承諾していないのに、椅子を持ってきて、隣に座る。

「俺の名前は、新井優護、三年一組。写真部」

「三年生」

 無意識に言葉が出る。俺らと同じ三年生だった。

「そして、君たちも二周目……だよね?」

 弓矢で的を射られた音がする。

 真ん中に命中している。「君たちも」という言葉に引っかかる。驚きで時が止まったかのようだが、すぐに現実世界へと連れ戻される。

「うん」

「え、待って。なぜ、それを」

 小坂が驚きながら言う。普通に返事してしまったけど、よく考えてみたら、今まで話したことない同級生が俺たちの秘密を一発で命中させたことに驚きを見せるのが普通だ。案の定、テンポ遅れて、驚きの声が溢れる。

 図書室に俺たち以外に誰もいなくて本当に良かった。もし、誰かいたら顔を赤くするレベルの叫び声だからな。

「じゃあ、君も二周目ってこと?」

「まぁ、そういうことかな」

「何で、君が二周目を生きているの?」

 俺は疑問をすぐさまぶつける。

「新井くんは、花凛の死について知っていたりするの?」

 続けて小坂が問いかける。

「俺は水島さんが命を落としたあの日の放課後、水島さんが校長と一緒に話をしているのを見た」

「それは何時ぐらい?」

「十四時半前」

「屋上に向かったのかは定かではないけど、二人は教室の前の廊下で何か話していた。すれ違った時、水島さんの表情が強張っているかのように思った。あの時はそこまで気には留めていなかった。でも、まさか、あの後、命を落としてしまうなんて思いもしなかった」

「校長が花凛を殺した犯人?」

「それは、分からない」

「でも校長が殺したとしたら、動機が分からない」

「まずは、校長について調べてみる必要があるね」

「どうやって校長について調べる?」

「学校のことだから自分たちで調べないとだめだけど、私たちができることって限りがあるよね。警察の力とかが必要になってくるよね。誰かいい人いないかな。あっ!」

 何かを思いついたかのように二人が俺の方を見る。その様子だと二人は俺の兄が警察だということを知っていた。なぜ、知っているのだろうと思ったが、そこまで気には留めようとしなかった。

「分かった。兄ちゃんに聞いてみる」

 とは二人に言ったもの何て説明すればいいのだろう。まだ起こっていない事件の重要参考人だからと言って、安易に調べてと言うことはできない。「実はタイムリープして二周目なんだ」と言って、説得するのはと考えてみたが、絶対信じてくれない。


 学校のチャイムがなり、俺たちはカバンを持って、図書室を後にした。学校の敷地内だと、スマホの使用が禁止されている。だから、校門の外で、スマホを出し、小坂の提案で俺たちはすぐ情報交換ができるようにグループを作った。

「グループ名どうする?」

「柴崎くんが適当に決めていいよ! 柴崎くんがこの計画のリーダーっていうことで」

 小坂が俺の方を向いて言う。

「俺もそれでいいと思うよ!」

 新井くんは、小坂の意見に同意していた。

「分かった」

「二人とも、また!」

 これから塾があるという小坂とは校門の所で別れた。


「新井くんって、こっち方向?」

「電車通学だから、うん」

「俺も途中まで一緒だ。一緒に帰らない?」

 一周目では高校生活の中で彼と話す機会はなかったし、水島とどういう接点があったのか、どうして二周目を選んだのか知りたかったから、途中まで一緒に帰ることにした。

「いいよ」

「良かった。もう少し話したかったから」

 何を聞こうか頭の中で整理していると向こうから話しかけてきた。

「突然なんだけど、柴崎くん、下の名前って何?」

「匠。あれだったら匠って呼んでいいよ。俺も悠護って呼ぶ」

「じゃあ、匠……よろしく」

「おぉ、よろしくな」

「悠護はどうしてタイムリープしようと思ったんだ?」

「水島と一周目接点があったのか?」

「あまり接点はなかったけど、一度だけ写真の被写体になってくれたことがある。確か一年生の時かな。その写真が県の写真展で入賞したんだ」

「そうだったんだ」

 その写真見てみたかったな。

「あの日、二限と三限の間の休憩時間、教室の前を通った時、窓越しから見えた水島さんの様子は何だか嬉しそうだった。何かいいことでもあったのかなと思った。でも、放課後、校長と歩いていた時の水島さんは暗い表情を浮かべていた。俺も水島さんの死には疑問を持っていたんだ。それに、俺は推理小説が昔から好きだから、何かしらの役に立てると思ったんだ。だから、俺はタイムリープをした」

「そうだったんだ。でも、悠護がいるの心強い」

 話すのは初めてで、まだよくも知らないのに悠護のことを何だか心強く思えた。

「俺も匠と小坂さんがいて良かった」

「あのさ、悠護のタイムリープに払った代償って何だったか分かる?」

 ずっと気になっていたことを悠護にもぶつけてみる。

「代償?」

「タイムリープする前に誰かおじさんに出会わなかった?」

「顔は覚えていないけど、確かに話しかけられた。でも、記憶が曖昧なんだよね。話しかけてきた人の声は頭に残っているんだけど顔が思い出せない」

「そっか」

「タイムリープする前のあの日の記憶は曖昧だけど、あの出来事を変えたいという強い覚悟があったからこっちに来た」

「そうだったんだね。頑張ろうな、一緒に」

 俺が手を差し出すと悠護もその手を取り、「もちろん」と深く頷く。


 悠護と別れた後、信号を待っている間スマホを出し、兄ちゃんにメッセージを送る。

「兄ちゃん、今日時間空いてたりする?」

『ごめん、今日は無理』

「いつだったら大丈夫そう?」

『捜査が立て込んでいて、いつ都合がつくか分からない』

『何か用事があるんだったら、今日の夜、電話でも良かったら聞くよ』

「出来れば直接会って話したい。忙しいのにごめん。時間が空いたら教えて」


 悠護の話からすると、水島を殺した人物として濃厚なのは、校長ということだ。

 でも、水島は校長と何だかの関係があるのか。学校の校長と直接話す機会というのはほとんどない。ましてや、この京栄高校は、一学年約二百人、全校生徒約六百人のマンモス校だから、校長と話したことある生徒の方が圧倒的に少ない。俺も、校長と言葉を交わしたことない一人だ。


 なぜ、水島はあの日、校長と一緒にいたんだ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 物語の展開がガラリと変わったような感覚がありました。まさかの2人じゃなく3人目が現れ校長が現時点での最重要人物。警察関係者もグルで動いてそうな感じの展開で次の展開がかなり気になります。また楽…
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