表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
防御魔導士は生き残る  作者: ジオ=ハーモニクス
1/1

最前線で消える楯

 砂漠の国「エゼラント」

 この国は戦争をしている

 資源も技術もないから、魔法の力だけで戦っている

 だから、守るも攻めるも、すべて人力だ


 自分こと「ダリル=エトレイア」は防御魔導士だ


 防御魔導士とは文字通り、戦場の最前線に立って防御魔法を展開し、相手軍の攻撃を受け止める役だ

 4名1チームで構成されており、出撃のたびに毎回、チームを組む人が違っていた


 何故なら


「ぎゃああああああっ!」

「エレイオッ!」


 今朝初めてチームを組むことになったメンバーの1人であるエレイオの脇腹を敵の弾丸魔法が撃ちぬき、衝撃波が彼を体ごと後方に吹っ飛ばした

 砂塵の向こうに彼の身体が消える


 この異常に高い死亡率が、メンバーが入れ替わりつづける原因でもある


「ダリル!気を抜くな」

「はい!」


 名前を忘れた、リーダー役の防御魔導士から激が飛ぶ

 

 敵の弾丸魔法はさらに攻撃の頻度と速度を増していた

 気を抜けば、後方の砂地に自分の躯を晒すことになる


「後ろの連中、何やってるんだ、早くしろ!」


 後ろの連中、つまり、自分たちが防御魔法を展開して守っている者たちのことだ

 それは「超攻撃魔法を展開している宮廷魔導士」たちである


 砂漠での戦闘は基本的に視界が広い


 なので、一撃が強力な魔法を使っての威力戦闘になる


 だが、強力な魔法は起動から展開までの時間が長い

 ゆえに考え出された戦法は、防御魔導士が前線に立ち、超攻撃魔法の発動まで耐えるという方法だ


 弾丸魔法が飛び交い続ける戦場でマトとなり、ひたすら耐え続けるのが自分の役目だ


 そうこうしているうちに、発射シーケンスが後方から響いてくる


「生き残ってるクソども!道を開けろ!巻き込まれたい奴だけ残れ」


 作戦司令官の下品な声が戦場に響き渡り、直後、後方から巨大な光の柱が発射された


 世界が違えば「極太レーザー」と呼ばれる形

 それが周囲の砂を巻き込み吹っ飛ばしながら、前方の敵軍に直撃した


 衝突音と爆発音を伴って、巨大な砂の柱が敵を包み込む

 肉の焼ける音と絶叫が砂漠に響き渡り消えた


 跡には敵軍である「巨大魔導生物」の躯が横たわっているのが見えた


 弾丸魔法もコイツが飛ばしてきていたのだろう、敵軍の攻撃が止んだ

 小さな黒い塊のような小型魔導生物が散り散りになって逃げる姿が見える

 勝敗は決した


「生き残ったな」


 リーダー役の防御魔導士が、自分の肩を叩いた


「ええ」


 そんな勝利の余韻を感じる前に、後方からまたしても下品な声が響いた


「豚小屋にさっさと戻れクソども!遅れた奴は砂漠の肥やしだ!」


 生き残った魔導士たちは、後方の移動用魔法陣に向かい一斉に全力疾走を開始した

 自分もまた、チームメンバーと別れて後方に走り出す


 その移動中、片足を失った魔導士を仲間の魔導士が支えている姿を見たが、時間が足りないと見るや支えていた魔導士は、支えていた彼を見捨てて走り出した


「たすけてっ!たす、けてっ!」


 地面に倒れた魔導士の悲痛な叫び声があたりに響くが、周囲の誰も彼を助けない

 自分もまた助けられない


「走れねぇ奴は見捨てろ!」

「どうせ夜までの命だ」

 

 誰かの声が聞こえる


 そう、夜が来たら命が終わる世界


 これが、この残酷な世界が、自分が「人工魔導士」として生まれ変わった世界であった



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ