夏祭り前日。(15分)
著者:花時雨ことり
時間:15分ほど
登場人物:
・高校生組
鳴神くん。常闇を統べる王にして堕天使系男子。
ひなちゃん。素直で幼気、純粋無垢な雛鳥系女子。
みのりん。クールで落ち着いてるけれど、遊びには全力投球な保護者系男子
ハルくん。かわゆい子うさぎの皮を被った無邪気な狂人、小悪魔系男子
・おじさん達
四十万さん:日米ハーフのお茶目なおじ、お兄さん。お仕事不詳。たまにやってきては遊んでくれる。
忍さん:ひなちゃんのおじさん。四十万さんの相棒でお仕事不詳、よく長期出張がある。
春臣さん:子煩悩イケおじ春兎パパ。お仕事は内緒。お蕎麦が好きすぎて自分で打てるようになった。
ひな
「あっ、鳴上くんだぁ! 一緒かえろー! えへへ。夏休みだねぇ。ゲームいっぱいお誘いするから、遊ぼうねぇ」
聖也
「それはどちらも構わんが……妙にご機嫌だな雨ノ宮」
ひな
「えー。ふへ、へへへ。ミケちゃんにもね、言われた。わたし、そんなわかりやすいかな?」
聖也
「まぁな。お前のそれは、あれか、バケーション・ハイってやつか」
ひな
「んー。えっとね。久しぶりにね稲荷神社で縁日があるのよ、明日!」
聖也
「あぁ、去年は社の舗装工事が長引いたとかで、中止だったか」
ひな
「そー! 今年はね、新しいお社になった記念に、おっきな花火もドンドン鳴るそうで! んへへ。 楽しみだねぇ」
聖也
「花火か、それは豪勢だな。そう言えば裏に河原があったか。松を飛び越えた大輪は映えるだろうな。祭りには彼奴らといくのか」
ひな
「うん、はるとみのり! そだ、鳴上くんもいっしよ行こ。楽しいよ! ね、みのりも喜ぶよ」
聖也
「そうだな……たまには稲荷の狐どもに顔を見せてやるのもいいだろう。俺は構わんが、彼奴らが良しとすればな」
ひな
「やったぁ。へへ、メッセ送ったぁ。鳴神くんが仲間になりたそうにコチラを見ている……!」
聖也
「仲間にしたそうにコチラを見ていたのは、雨ノ宮だったがな」
ひな
「へへへ。そうでした」
間
春兎
「うぉぅ夏休みだっ」
稔
「だな。新しいゲーム買ってやろうぜ」
春兎
「ホラゲしよホラゲ」
稔
「いいけど、苦手だろお前」
春兎
「大丈夫、僕横で見てるから」
稔
「俺だけコントローラー握らせる気だな、ふざけんなよ」
春兎
「僕が買うからさ。ね、みのりんやってよ。僕、隣でやじ飛ばす係するから」
稔
「世界一要らん係じゃねぇか……いいけどさ」
春兎
「じゃあ、緊迫するところで背中をツーってする係」
稔
「お前、絶対すんなよ、マジで」
春兎
「えーどうしよっかなぁ」
稔
「どうしよっかなぁじゃねぇのよ。やんなっつぅの。やったら最後、あれだ……あれ、あー、絶交だわ」
春兎
「絶交て。思いつかなかったんかい。じゃあ僕ひなちゃんが目も耳も塞げないように手を抑えておく係する」
稔
「やめてやれ」
春兎
「んで、泣いちゃったところをヨシヨシしてクッキー食べさせる係」
稔
「最悪なマッチポンプだな。ん、噂をすればグルチャにメッセ来てんじゃん」
春兎
「ひなちゃんから? 」
稔
「ん。明日の祭り、聖也も来るってよ」
春兎
「おっ、良いじゃん。それなら委員長も誘えば良かったかな。ひなちゃん会いたがってたし」
稔
「確かにな。でも、彼女ら結構遊んでんだろ。こないだもめっちゃデカいかき氷の写真送られてきたし。ほら、美味そうだよな」
春兎
「あー台湾かき氷! 美味しそう! 食べたいな。え、今日早上がりだし、今から行っちゃう? 」
稔
「行くかー? 帰りアイス買うつもりだったし、行くか」
間
ひな
「2人とも大歓迎だってー! てんてれてれれれ、れってってん(ドラクエ) 鳴上くんがパーティに加わった!!」
聖也
「加わったな。昔から彼奴らと祭りには行って居たのか?」
ひな
「うん、小学生の頃から。昔はね、おいちゃんか巴さん、従兄弟のガっくん、あとははるのパパさんかママの麗ちゃんとか、保護者同伴でした」
聖也
「雨ノ宮は従兄弟の家に世話になってるんだったな。む、稔の両親はどうなんだ」
ひな
「みのりはね、自立が早くていらっしゃったから。お父さんもお母さんもお家に置いて来てた」
聖也
「あー、な」
ひな
「でもね、2人ともみのりのこと大好きだから、実は隠れて着いてきてたよ」
聖也
「それは、稔にはバレなかったのか」
ひな
「6年生まではバレなかったよ。あ、あとは四十万さんも来てくれたことがあったな」
聖也
「四十万さん……あー、外国育ちの気のいいおじさんだったか」
ひな
「そうそう、ちっちゃい頃ね……」
間
《回想》
忍
「よし、チビども点呼とるぞ。はい、ひなちゃん」
ひな
「はぁい」
忍
「みのりくん」
稔
「はい」
忍
「はる」
春臣
「春兎!」
春兎
「はーい」
忍
「……」
春臣
「よし、皆いるね。僕達と手をしっかり繋ぐこと。迷子になったら、その場で動かず待ってるんだよ。防犯ブザーは持ったね」
忍
「心配し過ぎじゃねぇか……? チビ共もチョロチョロするような歳じゃねぇし、な稔」
稔
「はい」
忍
「なんなら……」
克明
「おいノブ、あれはなんだ。あ、絶対俺は金魚掬いするからな。あとりんご飴はどこだ」
忍
「こっちの三十路のほうがよっぽどチョロチョロしてら」
春兎
「おじさん、あれね。射的だよ」
克明
「射的……?」
ひな
「鉄砲で撃ち落とした[[rbおもちゃがね、もらえるの」
克明
「そいつはいい。ひなちゃん、どれが欲しい。お兄さんが取ってやるよ」
ひな
「ほんと? んー……うさちゃん」
克明
「うさちゃんな、いいぜ。親父ぃ、これで1回頼む。いや銃の貸し出しには及ばん、愛銃があるんだ、お構いなく。そこだっ……」
間
聖也
「……愛銃で撃ったのか。もしかしてあれか、よく持ち歩いてるハンドガン」
ひな
「そうなの。四十万さん、縁日初心者だったから。専用の鉄砲があること知らなかったのね。あのハンドガンね、魔改造したエアガンなの。でもね凄い迫力だったよ。わたし、びっくりして泣いちゃった」
聖也
「だろうな」
ひな
「ぬいぐるみも吹き飛んじゃうし、綿がね飛び出ちゃってた。……ミミ嬢の額には、弾丸摘出手術の跡がまだ残ってます」
聖也
「女の顔に傷を残すとはな。あの人も業を背負ったものだ」
ひな
「ほんとに! ミミ嬢が許しても……えと、工場長が許さないよ。お父さんだもん」
聖也
「そこはお前じゃないんだな」
ひな
「うん。ミミ嬢にね、サテンのリボン買ってくれたので、私たちとは示談になりました」
聖也
「なるほどな……それで、結局どうなったんだ。店の人も怒っただろ」
ひな
「うん、ノブおいちゃんがね代わりに謝って迷惑料払ってたよ」
間 > (回想)
克明
「ほら。取れたぞ、うさちゃん」
ひな
「あ、あぅ……えと、あ、ありがと……うさちゃ……(泣)」
はると
「あー、おじさんひなちゃんのこと泣かしたー」
克明
「え、あ、ど、どうした。どうして泣いちゃったんだ」
稔
「可愛いうさぎの頭撃ち抜かれたら、子供はショックですよ、しじまさん」
克明
「え、いや、だって」
忍
「お前なぁ……そら、ドタマぶち抜かれて、額から綿吹いてるぬいぐるみ渡されたらなぁ。可哀想に。うさぎさん痛そうだもんな、巴に直してもらおうな」
ひな
「んぅ」(コクリ)
克明
「待ってくれノブ! じゃあなんだ、日本人はぬいぐるみに傷1つ付けずに撃ち落とせるってのか」
忍
「そうだよ。そのためのコルク銃だ。仕事道具を遊びで使う奴がいるか! まぁ、見てろ。親父、迷惑料含め5000円で20発だ。いいか? ……よし。ひなちゃん、ねこさんは好きか?」
ひな
「ん、ねこちゃん、すき……。わ、わぁ……おぉー。ねこちゃん! すごい! おいちゃんすごい!」
稔
「すげぇな、どんどん落ちてく……お店の人可哀想。……あ。……。ね、いがらしさん。あれ。プラモデル。落とせたりしますか」
忍
「あー、あれか。重そうだが、何発か当たれば行けるだろう」
稔
「……! すげぇ……。落ちた! あ、ありがとうございます! いがらしさん」
忍
「お前がにこにこしてりゃ上等よ。よし、お前らガムは食ぅか?」
稔
「おれ食べますよ、ぶどう好きです」
忍
「そうか……よし。次、マシュマロはどうだ」
ひな
「はるが食べるよ、ね」
春兎
「うん、好き」
忍
「そうか」
春兎
「ノブおいちゃん、すごいね」
春臣
「なにっ。忍、少し僕に貸しなさい」
忍
「んぁ? おい!」
春臣
「さ、春兎。どれが欲しいんだい、パパに言ってご覧」
春兎
「あ、えぇ。そう言われてもなぁ……だいたいノブおいちゃんが落としちゃったよ」
春臣
「くそ。店主、これで景品を補填してくれないか」
間
ひな
「ってパパさんが2万円だったか3万円だったかをね、店主さんに渡そうとするんだけれど、『アンタら、そろそろ帰ってくれ』って追い払われちゃったの」
聖也
「飾ってた景品あらかた落とされたんだろう? それだけ荒らされたら、当然だな。しかしまぁ、お前らの周りは昔から賑やかだったんだな 」
ひな
「うん。楽しいおじちゃん達に囲まれて育ちました。そしてなんと、今日ならその愉快なおじちゃん達が我が家に集結しております! 鳴上くんもどうですか」
聖也
「夕飯の誘いか? 遠慮しよう。突然行ったら迷惑だろう」
ひな
「そか。ん……じゃあ、明日は! お祭りのあと。はる達とねお泊まり会するの。鳴上くんだけ帰るの寂しい。おいでよ、お友達呼ぶと巴さんも喜んでくれるし……あっえと、次の日のお昼は冷やし中華が出ます!! 美味しいよ!」
聖也
「俺は食事に釣り上げられるような人間じゃないことくらい分かってるだろう馬鹿め。お前が寂しいのは分かった」
ひな
「んむむ……」
聖也
「なんだ、ネタ切れか」
ひな
「で、デラックス日輪刀があります」
聖也
「なぜそれで良いと思った。そしてお前はなぜ買った。……いや、デラックス ライトセイバーなら考えてたな」
ひな
「四十万さんがくれた」
聖也
「あぁ……好きそうだな」
ひな
「……鳴神くん、明日来ない?」
聖也
「……行ってやろう」
ひな
「やったぁ! みんなで怖い話しようね」
聖也
「お前得意じゃないだろう。林間学校で披露した怪談はメリーさんだと稔に聞いたぞ」
ひな
「うっ、でもでも、きっと楽しいよ……こ、怖くなっちゃうかもだけど」
聖也
「……まぁ、このヴァイス=シュヴァルツ・ブリューグントが居るからには、怪談に引き寄せられる魑魅魍魎に怯える必要はないが……」
ひな
「っ! ヴァイスさまが五十嵐家をお化けから守ってくれるってコト……!?」
聖也
「造作もないことだ。低俗な妖などは俺の闇の力の前に塵と化す、お前らは気にせず怪談に花を咲かすといい」
ひな
「へへへ。怖くなったらみんなで鳴神くんのお布団に潜ればへっちゃらだね」
聖也
「やめろ。暑苦しさにかえって夢見が悪くなるだろうが、この布団結界信者め」
ひな
「へへへ、みのり達にも鳴神くんがお泊まりしてくれるって伝えちゃうね!」
聖也
「ん、ではな。また明日、雨ノ宮。祭りが楽しみだな」
ひな
「うんっ、とっても楽しみ! また明日ねー!」
「……さっそくみのり達に教えちゃお、巴さんにも言わなくちゃな。あっ、2人とも美味しいの食べてる!! 飯テロ返さねば……! 巴さんのご飯にひれ伏せ! ……ただいまー! 巴さーん今日のご飯なんですか」