白と黒の世界
話には繋がりますが、箸休め回だと思っていただければ良いと思います。
また機会があれば深掘りしたいとも思っております。
「ねぇーねぇー、お姉さんがいるって有城さんから聞いたんだけどどんな人なの?」
「強くて優しくて何よりカッコよくて……つまり、理想の人?みたいな」
「でも家族とかでは無いんでしょ」
あまりにも唐突にハッキリと言われたその言葉が心の雲行きを怪しくさせたのは間違い無かった。
「……やっぱり血縁の方が大事なのかな、あははは」
「血縁かぁ〜、それでいうとこっちは結構揉め事多いからね」
「揉め事?」
「うんうん、いっぱいあるよ」
「例えばー、王族や貴族の継承争いとか、突然現れる神力とか……ああ、あと私たちにとって危ないのは……『神の子信仰』だね」
2日目の朝の出来事だった。
◇◆◇
その表面はまさに光の世界。神秘的な純白の外壁は他に類を見ない代物だろう。まさに想像の産物、当時の設計者の理想を丸々再現した芸術作品ともとれるそ様相は1000年の時を経てもなお、様変わりすることは無かった。
ジャラジャラと鎖が地面に擦れたり、引っ張る音が響き、暗く閉鎖的な日の光を拝むことさえできない縦に広がる広い空間。時折聞こえるのは悲痛な声と怒号、しかし、それはごく小音で彼らの抱えている苦痛や痛みの大きさに比例することはない。
アルフォゲル城はこの城自体が神域に等しいと言える。かつての王がこの半永久絶対保管空間を創り上げたのだ。ここでは如何なる神力も発揮されることはなく、外部からの攻撃も打ち消される。その特性を活かし、城の地下には堅牢な牢獄が下に向かって広がっていた。
「外部との連絡は書簡、その他の接触は無し。今回は混乱に乗じて王都に壊滅的な被害をもたらすこと……能力者数人と武装した数十名では決してできないはずです。いわば混乱を招くための捨て駒、あるいは別の目的を達成するための陽動作戦ともとれるでしょう」
その場に似つかわぬ洋装の婦人は淡々とそう述べた。
「なかなか口を割らなかったのでな、それが分かれば上々だ」
城の主、ダリアは痛々しい風貌の囚人を不敵な笑みで見つめる。
「大した心構えも神力の前では無力であったな」
「……どうでしょう。それはあなた方にも当てはまる事柄であるとは思いませんか?」
青年は心身共に疲弊しきっているはずが、今尚勝ち誇った余裕の表情を見せている。
「ほう、捨て駒が威勢をはるか」
ダリアはわざとらしく目を見開き、囚人を挑発する言葉をすかさずかける。
「これは威勢ではなく矜持ですよ」
しかし、囚人の態度は以前そのまま。そして、ダリアはその様子をジッと伺うばかりであった。
2人は兵に付き添われながら牢獄を後にし、煌びやかな城内へと場面は切り替わる。
「身重の身で遣わせて申し訳なかったな。少し休んでいくか?」
「いえいえ、とんでも無いです。まさか私の能力が役に立つとは思わなかったのでお役に立てて光栄でした」
ダリアは先程とは一変した穏やかな笑みを浮かべる。
「其方の力は使い方次第で大いに役立つ。落ち着いてからいい、またこうしてしがない私に力を貸しておくれ」
「ご冗談を」
真紘は祝祭の後、身分を偽り町医者で診察を受け、自分に新しい命が宿っていることを再確認した。侍女長に叱られると分かっていながらもとりわけ仲の良い侍女2人が協力して、見事に隠密に事を進めてくれたことには感謝してもしきれない程だ。そして、親友の言葉を思い出しながら勇気を振り絞って愛しい人に全てを伝えた。公爵は小さく震える彼女の体を優しく抱きしめ感謝の気持ちを伝えると共に、額に口付けを落としてくれたことを今でも度々思い出す。
「独身主義者と謳われたあの公爵の変わりようは見ていて清々しいほど微笑ましいものよ。あやつは言葉足らずなところがあるが、そこは上手く汲み取ってやってくれ。もともと人付き合いが苦手なやつだからな」
威厳ある女王の優しさを、国のものであれば誰でも知っている。
「女王様は優しいお方です」
「……類は友を呼ぶというのはまさにこの事だな」
ダリアは以前にも同じようなことを言われたことがあった。
侍女たちに付き添われながら馬車に乗り込む様子を微笑ましく見つめた。
「女王様、失礼致します」
ノックと共に執務室に入ってきたのは、王宮騎士団団長のルヴァであった。
「あの件の調査結果が纏まりました。今一度ご確認下さい」
常人の何倍もの速さでダリアは調書を読み上げた。
「やはりそうか……」
積年の思いもこれで報われたといわんばかりの結果に安堵のため息をもらす。
「このことは彼に伝えられますか?」
ルヴァは神妙な顔つきで女王の顔を伺う。
「勿論。交換条件をつけてな」
ダリアは笑顔でさらっと脅しともとれる言葉を述べた。
「何か条件を設けるのですか?」
「ああ、彼の能力は今後必ず役に立つ時が来る。其方もそう考えているはずだ」
とぼけたとしてもこの人の前ではそれも見透かされてしまう、ルヴァも覚悟していた。
「はい、特別と言えるでしょう。なにせ貴女様の一族のものなのですから」
「そうであれば良いな」
ダリアはかつての記憶に浸りながら恩人の事を思い出していた。
しばらく休載させていただきます。




