共闘 其ノ三
「これがわたしの能力。人やモノを入れ替えられるの」
(入れ替え……?)
人やモノを入れ替える能力。パッと言われても理解が追いつかない。
「もー、脅かさないでよー」
母親に縋り付く子供のように礼華はリラをギューっと抱きしめた。それにリラは少し頬を紅潮させ、うっすらと笑みも浮かべている。
無事でよかった、と心からそう思えた。気づけば、ぽっかり空いた穴はすぐに他のもので満たされている。
「しかも喋るようになったね」
リラの口数の少なさから嫌われているのかも、とショックを受けていた彼女にとって大変喜ばしいことだ。
「……それはお姉ちゃんだから」
お姉ちゃん、なんといい響きの言葉だろうか。もともと一人っ子で1ヶ月前に姉ができたばかりの礼華はこそばゆい気持ちになった。
「嬉しいこというじゃんかー!」
先程まで感じていた緊張感はどこかへ消えて無くなっていた。
「……でも、確認はした方がいいかも。結構高い位置で入れ替えちゃったから」
「あ、忘れてた」
重たい銃のケースを背負いながら階段を降りるのは、上るよりは楽かもしれないがそれでもキツかった。膝射で打ったのもあり、足の筋がピンと張っている感じがした。どうやら自分の筋肉量では屈んだ体勢をキープするのが難しいようだ。今回は一発打って、それが当たったから良かった。それだけなのだから、決して上出来とは言えない。
「リラはここで待ってて」
動いている様子がないとはいえ、リラが攻撃を受ける可能性がある以上、彼女からなるべくこの男を話しておきたい。
「うん」
一刻も早く不安要素を取り除きたいので、強気でどんどん近づく。
「……」
ナノハに教わった一通りの安否確認を行い、無事を確認した。
「大丈夫みたい」
リラも安心した様子だ。
不思議なことに、彼が悪い人間ではない気がした。何らかの能力者であることは確かだが、それで危険な人間といえるのだろうか。もしかすると誰かに脅されて仕方なく襲撃を行ったのかもしれない。
リラは考え込む彼女の横顔を盗み見る。
「……きれい」
ぼそっと出たのはこの言葉だった。
◇◆◇
「女王様! ご無事で何よりです」
駆けつけた王宮騎士が襲撃犯の捕縛をし始める。
「仕事を任せきりですまないな、ルヴァ。だが、おかけで良いものが見れた」
ダリアの無事を確認したルヴァは漸く少し落ち着くことができた。
「それは良かったです。しかしながら、お戯れはほどほどにお願いいたします」
「そうか、それはすまなかったな。しばらくは大人しくするつもりだ」
「それと、お恥ずかしながらナノハさんの助けなしでは被害はもっと拡大していたでしょう。国を守る騎士団長として、ぜりお礼させていただきたいです」
今回の襲撃はナノハの活躍もあり、被害は最小限に抑えられた。
「お礼はいいよ。それより、死んだ者を弔ってやれ」
いつもより悄然とした様子だった。
「そうですか……犠牲者については追悼を行う予定です。この事態を未然に防げなかった私どもの負い目でもありますから」
「それは違う。今回の犠牲はわたしの責任だ。みすみすと敵に騙されたからな」
ダリアが想定した襲撃はあくまで無能力者によるものであり、能力者がここで出てくるとはさすがの彼女でも予想外のことだった。
「まあ、次はわたしが欺く番だがな」
彼女の思惑を読むなど到底出来ることではないと改めて実感させられる。
◇◆◇
「兄ちゃん! リラ見つかった!」
イワンが少し遠くの植え込みあたりから手を大きく振っているのが見えた。
「リラ! 良かった〜」
安堵の息が漏れる。外傷などもない。
「リラのお兄さん?」
リラばかりに集中して横にいる人物を全く気にしていなかった。
「いやー、本当にありがとうございました」
(とっても綺麗な人だなあ)
美人を目の当たりにしてつい鼻の下が伸びる。
「お兄ちゃんじゃないけど、一緒に暮らしてる人。ハヤト兄っていうの」
寡黙なリラがここまで話すのは珍しい。よほど気に入ったのだろうか。
「ハヤト……? もしかして! 市原くん?」




