共闘 其の一
襲撃を予想していた女王ダリアは、それ相応の対応策を既に用意していた。王宮騎士団を平民らの救護にあたらせ、精鋭による襲撃犯の束縛を直ちに命じ、城の城壁内を避難所として使用させる……ここまで予想通りに事が運んだが、彼女は妙な違和感を覚えていた。
「女王様! ここにいらしたのですね。早く我々騎士団の守備のもとへ……!」
「その必要はない」
ダリアは目を爛々と輝かせる。
「どうやら、狙いはわたしではないらしい」
「ですが……」
「わたしがそう言うのだぞ、信じられぬのか……?」
女王の圧に騎士団団長も流石に敵わないと悟る。
「はあ、お好きになさってください。どうかご無理はなさらないように」
団長失格だと嘆くルヴァ。
「そうさせてもらおう」
いつもより弾んだ声の女王は無邪気な笑顔でその場を後にした。
◇◆◇
リラの同伴者を探しに城壁の中に向かったものの、探せる状態ではなかった。
(これじゃ人が多すぎる……)
城壁内にいる人々の安全は確保されたも同然だが、精神状態は様々。子供の鳴き声があちこちで響き、それに混じって怒声も聞こえる。
このままではリラも落ち着かないだろうと心配した。
「ルヴァさん!!」
視界の端に白い騎士団の服を着たルヴァを見つけ、すぐに駆け寄った。
「礼華さんは無事でしたか、良かったです」
「はい。でも、姉さんが1人で……」
「あの人もですか……」
(あの人も?)
ルヴァは小さなため息をつく。
「残念ですが、わたしはここで指揮をとる必要があるので、離れることができないのです」
「そんな……」
「それに女王様もどこかへ行ってしまわれました」
(ダリア様も……!!)
礼華は少し考えた後、口を開く。
「ダリア様を探しに行きます……!」
そう言い残し、ルヴァの話も聞かぬまま城壁の出口は向かう。
「……わたし、ここにいるのは嫌だ」
リラは外に出ようする礼華の服の袖を掴んでいた。
「外は危ないよ。それでもいいの?」
「……うん」
礼華はナノハの強さを知っている。だから、彼女を信じて女王の捜索に向かった。
◇◆◇
襲撃はほぼ同時に違う地点で行われた。それを察したナノハは音や黒煙を頼りに、それぞれの地点へと向かう。
建物の角を曲がり現れたのは武装した集団。ナノハに気づくと一斉に引き金を引いた。
数は多く見て十数人前後、武器を所持している時点で能力者でないことがわかる。
「外れか……」
銃弾一つ一つは水で包まれ、その殺傷能力は失われる。敵も大量の水に囚われ、なすすべもなく気を失う。
「お見事。まさか、能力者が混ざっていたなんて」
倒れた敵の後方から現れたのは先程の青年と歳の近そうな男。茶髪の男は手をパチパチと叩いていた。
「お前が主導者か?」
「さあ、どうでしょう」
主導者らしき男は胡散臭い微笑を浮かべている。
「当たりだな。お前がそうだ」
反対にナノハは鋭い眼差しを向ける。
「どうやら相性最悪のようですよ」
地面からナノハ目がけて高速で木が生える。
(間に合わない!)
攻撃を受ける覚悟をした時、木が両断された。
「どうやらナノハ、そなたもここに辿り着いたようだな」
「なぜあなたがここに……!」
突如現れた女王ダリアの姿を見て驚くところだが、今はそうしている暇はなかった。
「共闘といこう、ナノハ。相当不利であるぞ」
ダリアは不敵な笑みを浮かべ、白く輝く剣を男に向ける。
「お気遣い、ありがとうございます」
ナノハは丁寧に礼をする。
「驚きました。能力者が2人ですか」
男は再び面白そうに手を叩く。
「しかし、何も変わりませんよ」
言葉が終わると同時に、今度は無数の鋭い木の先が2人に襲いかかった。




