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婚約破棄され捨てられた令嬢は、魔物の森で毛玉を洗う  作者: かのん


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十話 飾られたステラ

「ひゃぁぁっぁぁぁ!」


 悲鳴を上げるステラを、ヒューリーはしっかりと支え、三つの瞳を持つ巨大な馬に跨り走っていた。


 その馬には翼があるのにもかかわらず、蹄鉄で地面を蹴り、勢いよく森の木々の間を走り抜けていく。


「ステラ。大丈夫だよ。もうすぐ一つ目の西の町に着くからね」


「ひゃ、ひゃい!」


 ステラとヒューリーが今日向かうのは西の町である。魔物の森には四つの魔人の住む場所がある。人の国と一番近い南に位置する魔物の城。そこから西の町、北の町、東の町と存在しており、ステラは現在ヒューリーと共に西の町を目指していた。


 王城にあった腕輪、西の町に送られた髪飾り、北の町に送られたイヤリング、東の町に送られた指輪。


 ガントーレ王国から、魔物の国との友好を深めるためにと約百年前に送られた親交の証。


 魔物の国を穢れで染め上げた原因の品々である。


 レルドはステラが現れてから三つの町にそれぞれ手紙をだし、そしてステラが国を回る日程を考え、それと同時に今後の魔物の国の方針などを固めていっていた。


 詳しくはまだ話を聞いていないステラであるが、ヒューリーと共に西の町から順番に回り、穢れを落としていってほしいとお願いをされている。


 移動は早い乗り物の方がいいとヒューリーと共にこの馬の魔獣に乗ったのだが、ステラはこれほどまでに早い乗り物がこの世にはあったのかと西の町に到着する頃には魂が抜けるような思いであった。


「大丈夫かい?」


 ひょいと馬から抱き下ろされ、そのままステラは横抱きにされてヒューリーに運ばれる。


 ステラは頬を赤らめながら慌てて言った。


「だ、大丈夫です! ですから、その、おろして下さいませ」


「……いや?」


 潤んだ瞳でそう言われれば、ステラは嫌とは言えなくなる。


「嫌ではないですけど……」


「よかった」


 嬉しそうにヒューリーは微笑、ステラの頬にキスをする。


 ヒューリーはとにかく距離が近い。いずれ食い殺されるにせよ、このままではいらぬ感情を抱いてしまうという思いからステラは一度ヒューリーにはっきりと言った事がある。


 すると、それからしばらく毛玉姿でしょぼんとしている姿を見て、毎度潤んだ瞳で見つめられ、結局泣き落とされる形でステラはヒューリーの行動を受け入れてしまった。


 そしてそれからさらにスキンシップが過剰になっていっているのだが、ステラは必死に邪念を振り払い、これは毛玉にすりすりされているだけと頭の中で自分に言い聞かせるようになった。


「さぁステラ。ここが西の町だよ」


「わぁ」


 目の前には可愛らしい門が現れた。とはいっても、普通の人が通れる大きさのものである。


 王城にあるものは全て作りが大きいので、久しぶりに普通サイズの物を見てそう感じたのである。


 門をヒューリーは開けると、中へと入る。


 門番のようなものはいない。たしかに、魔物の森に入る人間はいないだろうし、魔人と魔獣が争うこともめったにないというから、必要性がないのだろう。


 門をくぐり中に入ると、そこには毛玉達が集まり、ステラが姿を現した途端に歓声が上がった。


「きゅきゅきゅー!」


「きゅー!」


「きゅゆ~~~~~!」


 何と言っているのかは分からないが、歓迎されているのだけは分かる。


「皆さん遅くなってごめんなさい。お待たせしました」


 黒い毛玉姿を見て、王城の掃除にかなり時間をかけてしまったので、来るのが遅くなって申しわけなく思う。


 けれど、王城は魔物の国の要のようなもので、強い魔力をもった城である。だからこそ、城から綺麗にしなければならないと、他の町には待ってもらっていたのだ。


「きゅ~」


「きゅきゅきゅ~」


「きゅわぁぁっぁ!」


 他の町にも事情は手紙にて伝えられていたことから、毛玉達は気にしていないというようにふるふると体を揺する。


 ステラは、毛玉達は人よりもとても温厚で、優しいなとこれまでの日々で感じていた。


 魔人は本当に他愛ないことでは怒らないし、いら立ちもしない。


 それがステラにとってはとても心地良かった。最初の頃こそ怒られるのではないかなどと過ごす中でびくびくとしていたが、今では、誰も怒らないし、些細な失敗も笑いながら次頑張ろうと励ましてもらえるのでそうすることもなくなった。


 今までは言いたいことも言えなかったが、ヒューリーがにこにこと話を聞いてくれるから、自分の気持ちを言葉でちゃんと伝えられるようになったのだ。


 ヒューリーとステラは毛玉に案内されて道を進んで行くと、一つの家の前で立ち止まった。


「きゅきゅ~」


「ここにあるのですね」


 ステラは中に入ると、ケースの中に収められていた黒く染まった髪飾りを手に取った。


 ヒューリーは言った。


「ステラ、この家の裏に、聖なる泉と源泉がつながる小さな水場があるんだ」


「分かりました。行きましょう」


 ステラとヒューリーは毛玉に案内されて水場へと向かい、そしてステラはその光景を見て目を丸くした。


 黒々とした液体を噴き出すその様子は、最初に見た泉と同じである。


 ステラは服の袖をたくし上げると、綺麗になるように願いながら、水に触れた。


 すると、水はゆっくりと波紋を広げるように揺れ、そして次第に美しく輝くと、水場の中にも虹色の魚が気持ちよさそうに泳ぎ始める。


 ステラは、ゆっくりと水の中に髪飾りをつけると、丁寧に洗い始める。すると、美しく髪飾りは輝き始め、そして最後には綺麗に穢れが落ちた。


「綺麗」


「ステラ。それも身に着けていてくれるかい?」


「はい。私でいいのならば」


 こんなにも綺麗なのに、穢れを放つだけだなんて可愛そうだとステラは思った。そして髪に飾ると、後ろを向き、毛玉達に向かって言った。


「よければ、皆さんのことも洗ってもいいですか?」


 すると毛玉達は嬉しそうに声を上げ、順番に並び始める。その姿はとても可愛らしく、ステラはゆっくりと丁寧に順番に洗っていく。


 毛玉達は体を振る降ると振りながら、楽しげに待っている。


 ステラは少しでも自分が役に立てるということが、本当に嬉しかった。



 

小説書きながら、文章をぶつぶつ読んでしまうのは私だけでしょうか。

毎日ぶつぶつ言いながら頑張ってます。ww

ブクマ&評価、どうか、どうかよろしくお願いいたします!(*^-^*)

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