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プロローグ

 図書室にあった、古い一冊の絵本。


 表紙に描かれるのは赤い瞳の魔物であり、絵本にしては少しばかり怖そうなものであった。


 それを寝る前にベッドの上で開いた幼いステラは、一ページ、また一ページと捲りながら小首を傾げた。


「ねぇシャーロット。本当に魔物はいるの?」


 その問いかけに、侍女のシャーロットは静かにうなずいた。


「そう、ですね。ほんの百年前までは魔物の森から出てこられたそうですから、夢物語ではありませんね」


「そうなのね」


「はい。魔物の森には、それはそれは恐ろしい魔物が住んでいるそうですよ」


 絵本に描かれている魔物は、真っ赤な瞳で、確かに恐ろしい。


 そして子ども向けの絵本なのにもかかわらず、絵本のラストはこう締めくくられている。



 魔物を怒らせてはいけないよ


 魔物に人は敵わない


 魔物の大切な宝物には決して手を出してはいけないよ


 地鳴りが響く


 家を閉め切れ


 決して地鳴りが止むまでは外に出てはいけないよ


 宝物を取り戻すまで、魔物をは止まることがないのだから



「何だか怖いわ」


 絵本を閉じたステラに、シャーロットは言った。


「大丈夫ですよ。言い伝えでは、もし魔物が襲ってきても、聖女様がこの国を守って下さるそうです」


「聖女様?」


「ええ。聖女様は聖なる光で、このガントーレ王国を守って下さるのだと言われています」


 ステラは布団の中にもぐりこむと、静かに天井を見つめながら言った。


「そう……聖女様が守ってくれるのね」


「ええ。ですから、安心してお眠りください」


「ありがとう。シャーロット」


 ステラはシャーロットが下がった後に、暗闇の中で静かに天井を見上げていた。


 天井の模様が、魔物の瞳のように思えてきて、あわてて毛布をかぶる。


 毛布の中は暖かく、この中は安全だと自分に言い聞かせる。


「大丈夫よ。もし怖い魔物がきても、聖女様が守ってくれるんだから」


 そう自分で言い聞かせて、ふと気づく。


「……じゃあ、その聖女様のことは、誰が守ってくれるの?」


 頭の中で抱いた疑問。


 それを考えていると、瞼が次第に重たくなってくる。


「……聖女様も……守ってくれる人がいると……いいなぁ」


 寝ぼけながら呟かれた台詞は、夜の夢の中へと溶けていった。


 幼かったステラは、この日のこのセリフが、いずれ自分へと帰って来ることを知らない。

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