プロローグ
はじめましての方ははじめまして、前作読んでいただいた方はお久しぶりです。
パンドラボックスです。
新しい作品を書き始めます。
読んでいただけると幸いです。
2015年4月某日――。
川津昌はいつものように高校へと登校し、そして何事もなく下校している。
高校も2年通うと目新しさなんてものは皆無に等しい。
ゆえに昌に友達がおらず、ボッチなのもまた日常なのだ。
なべて世はこともなし。
「別にいいけどな……」
昌はちょっと不貞腐れたように呟く。
昌がひとりで暮らしている小さなアパートの前に差し掛かった時、それは突然起きた。
アパートの門柱の傍には大きな桜の木がある。
舞い散る桜の花びらの中、幹に寄り掛かるようにして一人の少女が立っていた。
「は――?」
彼女を見て昌は息を呑む。
流れるような黒髪。
長いまつ毛と、切れ長の瞳。
近寄ることすら禁忌に思えるほど恐ろしく整った容貌。
そこにいたのは、あの八重樫雪緒だった。
雪緒が知られるようになったのは去年に公開されたマイナーな邦画だった。彼女はただの端役だったにも関わらず、その演技力や存在感からSNSを中心に噴火する前のマグマのような人気を集めた。そして、その水面下の人気は初の主演映画「わたしたちの群青」で一気に火がつくことになる。
躍脚光を浴びることになった彼女は意欲的に次々と映画に出演し、そのどれも大ヒット。
瞬く間に女優としての確固たる地位を確立した。
今や映画だけではなくメディアに引っ張りだこで、最近はファッションモデルとして活躍の場を広げ、その勢いはとどまることを知らない。
八重樫雪緒、彼女は今日本で最も注目を集める女優だった。
そんな雪緒が何故か昌の住むアパートの前にいた。
映画の台本だろうか、持っていた冊子に視線を落としていた彼女がおもむろ顔をあげる。
「久しぶり、昌ちゃん」
端整な顔を綻ばせ、駆け寄ってくる雪緒。
そして、その勢いのまま昌の胸に抱きついてきた。
「へ? ちょ、おま――」
八重樫雪緒は時代の寵児、もといカリスマ女優である。
そして――。
そして、とあるきっかけを境に離れ離れになった昌の幼馴染でもあった。
ふと昌の脳裏に蘇る。
雪緒とともに過ごした日々が。
意識はそのまま彼女と出会ったときまで傾斜していった。
※1話からは幼少期の話になります。このシーンにたどり着くのはだいぶ先の話です。
最期まで読んできただきありがとうございます。
このプロローグと同時刻に続きの第1話は投稿してあります。
続きも読んでいただけると幸いです。
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