お嬢様JKの私が4次元からの堕天使と同居する件 第四話
「僕はね、追放されたんだ」
ミチルはつぶやいた。
「元居た4次元の"存在"たちが僕という"存在"を消滅させようとしたんだ。理由はこちらの世界の言葉でも説明しやすいな」
そう言うと、ミチルは私が奢ってやったコーヒーを初めて口にした。その苦味からか、やや表情が曇った後、こう述べた。
「僕の居た次元は存在が無から生まれて来るから、定期的にエントロピー、つまり乱雑さ、が増大するんだ。この次元は違うよね?人間で言うと、両親からの受精卵が栄養を得て存在が誕生する。だから次元規模でのエントロピーは変わらない」
やや飛躍した理論に頭がついて行かない。が、感覚的には分かる気がした。
「そうなのね、続けて」
「ちょっと前、そのエントロピーが次元内で抱えきれなくなる一歩手前に来たんだ。そこで、次元内で最も不要な存在である僕が消される運びになったわけ。じゃあ、どうやってエントロピーを消滅させるか?答えは簡単、下位の次元に押し付けるんだ」
じゃあこの世界のエントロピーは増大してしまうのでは?
「流石にそんな真似は中々できないよ。ただ、"意識"という概念に変換して押し付けるなら、統計力学的には問題無いという結論に至ったんだ」
なるほど。それで目の前の男子生徒ー目鼻に卵、の顔立ちをした男子生徒に乗り移った訳だ。
「そこで本題なんだけど」
ミチルは先程まで逸らしていた目線をこちらに合わせると、ニヒルな笑みを作ってこう言った。
「この次元で言う"快楽"とやらを、君から体験させて欲しいんだ」