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43.その後の話をも少し。


―――その後の話を少し。


 ささやかな婚約のお祝いを、ギューエ公爵家で開いた。父と、レオンと、私。そして、元宰相という方も、来られていた。母の従兄ということだった。スイレン宮で、母のことを少し話していた方だ。


「では、私の母は、以前は冒険者をしていたのですか?」


「ああ、魔力が桁違いに強くてね。ダンジョン攻略が趣味だと言っていたよ。上級魔物を狩っていたと、聞いたことがある。それが、いつのまにか王弟の君のお父さんと恋仲になり、結婚したのだから、皆びっくりしていたよ。」


「父さま、いったいどんな魔法を使われたの?」


 父は、ニコッと笑うと、それ以上は答えなかった。父と母にも、いろいろとロマンスがあったらしい。


「それはともかく、今日はレオンハルト皇子と、アイリスの婚約祝いの席だ。皆で乾杯をしよう。アイリス、あれを持ってきて、みんなで空けよう。」


 今日のために、ここにはもういない母が用意してくれた、私のバースイヤー・ワインだ。


「父さま、私、このワインを飲む時に‘皆の気持ちが弾けるような、嬉しい気持ちになるように’と、妖力でお祈りしましたの。そうしたらね・・・」


 私がワインのコルクをポンと取った。シュワァァァァと、泡が弾ける。


「スパークリングワインになってしまったの!」


 おおお、と驚かれてしまったわ。私も、こんな妖力の使い方は初めてだった。妖力は奥が深い。


 全員でグラスを持った。


「それでは、アイリスと、ラインハルト皇子の婚約を祝って・・・」


「「乾杯!」」


 一口で、幸せな気持ちになった。ついでにちょびっと父の薄くなっていた髪の毛がふさふさしていた。元宰相の白髪は、その夜は紫色に変わっていた。


◇◇◇◇◇


 その後、レオンと私は、約束通り冒険者としてギルドに登録し、バディを組んで旅をすることになる。


「そういえば、ソル兄さんと話ができなかったなぁ。どうしているのだろう。」


 旅支度をしていた私は、気になっていたことをレオンに呟く。


「ああ、ソルディーエルは、リード家の婿に入るらしい。帝国に報告が来た。」


「え!あのソル兄さんが?婿?じゃあ、将来はリード公爵になるの?」


 あれだけサルベニア王国の王族であったことに、誇りを持っていた人が、どうしたのだろう。


「まぁ、サルベニア領にとっても、悪い話じゃない。リード家の力は、帝国内では大きいからな。ソルディーエルも、名より実を取ったのだろう。お飾りの王じゃなくて、帝国ともっと交渉できる立場になれば、国民に還元できるからな。」


「でも、あのソル兄さまが。すごい心境の変化だ。何かあったのかな・・・。」


「すごいって、お前。お前が変えたんだろ。あんな妖銃ぶっ放して、宮殿を焼いたお前が何を言う。」


「・・・はい。そうでした。」


 あの後、スイレン宮を焼失したことを、事実を知った父から叱られ、意外にも領主からは歴史的建造物を焼いたことに、文句を言われた。観光名所にでも、する気だったのかな。―――私の宮殿だったのだけど。


「まぁ、おかげで王制復古派も、事実上の消滅だしな。王様がいなくなるんじゃ、復古しようがない。」


 スイレン宮が炎に包まれた光景は、それを見た者の心を大きく変えたようだ。


 妖銃アレンも、私が目を覚ました時には、元の漆黒の姿になっていた。あれ以来、アレンから話しかけてくることはない。いつも黒の服だったから、真っ赤なアレンも見てみたかった。赤も素敵だろう。


 きっと、私があの時、気を失ってしまったのは、妖力の使い過ぎだったのだろう。宮殿を焼くような、あれだけの妖魔弾を撃つことができたのは、私の体力と妖力と魔力を全て注入したからだろう。魔力はレオンのサポートがあったから、間に合っただけで。


「レオン、このピアス、まだ付けていてもいいの?」


 このピアスのおかげで、ずいぶんと助けられた。でも、これはレオンの魔力と繋がっている。要するに、いつでもレオンを魔力切れにもできる。命を握っているに等しい。


「これからの方が、必要だろう。お前を守るには、これじゃ足りないくらいだ。」


 サボからの餞別のような怪我も、粗方治ったレオンは、毎日鍛錬することを始めたようだ。私をエロ魔王から守るとか、何とか言っている。サボはいつから、エロ親父からエロ魔王に格上げされたのだろう。


「じゃぁ、俺たちも行くか。まずは帝都からだ。親父に挨拶しないとな。」


 レオンのご両親、皇帝と皇妃様にも、ご挨拶しなくては。レオンは形だけだ、というけれど。それが終われば、南へ行くつもり。リード家の領地にも、立ち寄ってみたい。


 私の新しい旅が始まった。

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