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4.妖銃使い・師匠との出会い

 サルビアの咲き誇る庭園は、私とソルディーエル兄さまが幼い頃から、仲良く遊ぶ場所だった。王弟の娘であり、年頃も似通っていた私たちは、常に一緒だった。


 今は、その赤い花は逃げ惑う人々によって踏み荒らされ、美しい庭園は見る影もなくなっていた。


 サルビア宮が焼け落ちた翌日、妖銃使いは茶色の目を気怠そうにしながら、廃墟となったサルビア宮を眺めていた。


 一夜にして宮を廃墟としたのは、自身の持つ妖銃であったが、それを連想させるような雰囲気ではなかった。ただそこに佇んでいる、風景を眺めているだけの人であった。


「あの。昨夜、その妖銃を使われていた方ですか?」


 今を逃しては、次にいつ会えるかわからない。私は必至になって、夜が明けた混乱の中で妖銃使いを探し出した。彼は、庭園にいた。踏み荒らされていても、残ることのできたサルビアの花が赤く、咲いていた。


「そうだけど、君は?…あれ、君、妖力も魔力も使えるみたいだね。」


 私を一目みて、私が妖力と魔力を持つものと見抜いたサボは、まだ子どもの私と話をしてくれた。


 珍しい存在を見つけたように、その目に好奇の光を持ち、口角を少し上げた。


「はい、あ、私はアイリスといいます。妖銃使い様。私、妖銃をみたのが初めてで。」


「もしかして、この僕の1円ハゲ、君の妖力?今朝、ごそっと髪が抜けたから、びっくりしたよ。」


 どうやらサボの後頭部に、丸っと髪が抜けた個所があった。


「はい、すみません。昨日、いろいろと妖力を使ってお祈りしてしまいました。」


「だからか。君、すごいね。司令官なんて、前髪がなくなっていたよ。子どもなのに、妖力をそこまで使いこなせるなんて。」


「はい、その、私のできることって、それくらいしかなかったので。ハゲつくっちゃって、ごめんなさい。長持ちはしないので、また生えてくると思います。」


「生えないと困るけどね。。。まだ、僕は20歳になったばかりだから。君にはわからないかもしれないけど、男にとって若ハゲは精神的にくるからね。君、結構妖力の使い方のセンスあるかもね。」


 はっきり言って妖力は、魔力と違って役に立たない。ちなみにアイリスは、司令官の前髪が消えることだけでなく、サボ以外にも帝国の兵士に1円ハゲができるように祈った。


 結果、至る所で髪が抜けていたと聞いたが、さすがにそれは内緒にしておいた。


「妖銃使い様、その、私、その妖銃に昨夜、呼ばれた気がします。」


「妖銃に呼ばれた?君、この銃の気配が読めるの?」


「あ、はっきりとした声ではないのですが、多分。その妖銃を見たとたん、私の中に光がはじけるような感じがしました。で、あ、これだ。って。」


「そうか、珍しいね。僕はサボというよ。サザン帝国の、今は雇われ妖銃使いといったところかな。」


「サボ様、私を妖銃使いとなれるよう、教えてください。私、そんなにたくさんじゃないけど、妖力も魔力もあります。妖銃が使えるようになりたいのです。」


 突発的に口にでたその言葉は、サボを驚かせた。もちろん、私を守るべく追いかけてきたソル兄さまも。探し回ったのであろう、息をきらしながら、私を見つけ安堵したのも一瞬、私の言葉を聞いて、怒りを顕にした。


「アイリス、何を言っているんだ。君は、この国の…大切な子だ。それに、この男は私たちの王宮を焼いた本人なんだぞ、わかっているのか。」


 普段から落ち着いた、ソル兄さまの優しい声しか知らなかった私は、怒鳴られたことが信じられなかった。今思えば、非常識なことをしていたのもわかるけど、あの時の私は違っていた。


 王族の一員としての責任とか、次に王となるであろう彼の婚約者であるとか、王宮がサボによって焼かれたことすら忘れて、自分は妖銃使いになることだけしか、考えられなかった。


「ソル兄さま、昨日私を呼んでいたのは、この妖銃なの。私、妖銃を使えるようになりたい。それだけ、ただそれだけなの。」


「君達、もしかして、ソルディーエル王子?と、王弟の子の、アイリス姫?」


 サボはすぐに、私たちが何者かをあててしまった。そばに護衛もいない、帝国軍も入り乱れた戦地跡で、身分を知られてしまうのは危ういことだった。


 もしかしたら、帝国軍や、騒乱に乗じた破落戸による略奪が始まるかもしれない。今は、王宮といえども無法地帯に近いのだから。


「僕は、今は、ここでは名乗ることができません。ただ、この娘は大切な子です。王国にとっても。」


「ああ、そうか。いや、珍しく妖力の強い子だからね、驚いたよ。魔力もあるなら、確かに妖銃を使えるようになるかもしれない。でも、それはその子と、この妖銃の意志で決まる。」


 そういうと、サボは持っていた妖銃を取り出し、ポイっとアイリスに渡した。昨夜みたものとは、大きさも形も色も違っていた。もっと大きな銃と思っていたが、アイリスの広げた両手で持つことができた。重くもない。


「あ、光った。」


アイリスに反応するように、妖銃が白く光り、そして漆黒の色に落ち着いた。


「その妖銃の名前は、アレンという。君を呼び、そして光ったということは、君をマスターと認めた証だよ。それは君にあげよう。使い方は、そうだな…それほど簡単ではないから、まずは妖力のコントロールから始めようか。」


「え、妖銃をもらっていいの???」


「その妖銃アレンは、君を選んだ。妖銃は、意思を持ってその姿をマスターに合わせて変える。僕にはもう、使えないよ。ああ、心配しなくても、帝国にはまだ妖銃はゴロゴロしているから、君はアレンを持つといいよ。大切にしてほしい。きっと、君の役に立つと思うよ。まぁでも、その前に訓練しないと使えないけどね。」


 妖銃使いのサボは、そう言ってアイリスに訓練と称し、妖力のコントロールや、魔力との組み合わせ方など、丁寧に教えた。広大な帝国といえども、妖銃を扱える者は少ない。


 それも、妖銃が意思を持ってアイリスを選んだ。アイリスも、妖銃に魅せられている。新たな妖銃使いを育成できれば、それはサボにとって、新たな業績となる。


 それ以上に、ふわりと可愛らしくカールしたさくらんぼ色の髪と、花のような笑顔で慕ってくる色白で美少女の相手をするのは、サボの傭兵としてのすさんだ日々を癒す、大切な時となった。


 以後、サボは帝国の傭兵として各地に移動しながらも、毎年1か月ほどはアイリスの住むサルベニア領を訪れ、指導するようになった。


 初めは体力づくり、そして妖力のコントロール、次は魔力の引き上げなど、基礎から厳しく指導し、アイリスは毎年、実力を積み上げていくように成長した。


 妖銃は、妖力と魔力の二つの力を組み合わせることができて初めて、妖魔弾を放つことができる。初めのころは、妖銃アレンを持つだけで精いっぱいであった少女は、10年もすると、その外面に似合わず妖銃を器用に扱うことのできる、妖銃使いとなった。


 ただ、パワー系の妖銃使いと違い、攻撃力は低いままだった。アレンの特性というより、アイリスの性格が反映されるようであった。糸と煙を組み合わせた妖魔弾を開発することは、得意であった。


 その特徴が後に、アイリスの名を帝国のみならず、各国に轟かせるようになるが、今はまだ知らない。


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