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38.母子そろって、冒険家!

 スイレン宮の、スイレンの花は美しい。沼地に咲く花を、改めて見入ってしまう。おばあ様の愛した沼には、美しい紫の花が咲き誇っていた。


そこにいた、全ての魔蛇は、いなくなっていた。多分、サボが退治してくれたのだろう。何も聞いていないけど、彼しか考えられない。


 今は、ララクライン嬢の呪いを解くことに集中しよう、と、レオンと急いで宮殿の奥へ向かう。辺りは真っ暗だが、レオンの魔力の共有で、昼間と変わらず見えている。


「レオン、この奥にララクライン様がいるはずだけど、手前の部屋で、リード家の人たちが控えているから、まず先にその人たちをどうにかしないと。」


「わかった。俺が何とかするから、アイリスは先に行ってくれ。」


「レオン、殺さないでね。」


「・・・大丈夫だ。多分。」


 とりあえず、私はその場をレオンに任せて、ララクライン様のいた部屋へ向かう。この前と同じ部屋であれば、この角を曲がった先に、いるはずだ。


 と、そう思ったところで、争う人の声が聞こえてきた。


「・・・が、・・だから、我々は・・・」「そうは言っても、先払いしろっていっただろうが!」


 ドキン、と心臓がなる。どうやら、支払いのことで揉めているようだ。妖銃アレンを構え、いつでも麻酔弾を撃つことができるように、構える。


「チッ、これだから頭の固い、王政復古派の奴らは払いが悪い。リードをつつくか・・・」


 体格が良く、人相の悪い3人組はどうやら、魔物の代わりに新たに宮殿に来た者たちのようだ。支払いが悪い、ということはリード家ではないだろうな。3人は、彼らが雇った用心棒のようだ。


そうすると、この奥には復古派のメンバーがいるのだろう。


 だが、まずはこの用心棒達を、黙らせる必要がある。そう判断した私は、柱に隠れたまま、中心の一人を狙い、妖銃アレンをかまえる。この距離なら、外さない。


「パァァン」


 よし、真ん中の大きい人に命中した。彼は「ううっ」とうなりながら、膝をついた。左右の男達が、すぐに近くの柱に隠れる。少しはできるようだ。


「パァァン」


 二発目は、左の男の脛を狙った。しまった、掠っただけだ。動きを止めることができても、これでは、気絶させることができない。


 右の男は、私の場所を把握したのか、短刀を取り出すとシュッ、シュッ、っと、2本投げてきた。すんでのところで、柱に隠れることができたので、当たることはなかった。


―――マズイ。次は確実に当てないと、こちらが危ない。


 音を聞きつけた復古派とみられる人たちが、アイリスのいる玄関ホールに顔をだしてきた。4人、か。結構いる。


「今、音がしたが、何かあったのか?」


「銃声だ。静かにしろ。動くな。」


 右にいた一人が、復古派とみられる人たちの動きを封じる。


「パァァン」


 右の男が動いた所を狙って、3発目を撃つ。が、外れてしまった。男は短刀をまた手に持つと、こちらの動きを注意深くみていた。


 緊張していた周囲は、しかしピシャっという鞭のしなる音で終わる。レオンが銃声を聞いて、私を援護しに来たのだ。


 二重鞭から放つ魔力弾が命中し、左右にいた男達は、すぐに「ぐぇ」と言って、その場に崩れた。


 倒れた3人を縛り上げたところで、柱に隠れていた私のところに、レオンがやってきてくれた。


「無理するなって、言っただろう。俺が待てなかったのか。まったく・・・。」


「大丈夫よ、今だって、まだ銃弾は残っていたから、レオンが来てくれなくても、何とかなったわよ。」


「強がりを言うな。まぁ、いい。先を急ごう。」


 そうして、私たちはララクライン嬢のいる部屋へ向かおうとしたが、その先を王政復古派のメンバーが、道を塞いだ。


「貴方様は、アイリス・ギューエ公爵令嬢様でしょうか。」


「そうよ、スイレン姫と呼ばれる、アイリスよ。」


 今日の私は、戦闘用に普段の冒険者スタイルだ。ホットパンツにロングブーツ、腰には漆黒の妖銃アレン。隣には真っ黒な魔術師のレオン。とてもではないが、可憐なスイレン姫には見えない。信じてもらえるだろうか。


「そのお姿、貴方様のお母さまにそっくりでいらっしゃる。母子そろって、冒険者ですな。」


 メンバーの中でも、一番年上の、父さまよりも遥かに年上のその人は、懐かしそうに私をみつめていた。こんな時でもなければ、何も知らない母のことを聞きたいが、今は先を急いでいる。


「私たちは、ララクライン様とお話がしたいの。道を開けてください。邪魔をしなければ、私たちは何もしません。」


 念のために、妖銃アレンをいつでも撃てるように、右手に持つ。


「アイリス様。私たちは、貴方様がこのスイレン宮を守り、この王国を導いてくださることを、祈念しております。」


「悪いけど、ソルディーエル王子とは、結婚したくない。これは、私の意思よ。」


「アイリス様、どうか、正しい道を歩んでください。貴方には、貴方にしかできないことが、この王国にあります。」


 会話が成り立たないもどかしさを感じる。この人たちにとっては、王国の幻影が全てなのだろう。帝国がもたらした、新しい繁栄を試みることなど、けしてできないのだろう。


「アイリス、言い合っていては、時間がない。急ごう。」


 レオンは私の袖をひっぱった。同時に、鞭で4人の足元を叩くと、彼らはすぐにガクッと膝を折り、気絶した。


「大丈夫だ、しばらくしたら目を覚ます。邪魔されないためだ。」


そうして、私たちはララクライン嬢のいる部屋へ、二人で向かった。


彼女の部屋は、暖かい光で満ちていた。そこには、ララクライン嬢ともう一人、私たちの良く知るその人がいた。


―――ソルディーエル王子が、その部屋にいたのだ。

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