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33/47

33.それぞれの事情


 アイリスに伝書魔鳩を飛ばし、俺も帝都をへ向かって馬を駆ける。これだけ長い時間、馬に乗り続けるのも久しぶりで、尻が痛い。だが、今は一刻を争う。


帝都でリード家に接触し、できれば皇帝に会って、話が少しでもできればいいが、多分無理だろう。息子(皇子)といえど、7番目となると扱いはそこらの文官や武官と一緒だ。


今回、多分リード家は情報を持っている。理由はわからないが、ララクラインお嬢様がわがままを言って、東の地の赤の日に参加した。だが本当は、リード家としては領地か、帝都で暮らしてほしいと思っているだろう。


今回の婚約がこのまま流れ、来年に再度、リード家の領地で赤の日に参加してほしい。そのため、今は積極的に探す気はない。合同婚約式が終わって、半年後にさりげなく家に帰ってくる、そんなところだろう。


だから、俺が情報を引き出すことは難しいかもしれないが、帝都での伝手を頼れば、何か掴めるかもしれない。ただ、それをするには、時間が少なすぎる。あと9日しかない。それまでに見つけないと、合同婚約式に間に合わなくなる。


移動にかかる日数も惜しい。俺は、逸る気持ちを抑えながら、帝都に向けて馬を走らせた。


◇◇◇◇◇


 朝日が昇る。アイリスは早朝から準備をしていた。昨夜の父の話では、スイレン宮が拠点となっている可能性がある。スイレン宮は、私の宮殿だ。今は父が保護者として管理しているが、宮殿の構造は誰よりも知っている。


隠し部屋や、それこそ避難経路となる隠し通路まで、頭の中に入っている。


今は、スイレンが咲きはじめているだろうな。久しぶりに、祖母の残してくれた花を見に行くことも、楽しみであった。


今日は、スイレン宮に行くので、いかにも「スイレン姫」の姿を選んだ。薄い紫の、少し長めのロングスカート。上は白のシャツを合わせる。スパッツも履いて、妖銃アレンも足に装着する。もう片方には、念のために短いナイフも仕込んでおく。


玄関を出たところで、門で私を見張っている騎士を騙すため、遮断魔法を用意する。私のために、ソルが用意してくれた人達だが、申し訳ないが今日は騙されてもらう。


『ハイド』


 私を遮断する魔法を詠唱する。さすが、レオンの魔力だ。問題なく発動した。時間をかけて、丁寧に準備すれば、私でもちょっと高等な魔術が使えるようになった。ありがたい。


 無事に門を通り過ぎ、大通りにでると、ホッとする。同時に、遮断魔法を解く。早朝の大通り、人通りは少なかったので、その場に突然出現したようなアイリスに、だれも気付くことはなかった。


 ただ一人、その後ろ姿をそっと見守る影があった。茶色の眼をした、その人は、「はぁ・・・」とため息をつきつつ、アイリスの後を追った。―――影のように、見守っていたのは、師匠のサボであった。


◇◇◇◇◇


―――しかし、あの皇子、自分の魔力を共有できる石をアイリスに渡すなど、命を共有しているようなものだ。そこまで信頼している、ということか。すごいな。はは、面白くなってきた。


 サボは、アイリスの後ろをつけながら、レオンハルトの渡した赤のピアスのことを考えていた。禁呪にも近いその魔術は、よほど信頼していないと使うことができない。恋愛事で負けたことのないサボだったが、今回は危ういかもなぁ、と、珍しく弱気にもなっていた。


 正式にプロポーズをするなど、30年生きてきて初めてだった。それくらい、本気になっているが、どうやら恋の女神が微笑んでくれるかどうか、ちょっと怪しくなってきたか。


 赤い石の魔力を辿れば、すぐにアイリスの居場所はつかめた。今は・・・スイレン宮に向かっているだろう。そして、その先に待つ重厚な魔力の塊の気配を感じ取った。


「急ぐか。また姫様は、やっかいなことに首を突っ込んでいるようだしな。」


 と、一人でつぶやいた。

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