2.医療魔術の研究結果で、火傷の治療してもらう
普段、攻撃力のほぼ無い妖力は、魔力と合わさることで初めて妖銃を使えるようになる。私の師匠曰く、妖銃とは織物でいうと縦糸が魔力で、横糸が妖力のようなもの、だと言う。
両方が組み合わさって、きれいな模様をつくりだす。それが力となり、銃弾になる。
妖銃は、持ち主の妖力と、魔力によって攻撃力や、性質が変わる。大砲のように広範囲を攻撃するのに特化した銃もあれば、私の持つ妖銃アレンのように、煙や糸のように、細かな動きを得意とする銃もある。
妖銃アレン。通り名を持つだけあって、この銃は歴史があり、今の姿では攻撃力は低いが、いろいろな銃弾を使うことができる。器用な銃なので、私はにっくき魔蔦専用の攻撃を開発していた。妖銃は奥が深い。
「はぁ~、見てよ!今回は魔蔦を克服したでしょ!やっぱりアレンはすごいわ。大好き、アレン。」
身体に巻き付いていた魔蔦を全て消し去った妖銃に、軽くチュッとキスをすると、レオンと目が合った。レオンの目が、なぜか呆れた色をしている。
「お前なぁ、俺が魔蔦の根っこを抑えておかないと、ファイアもだせなかっただろうが。ほれ、手をみせてみろ。」
そう言って私の手を持つと、火傷の痕をみてチッと舌打ちをした。
「せっかくの白い肌だっていうのに、火傷なんかするなよ。痕消してやるよ、ちょっと我慢しろよ。」
レオンはつかんだ私の両手をぐっと引き寄せて、火傷の痕を、ヌルっと舐めはじめた。
「ひえぇえ、なんで舐めているのよ、いつもは指でなぞるだけでしょ。」
「俺の最新の医療魔術の研究成果だ。火傷の痕を治すには、舐めるのが一番だ。」
ヌルっ、ヌルっと手を舐めていく。レオンの舌は、腕に巻き付いた痕から始まり、手首、手のひら、そして指の1本1本まで舐めた。熱い舌で舐めた。時々、レオンから吐息がハァと漏れる。
「・・・これって、本当に最新治療なの?」
私がそう言ったところで、最後に右の手の親指を咥えて、上目遣いで私を見上げてきてた。その赤い視線に、ぞくっとする。研究成果というけど、魔術を発動させているだけだろう。
「ねえ、本当に舐めないとダメなの?」
魔術の中でも、治癒術を使えること自体、凄まじく優秀なんだけど、その手法がいつも、どこか残念なのは何故だ。この前は指でなぞられながら、くすぐったかったし。今回は舐められている。
「ダメだ。お前の肌なら、これが一番いい。」
それでも、助けてもらったことに代わりはない。危険なダンジョンに行く時は、気が付くといつも後ろにいて、中途半端な魔術しか使えない私に嫌味をいいながらも、こうして助けてくれる。
私の得意分野は妖銃ではあるが、攻撃力が低いから、正直助かっていたりする。ちょっと、いや、かなり変態だけど。
「レオン、ありがとう。口は悪いし変態だけど、腕は相変わらずいいよねぇ。火傷痕もきれいになった。ほんと、助かったわ。」
「お前も十分、口が悪いぞ。お礼のパンツを忘れるなよ。あ、匂いはそのままにしておいてくれ。」
「人が素直にお礼を言えば。。。レオン、鼻毛ボーボーがいいか、一本だけ顔から長いひげがでるか、どちらか選ばせてあげるわ。」
「お前、妖力を無駄に使うなよな!俺の高貴なイメージが崩れるだろうが!」
いつもレオンとは、言い争いをしてしまう。千年の歴史を誇るサザン帝国といえども、第七皇子となると関心もないのか、帝国の東の辺境にあたるサルベニア領に、12歳から預けられている。
私も、同じ頃に学園に通い始めたので、学園では一緒に5年間、過ごしてきた。
私は、旧サルベニア王国の王族の一人でもあったので、身分的には同じようなものだった。同じ王族という立場からか、他のクラスメイトとは違う、空気というか、緊張感を共有していたと思う。
レオンが揶揄ってくるのは、私だけ、というのも知っていた。
「まぁ、魔蔦から魔石も取れたから、これでいいか。レオンは?」
「俺か?もう下層で一匹倒してきたさ。当たり前だろう?」
そういうと、私の魔石とは明らかに大きさも輝きも違う魔石をとりだした。
レオンは魔力だけでなく、騎士科のクラスに入って剣技も鍛えているから、私とはダンジョンでの実力が違う。悔しいが、実力差は認めざるを得ない。
「まぁ、私は無事に卒業さえできればいいから、いいのよ。魔石を採取することが、課題だから。」
とりあえず、目的は果たしたので、出口に向かうことにすると、レオンが物言いたげに睨んできた。
「オイ、まだお礼をもらっていない。匂いのついている、パンツだ。」
「はぁぁぁぁ?何言ってるの!あげるわけ、ないでしょ!この変態!」
揶揄われた私は、怒った勢いでレオンを平手打ちしようと右手を上げるが、その手をレオンに捕まれた。
「まぁ、乱暴な姫からのお礼は平手打ちか。俺の趣味じゃないから、今日はこれで我慢してやるよ。」
そういうと、右手をつかまれたまま動きのとれない私に近づいてきた。何かされると、思わずギュッと目をつむる。すると、唇を何か、暖かいものがサッと触った感触があった。
それがレオンの唇だったと認識したのは、驚いて目を開けた私のすぐ近くに、彼の顔があったからだ。
「―――!!!―――」
驚きすぎて言葉にならない。立ちすくんだ私に、レオンは右手をつかんだまま、出口に向かって歩きはじめた。
「また、魔蔦に捕まる前に、このダンジョンを出るぞ、ついてこい。」
私たちは会話もないまま、手をつかまれて歩くことになった。レオンはそのまま街に帰るまで、私の手を離さなかった。




