18.欲しいものは、馬と防具と武器。
しばらくして、ソルが帝都から帰って来た。そして早朝から、私に会いに来てくれた。
「アイリス、元気にしていたかい?」
「ソル!久しぶりね。帝都はどうだった?」
「ああ、帝都はせわしなくてね。他にも用事ができたから、思わず滞在が伸びてしまったよ。」
そう言うと、私の服装を見て、眉をひそめた。
「その恰好は・・・。また妖銃の練習をしているのか?」
私がいつものホットパンツにロングブーツ姿の、冒険者スタイルにしているのをみたソルは、ちょっと不機嫌な声で私に尋ねた。この格好を好んでいないのは知っているが、これが一番、動きやすい。
「あ、師匠が来てくれているの。それで、訓練を兼ねた私の魔物狩りにも、付き合ってくれていて。上達している気がするよ。」
本当は、上達しているかどうか、自信はないのだけど。でも、そうでも言わないと、またソルに嫌な顔をされそうだ。元々、ソルは私がサボから教えてもらうことを、嫌っている。
ソルが小さなころは、私と一緒に基礎的な訓練につきあってくれた。体力づくりの為の走り込みとか、筋力をつけるためのエクササイズとか。私よりも、ソルの方が役立っていたみたいだけど。でも、学園の騎士コースに入ると、サボの訓練には、参加しなくなった。
一度、理由を聞いてみたら、騎士と銃士は違うとか、何とか言っていたけど。教員への遠慮もあったのかな。ソルはサボから離れるようになり、それ以来、二人の仲も、良いとも悪いとも言えない―――そんな関係になった。
「そうか、サボ師匠が来ているのか。私も久しぶりに、挨拶しよう。一緒に行くよ、アイリス。」
「・・・いいけど、私の邪魔はしないでね。危険なところも、行くんだから。」
「無理に、妖銃使いなどにならなくても・・・。まぁ、今は好きにしたらいい。でも、無茶をしないように。」
「わかってる。じゃ、一緒に行くから、乗せて行って。」
私は、久しぶりにソルの馬に乗った。ソルは騎士になってから、この白馬に乗って移動している。白馬に乗った王子様、といいたいところだけど、普段は街の警備も兼ねているから、顔つきは厳しい。
これで愛想が良ければなぁ・・・あ、また王室ファンが増えてしまうか。馬上は普段より視線が高くなるし、風も感じることができる。私も、自分の馬を持てればいいけど、今は学生の身だから、ちょっと難しい。
「私も、馬を走らせたいなぁ。白樺の林の中を、風をきって走ることができたら、このモヤモヤも晴れそう。」
ふと、つぶやいてしまう。アンケートを白紙でだした私は、ようするに誰も選んでいない。『赤の日』までは、宙ぶらりんの状態である。
「馬が欲しいのか。アイリスには、もうちょっと女性らしいものを、強請って欲しいが、何もないのか?」
「え?欲しいもの?そうねぇ、馬以外だと、新しい軽量のプロテクション・スーツとか、あと魔力とか高める手袋があるって、聞いたことあるけど。そうした防具とか武器が欲しいかな。」
私の答えは、ソルの顔を曇らせてしまったようだ。ソルと結婚したら、冒険者とか、妖銃使いになることも、許してくれなさそうだなぁ。まぁ、私が情けないくらい弱いから、心配なんだろうけど。
「まぁ、それがアイリスの希望なら、仕方ない。今度、一緒に防具を見に行こうか。卒業祝いも兼ねて、ね。」
でもやっぱり、ソルは優しい。思えばいつでも、このソルのやさしさに甘えていたように思う。
そうしているうちに、目的地のサボの宿の、食堂についた。既にそこは、朝食を食べる人たちで混みあっていた。
私の隣に立つ、銀髪の騎士の姿に視線が集まる。その視線を感じたのか、食堂のおじさんが、私を見つけた。そして、いつもの調子で、大声で私に話しかけてきた。爆弾を含む内容と共に。
ソルと一緒に来てはいけないところに、来てしまったことを、私は後から死ぬほど後悔したのであった。




