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12.鈍く光る銃口

「僕の姫様を襲っているのは、どうしてかな?」


 レオンの頭に、銃口が充てられていた。即座にレオンは顔をアイリスから離した。レオンに気配もなく近づき、帝国の皇子に対して銃口をつきつけた人物は、アイリスの良く知る存在であった。


「サボ師匠!」


 アイリスに妖銃の使い方を指導している、サボであった。レオンは両手をあげて、服従の姿勢をみせた。さすがに、銃口をつきつけられては、動くことができない。


「師匠、やめてください。私の同級生です。」


 師匠の行動を止めるべく、アイリスは必至になった。今レオンに聞かされたことも衝撃だったが、今はサボの行いを止めなくては。レオンは帝国の皇子である。銃口をつきつけたことが分かれば、不敬罪どころの話ではない。サボが処刑されかねない。


「僕の姫君、久しぶりだね。友達君は、ちょっと距離が近すぎたかな。」


 レオンがアイリスから離れたことを確認すると、サボは銃を下した。その姿をみて、アイリスは少し安心した。レオンであれば、銃口をつきつけられたことを、ことさら事件にすることもないであろう。その場の殺気立った雰囲気を変えるべく、アイリスは師匠であるサボに話しかけた。


「師匠、今はこちらに来る時期でしたか?まさか、今の時期に会えるとは思いませんでした。」


「近くまで来たからね、それに、もうすぐ赤の日でしょ。かわいい弟子の様子を見に来たら、ちょっと虫がとまっていたのが、見えたからね。ふふふ。虫はすぐに退治しないとね。」


 サボは自身の妖銃を腰に装着し、殺気を含む目でレオンを見た。


「師匠!その人は帝国の・・・」


「姫君、いいよ。知っている。レオンハルト皇子かな。姫が世話になったね。魔蔦から救ってくれたのは、君だったよね。でも、君の魔力ならそもそも、姫君が魔蔦から襲われないようにすることも、できたよね。」


 レオンは、とりあえず安全が確保できたことを確認すると、自分の手を下した。


「妖銃使いサボ、か。名前を聞いたことがある。アイリスの師匠だったのか。」


「ああ、失礼したね。皇子。でもこの姫は、僕が可愛がっているから、これ以上は近づかないでね。」


 そういうと、アイリスの肩をすっと抱き、サボは急いで歩き始めた。


「ちょっと、師匠。私、今日はレオンと・・・と、とりあえずレオン、今日はありがとう。また今度ね。」


 ひっぱられるように、サボがアイリスを連れて行く姿を、レオンはただ見ていた。見ているしかできなかった。妖銃使いサボに、対抗できる力が自身にないことは、明らかであった。


 自分の背後をとられ、接近されたことが、わからなかった。そしてサボが殺意をもってレオンをみた時、その視線でレオンはサボから恐怖しか感じることができなかった。俺は、この人が怖い。ようするに、自分はサボより弱い。ただその一言に尽きた。


「あいつ、あんな怖い奴が師匠だったのか。」


 初めてアイリスの師匠であるサボに会ったレオンは、衝撃を受けつつ、しかし自身の力の弱さを知り、歯がゆい思いを噛みしめていた。―――サボの後ろ姿を見て、レオンはそれまで悩んでいた計画を実行することを、決めた。


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