決意
その晩、12時を少し回ったころ、私は、頭がおかしくなりそうになりながら、家路に急いでいた。
なぜ、こんなことになってしまったのだろう。私は、それまで二十数年間、真面目な人間で、裏社会に興味を持ったことなどないくらいだった。
やっとの思いで家の玄関にたどり着いた。
両親はまだテレビを見ながら、起きていた。テレビでは、お笑い芸人が、料理を食べながら、ボケていた。
…うちの両親は、いつも、私が夜遅くに出歩いてもおかしくない年になってから、こうやって、夜遅くに私が帰る日は、起きて待っていてくれる。
笑顔で。
まともな会社の飲み会だと思っているのだろう。
そして、うちのもう二人の家族は、かわいい犬と猫が一匹ずついた。
「おやすみ」と皆で挨拶し、歯を磨いて、みんな各のベッドに入る。
しかし、私は、よく眠れなかった。
夜中まで布団の中でごろごろし、あまりに、頭がぐちゃぐちゃして眠れないので、両親の部屋にちょろちょろしに行った。
両親は、ぐっすりと穏やかで安らかな笑顔で寝静まっている。
私は、その笑顔をみて、この笑顔と、家族の穏やかな暮らしを汚すわけにはいかないと思った。
それから、しばらくして、私は、市内のタトゥー屋に、肩にタトゥーを彫ってもらいに行った。