車線上のあなたと私
車は、夜遅く、人気のない道を、ゆっくりと走り続けた。
すると、私は、あることに気がついた。
それに気付いたのは、スティーブンとココも同じようだった。
後ろから、ミニパトでないほうの大きなパトカーがゆっくり近づいてきている。
サイレンやランプは動いていないが、明らかにこちらが曲がると相手もついて来ているのだ。
「ちっ…勘づかれたか」
スティーブンが忌々しそうに舌打ちをした。
「だったら、逃げるしかねーだろ!」ココが思いっきりアクセルを踏み込んだ。
だが、ここは、紛争地域ではないのだ。逃げようとしたら、当然…
すぐにパトカーのサイレンが鳴り始めた。
「前の車、止まれ、止まれ」
だが、止まれと言われて止まるわけにはいかない。この車には、先ほどから、スティーブンがライターであぶり焦がして、散々殴って、頭と右頬の骨が陥没した学生が乗っているのだ。
つかまったら、言い逃れはできない。一巻の終わりとはまさにこのことだ。
パトカーは、なおもサイレンを鳴らしてついてくる。
だが、紛争地域で敵軍とカーチェイスを日常的にしてきた、ココの運転の腕も、半端ない。
私達は、そのまましばらく、ハリウッド映画並みのカーチェイスを繰り広げ続けた。
私達の車は、隣の車線の車をどんどん後ろから抜かしていく。