焼き豚
それから一週間後。
インフルエンザから回復した私は、またいつものように、クラブに行った。クラブには、いつもの仲間達が集まっていた。
シャインは、その時、BMWに乗っていた。一週間前は、確か窃盗車のベンツに乗っていたはずだが、もうそろそろ捕まりそうな時期だったので、売り飛ばしたらしい。
裏社会のディーラーに売ったので、今は中国か北朝鮮に渡っているかも…とシャインは、笑っていた。
午後11時を周り、我々は早めに退店した。
いつものように、酔った頭で車を運転していると、突然スティーブン(日本人。オレオレ詐欺の幹部)から電話が入った。
「車を貸してくれないか」という。
理由を聞くと、「詐欺グループの受子に焼きを入れたいから」だという。「その様子をたっぷり見せてやる」という条件付きだった。
私は、二つ返事で、承諾した。私は、人の苦しむのが大好きだった。多分、私は、性格が悪いのだ。
スティーブンに、指定された場所に行くと、人気のない場所に、彼らは立っていた。
「乗れよ、コラア」と、スティーブンが、見知らぬ男を車に乗せる。男は泣いていて、「勘弁してください…」と小声で言って、震えていた。
かわいそうに、泣いているじゃないか。
私は、苦笑したくなる気持ちを抑えて、その言葉をぐっと飲み込んだ。
男は容赦なく車に突っ込まれた。
「あゆみ、車出して」というスティーブンの言葉に、緊張しながら、アクセルを踏み込んだ。
バックミラー越しに後部座席を見ると、スティーブンがタバコを吸いながら、男の顔をライターで焼き焦がしていた。
男はすすり泣いている。