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66 反撃の狼煙をあげる時

 


 ゆっくりと目を開ける。

 視界に入ったのは、あの時とは違う、見惚れるくらいの月と星。

 どれくらいの時間がたったのか、平伏していた大勢の名無し達は1匹残らずいなくなっていた。


 地面に横たわる私の隣に、バハムートは寄り添っていた。

 何と声をかけるべきか……

 いや、悩むほどのものでもあるまいな。


「久しぶりだな、バハムート……ずいぶん長い間、待たせてしまったらしい」


『それは、我のセリフであろうに。長い間、辛い思いをさせた』


 体をお越しながらバハムートに手を伸ばすと、バハムートは顔を寄せてきた。

 触れる、硬い鱗。


「ん? ……これは」


 気がつくと、私の周囲に白い花が咲き乱れていた。

 それは、バハムートが作り出した花。

 私が名付けた、「竜の涙」

 思わず、笑みがこぼれた。


 再会を印象付けようとしたのか、荒れ果てていたナクレ平原を魔力溢れる土地にしようとしたのか。

 それとも、ボロボロだった私の身体に魔力を補充しようとしたのか。

 ……バハムートの性格的に、全部だろうな。


 あの時の記憶とともに、色々流れ込んできた。

 私の体内にいる間の、バハムートの葛藤、困惑、怒り、やるせなさ。


 バハムートは全て自分のせいだと思っている。

 エリン、ユース、タイタン。

 アイミュラーが侵攻した事も。

 全部、自分がバハムートとして至らなかったからだと。


 召喚獣と召喚師は似るのだろうか。

 自分のせいにして、ネガティブに落ち込むのは私そっくりではないか。

 本当に、そんなところばかり似なくてもいいだろうに。


 ジッと私を見ているバハムート。

 その金の瞳は、不安と心配で揺れていた。


 似ているからこそ、繋がっているからこそ解る。


 私もバハムートも、1人は嫌いだ。

 背筋を伸ばし、いつも気を張って。

 だからこそ、打たれ弱い。

 そして、頼られたら、必要とされたら、とてつもなく嬉しい。


だからこそ、私はこの言葉をかけるのだ。


「バハムート、力を貸してくれ。私を助けてくれ」


『!!』


 目を見開き、次いで抑えきれない何かを発散するかのように、天へ向かって咆哮する。


『任せておけ、カミュ! 竜王バハムートが力になろう! この牙、この爪、この翼は契約者とともに!』


 目を輝かせるバハムート。

 相手が嬉しそうだと、私も嬉しい。

 にやけそうになる頬を、両手ではさんでおさえこむ。


『さあ、乗り込め! 万里を飛翔してくれよう!』


 バハムートに乗り、首もとにしがみつく。

 意外と硬くてザラザラしており、正直乗り心地はカルトの方が良い。

 バハムートはその翼を大きくはためかせ、一気に大空へと飛翔する。


「行くぞ、バハムート! お主と私に敵はない! 一気にアイミュラーとアリーチェを制圧してくれる!」


『無論だ! この竜王の力、とくと見るが良い!!』



 ユースが死に、カルトとベルが脱落し、バドが楔となり、ローゼリアは捕らわれた。

 それでも、私の側にはバハムートがいる。

 1人ではないのなら、誰かがいてくれるのなら、私は何度だって立ち上がれる。


 辛酸をなめ、煮え湯を飲まされてきたが、それもここで終わりだ。

 反撃の狼煙をあげ、全てを取り戻す。


 待っていろ、アリーチェ……!



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