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4 悪魔襲来1~ヒールの音は恐ろしい

 


 私は鳥になった。

 そう、翼がない人間でも鳥になれるのだ。

 加減を知らない馬鹿力によって肩をぶっ叩かれれば、人は鳥になれる。

 私は身をもって証明した。


 人は鳥になれると。

 アハハ、ウフフ、アハハ。



「ぶぎゃう!!」


 私は変な悲鳴をあげ、街路樹にぶつかった。

 そのまま下に落ち、ぶつかった衝撃で、街路樹の雪も私に落ちてくる。


 ドガッ!

 ドサドサドサー!!

 と、まるでコントのようだ。


 雪のかたまりから脱出しようと、身体を動かす。

 が、出られん。

 私の顔面は雪によって全てが覆われている。

 私の上にも雪が積もっている。

 私は手も埋もれている。


 つまり、私は呼吸ができていない。

 自力で脱出ができない。

 ……うむ。


 助けろ!今すぐに私をここから出せ!!

 木にぶつかって雪で窒息死など、そんな死因はエリートの私には相応しくない!!


 私をこんな目にあわせた人物に抗議するように、私は足を思いっきりジタバタと動かしまくる。


「あっはっは。何してるんだ?カミュー」


 のんきな男の声が微かに聞こえてくる。

 私をこんな目にあわせた元凶だ。

 早く、た・す・け・ろ!!


 元凶は、私の足首をつかみ、ズボーと雪の中から引きずり出した。


「助けたなら早くおろせ! 宙ぶらりんにするんじゃない! 頭に血がのぼるだろう!!」


「カミュは朝から元気だなー」


 私はようやく、地面に降り立った。

 ぶつけた衝撃で鼻が痛い。


 タラーン。


 ……鼻から、何かが垂れているような気がする。


「カミュー。鼻血が出てるぞ」


「お主のせいであろう!!」


 この!この冷静でエリートな私が鼻血など!!

 元凶が差し出したティッシュを丸め、鼻につめる。

 ……美しくない。この絵面は美しくない!!


 くっ!召喚ができれば、回復ができる名無しを召喚して回復してもらうものを!


「カミュー。すごい間抜け面だな」


「お前が言うな! バド!」


 この元凶は、私の同級生だ。

 バドゥル=マルタン ♂ 通称バド

 平民の出で、軍に入ろうとしていたところ召喚師としての適正が見つかり、学園に入学した。


 軍に入ろうとしていたからか、筋トレが趣味だからか、とても大柄な男だ。

 身長は、私と並ぶと頭3つ……いや、2つ半か……?というくらいに違う。

 私が見上げる形になるという屈辱だ。


 そして、マッチョだ。

 足も腕も胸もムッキムキだ。

 学院の制服であるローブが、筋肉でパッツンパッツンなのはこの男くらいだろう。

 マッチョな召喚師なんて、バド以外に見た事がない。

 そして……


「何で真冬で雪も積もっているのに、薄手のローブ1枚なんだ!」


 そう、バドはコートも帽子もマフラーも手袋も何もしていない。

 薄手のローブ1枚だけで、マントもない。


「見てるこっちが寒いわ!」


「俺は暑いからな」


 その言葉通り、バドは若干汗ばみ、頬も上気している。

 筋肉というのは、暖かいのだろうか……


「ええい、私はお前に構っている暇はないのだ」


 バドに背を向け、また歩き始めようとしたが…


「何故、私の首筋をつまむのだ!!」


 私は子猫のように、首筋をつまんで持ち上げられている。

 足が地面から浮いているではないか!


「用事があるから来たんだぞー、カミュ」


 ふん、何の用事があるというのだ。


「ローゼリアが怒ってる」


 ……なに?


「何も言わずに旅に出て、ローゼリアはとても心配してた。で、帰ってきたのに何の連絡もないから激怒してる。このまま会ったら、カミュが危険だと思って教えにきたんだぞー」


 ……ふむ。予定変更だ。


「バド、私は逃げる! ローゼリアが何か言ってきた場合、私はまた旅に出たと伝えてくれ!」


 今日は学園は休みだ。

 だが、ローゼリアは朝の身支度に時間がかかるから、まだセーフのはずだ!


「それは、ちょっと遅かったぞー」


「何?」


 その瞬間、シュルルルルルルル!という風切り音。

 いつもの癖で、召喚して逃げようとする。

 が、当たり前だが何も出てこない。


「ギャワッ!」


 長い何かが身体に巻き付いて、私は芋虫のように地面に転がった。

 黒い革製の鞭。


「オーッホッホ!! カミュとも思えない無様な姿ね! (わたくし)やバドにも何も伝えずに出た罰ですわ! 鞭の痛みは、私とバドの痛みとしりなさい!」


 私の顔の横におちる、カッというヒールの音。


 私は、悪魔に捕まった。



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