表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/34

第7話 ハヤト、連行

 「ぐはっ……!」

 「ハヤトっ!」

 「ア……アリス……」


 邪龍を宿すハヤトは、剣や槍で体を貫かれた程度では死なないが、それでも消耗しきった体にはきつい。痛みはそのまま感じるので、激痛で本当に気を失ってしまう。


 「ボルトさん! カマスさん! なんでこんなことを!」

 「アリスちゃん、騙されちゃだめだ。こいつは君をたぶらかして、殺そうとしていたんだ!」

 「勇者、こいつは邪龍だ。殺さなければならない」


 しかし、アリスは泣きながら反論する。


 「ハヤトはそんなことする人じゃありません! 僕と一緒に、みんなを守るために戦っているんです! 今回だって王都の人たちを守るために戦っていたんですよ!?」


 アリスの言葉に、王都を守っていた兵士たちも同意を示す。


 「邪龍殿は、我々と住民を守るために結界を張ってくれました!」

 「複数のディアボロスとデーモンの大群を相手に、命がけで戦ってくれました!」

 「邪龍は悪い奴じゃありません!」

 

 回復魔法を使う兵士たちが、ハヤトの治療に当たる。しかしそれを、ボルトとカマスは押しのけて妨害しようとする。


 「おい、お前たち何をしようとしているんだ?」

 「回復させちゃ意味ないだろ!」


 兵士たちとボルト、カマスとの間でハヤトの回復をめぐってもみ合いになる。そんな中、王都を守る兵士とは別の軍服を着た兵士たち、憲兵隊が魔法剣士のジャスティンに率いられてやってくる。


 「ここにいましたか、邪龍……憲兵隊の皆さん、こちらです。邪龍を捕らえてください。これくらいでは死んでいないはずです」

 「ジャスティンさん……? ハヤトを連れていかないで……ハヤト!」

 「憲兵隊! 邪龍は街を救った英雄だぞ! 捕らえるのは失礼だろ!」

 「何を言っている。こいつは脱獄した邪龍だ。貴殿らが動かないのなら、我々が連行する」

 

 アリスや兵士たちの言葉を一蹴して、憲兵たちは気を失ったハヤトを捕らえて、連れ去っていく。アリスは立ち上がろうとするが、もう体力は残っていない。ハヤトに手を伸ばして気を失った。




 「悪いなジャスティン、汚れ役を押し付けてしまったか」

 「汚れ役? 大丈夫ですよ、レオナルド様。邪龍に騙された愚民たちの反感を最小限にしつつ、邪龍を始末するには脱獄を理由に連行するのが一番です。もっとも、その場で処刑しようとしたボルト殿とカマス殿のおかげで台無しですが」

 「そうか……」


 兵士たちがアリスの手当や、今回のデーモンたちの攻撃による被害を確認する中、聖騎士のレオナルドと魔法剣士のジャスティンは城壁の影で話す。


 「邪龍の強さは想像以上でしたが、ここまで消耗していればもう抵抗はできないでしょう。教会による裁判にかけて、力を取り戻す前に、一刻も早く公開処刑するべきです」

 「慌てるな。邪龍の活躍は多くの兵士、住民が目撃している。処刑は慎重に行わなければならない」

 「何を言っているのですか! 邪龍という悪は、一刻も早く消し去らなければなりません! ……わかりました、もう結構です。ティナ殿に話をつけてきます」


 そう言って、ジャスティンは立ち去っていった。レオナルドは大きなため息をつく。


 「王子と言っても、すべてが思い通りになるわけでもないか……今更だが」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ