第5話 帰ってきた勇者
ドラゴンファイター1人でディアボロス3体を相手にする苦しい戦いは長時間に及んだ。すでに数時間が経過し、時刻は夕方から夜に変わっていた。
「チャージアンドブレイク……ドラゴンクロー!」
「ぐわあああああ!」
そんな中で、ドラゴンファイターはようやく1体のディアボロスを巨大化させた邪龍の爪・ドラゴンクローで倒した。
「はあ……はあ……」
「くそ……倒されちまったか!」
「まあいい。邪龍ももうボロボロだ。俺たちだけでも勝てる」
肩で息をするドラゴンファイターに、残り2体のディアボロスが手をかざす。ドラゴンファイターはドラゴンクローでディアボロスの放つ炎魔法を防ぐが、消耗しているドラゴンファイターは大きく後ろに吹き飛ばされ、結界に叩きつけられる。
結界も時間がたって亀裂が入り、薄くなってきている。このままでは長くはもたない。
「じゃあ、これで終わりかな?」
「まだだ……チャージアンドブレイク!」
ドラゴンファイターは再びドラゴンバックルの右レバーを引いた。ドラゴンファイターの全身に魔力が満ちる。連続のチャージアンドブレイクは体への負担が大きいが、やむを得ない。
「ドラゴンバインド!」
ボロボロの体を無理やり動かし、闇の鎖を発生させて2体のディアボロスを拘束する。
「この程度の拘束……なにっ!?」
「こいつ! どこにこんな力が残っていやがった!」
2体のディアボロスは動けない。ドラゴンファイターは両足に力を込める。
「ドラゴンキック!」
大きくジャンプし、2体のディアボロスに飛び蹴りを浴びせる。
「ぐああああああ!」
「くそおおおおお!」
闇の魔力を一転集中させたキックを受けて、2体のディアボロスは爆破四散する。
「チャージアンドブレイク……ドラゴンウェーブ!」
三度チャージアンドブレイクを行い、翼を羽ばたかせ、衝撃波を発生させる。王都の空を覆うデーモンたちに数十秒間衝撃波を浴びせ続け、ドラゴンファイターはデーモンたちを全滅させた。
「はあ……はあ……はあ……」
度重なる強力な力の使用で消耗したドラゴンファイターは、ばたりと地面に倒れる。
結界はまだ何とか維持しているが、もう限界だ。
「くそ、まだ終わっていないのに……」
しかし、戦いは終わっていなかった。ドラゴンファイターとデーモン、ディアボロスの戦いを遠くから見ていた7つの影が――7体のディアボロスが飛んでくる。
「ほう、あの3人を倒すとは……さすが邪龍と言ったところか」
「しかも5000のデーモンを一掃するとはな」
「良いものを見せてくれた褒美だ。最強の魔法・巨大重力球でこの街もろとも押し潰してくれよう」
残っていた7体のボスクラスが力を合わせて、王都を押し潰せるほど巨大な重力球を発生させる。
もはやこれまでか……
「解呪!」
ドラゴンファイターがあきらめかけたその時だった。南の方から土埃を上げて走ってきた何者かが、魔法を打ち消す魔法・解呪を放つ。
南の山に行っていた、アリスだ。
テン・サーペントの死に際の言葉に、全ての能力を向上させるアンリミテッドの状態で、超高速で移動できる能力・神速を使い、大急ぎで戻ってきたのだ。
「ハヤト、待たせてごめん!」
「遅いぞ……こっちは死にそうだ」
「許してよ。こっちはアンリミテッドで神速使って戻ってきたんだから」
うれしそうな声で、ドラゴンファイターはアリスの手を握り、立ち上がる。
とはいえ、アリスも長時間、負担の大きいアンリミテッドを使って、さらに同時に神速を使っている。アリスもドラゴンファイターも消耗はピークに達していた。長期戦は難しい。
そうなると……
「アリス……ちょっと地獄まで付き合ってくれないか?」
「わかった……ハヤト、必ず2人で生きて帰ってこよう!」
2人は手をつなぎ、『奥の手』を使う。
「邪龍……暴走!」
「……オーバードライブ!」