第27話 対決! イフリート
「くらえ!」
「ぐわああああ!」
先に動いたのは炎の魔神・イフリートだった。口から灼熱の炎を吐き出す。ドラゴンファイターレッドの装甲では耐えられない。装甲が炎上し、ドラゴンファイターレッドは炎に包まれる。
「な、なんの!」
ドラゴンファイターレッドは強制的に炎を振り払う。だが装甲は黒く焼け焦げ、さらに高熱によるダメージで苦しむ。
「所詮、邪龍を取り込んだと言っても人間か……脆い!」
「ドラゴンアームバルカン!」
「なに!?」
ドラゴンファイターレッドの左腕の装甲が開き、機関銃が出現する。至近距離で発砲し、イフリートを後ろに吹き飛ばす。
「やるな! 人間!」
「ぐわっ!」
吹き飛ばされたイフリートはひるむことなく、大きく跳躍してドラゴンファイターレッドに殴りかかる。ドラゴンファイターレッドの焼け焦げた装甲に大きなひびが入り、血が噴き出す。
「ま、まだまだ……!」
「ここまでしてまだ生きているか、人間……」
強力なダメージで動けないドラゴンファイターレッドに、イフリートが近づいてくる。イフリートはドラゴンファイターレッドの首を掴むと、軽々とその体を持ち上げた。
「よく戦ったな、邪龍を従えた人間よ……褒美に、我が最大の炎で燃やし尽くしてくれよう!」
イフリートの腕から、強力な炎の魔力が流れ出す。ドラゴンファイターレッドの全身が激しく燃え上がる。
「ぐわあああああ!」
「良い声で叫ぶ……このまま、絶望しながら我が炎の中に消えろ!」
ドラゴンファイターレッド、危うし。そう思われたその時だった。
「……ドラゴン……ドレイン……!」
ドラゴンファイターレッドの全身の炎が消えてゆく。まるで、ドラゴンファイターレッドの中に吸い込まれるように。
「我が炎を吸収しただと!?」
「ドラゴンアームカッター!」
右腕からドラゴンアームカッターを出現させ、イフリートの腕を切り裂く。
「ドラゴンアームバルカン!」
さらに左腕のドラゴンアームバルカンを乱射しながら後ろにジャンプし、イフリートから距離をとる。
「おのれ……人間め……!」
「お前の炎に対する耐性はできた。チャージアンドブレイク!」
ドラゴンファイターレッドはドラゴンバックルの左レバーを引き、邪龍の力を増幅させる。
「なめるなあっ!」
「ドラゴンドレイン! とうっ!」
イフリートが吐き出した怒りの炎を避けずに全て吸収すると、大きくジャンプ。ドラゴンファイターは空中で大きく回転して勢いをつける。
「ドラゴンファイヤーキック!」
「ぐわああああああ!」
右足に強力な炎の魔力をまとった飛び蹴りを食らい、イフリートの全身を邪龍の炎が浸食する。
「馬鹿な……炎の魔神である我が、人間ごときの炎に焼かれるだと……ぐわああああ!」
イフリートは断末魔の叫びを上げながら、爆炎の中に消えた。
「きゃあ!」
「へっ……追い込んだぜ、白騎士」
カマスの強力な一撃が、白騎士の女冒険者を大きく後ろに吹き飛ばす。
「おい、白騎士は追い詰めてやったぜ。あとはお前の仕事だ」
「あいよ」
エイミィの放った氷魔法が、白騎士の女冒険者の体を拘束する。
「くっ! 放せ!」
「はいはい白騎士ちゃん、ちょっとこれ飲んでねえ」
「うぐっ! 貴様、何を……ぐわあああああああ!」
エイミィは持っていた魔物化薬を、白騎士の女冒険者に無理やり飲ませた。
悲鳴を上げて、白騎士の女冒険者の体がみるみる変質していく――理性を失い、魔物化した人間、魔化人へと変化していく。
魔化人の特性は、変化前の人間の素質によって大きく変化する。白騎士は回復魔法や支援魔法を操り、なおかつ剣技にも長けた職位だ。彼女が変化する魔化人は、白騎士の特徴を持った魔化人になる。
「やれやれ、やっとか……で、どうするんだ、こいつは?」
「とりあえず、ドラゴンファイターにぶつけようか。ちょうどイフリートとの戦いで満身創痍みたいだし」
エイミィとカマスが後ろを振り向くと、座り込む赤いドラゴンファイターの背中が見える。今なら、この魔化人でも倒せるかもしれない。
「よし、それじゃあ白騎士ちゃんが完全に魔化人になる前に逃げるよ」
「あいよ」